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陶然-醒-★(4/17)

背後に立った男の手が、肩口からゆっくりと下へ降りていく。
肘掛けに腕を置き、目を瞑ったまま、その先端を握り締めた。
ワイシャツ越しに感じられる掌の感触が身体を震わせ、鼓動を早くする。
何処で間違ったのか、何が正しかったのか。
答を手繰り寄せようとする意識が、ボタンを外す気配で蹴散らされる。

やがて露わになった上半身に、他人の指が滑っていく。
顔の傍に男の体温が近づき、僅かに昂ぶった呼吸が耳を掠めた。
「なかなか、良い身体だ」
中学・高校と柔道をやっていた。
然程の実力も才能も持ち合わせていなかったから、高校卒業以来離れてしまったが
その名残は、まだ多少、身体に残っている。
暫くの間、腹筋の触り心地を楽しむように弄っていた手が、再び胸元まで上がってきた。

いかつい親指が、片一方の乳首を下から上に向かって軽く弾く。
「・・・っふ」
完全に閉じることを封じられた口元から、吐息が漏れた。
俺の反応に鼻を鳴らした彼は、もう一方にも同じ刺激を与え、それを交互に繰り返していく。
突き抜けるような直接的な快感では無い。
それなのに、積み重なるほど、羞恥心と相まって身体を浮つかせる。

指の動きが止まると共に、溜め息を吐く。
男の所業よりも、何かを求めてしまいそうになる自分の気持ちから解放された安堵。
だが、当然、そこで終わるはずもない。
「んっ、ぐ・・・」
両方の突起を摘み上げられ、無意識の内に身体が仰け反った。
全身を強張らせる程の痛みに、奥歯を食いしばりながら耐える。
「どうした?痛いのか?」
嘲りを過分に含んだ声が聞こえた。
薄目を開けて男の顔を窺うと、俺の視線を振り払うよう、更に責めを与えてくる。
差すような刺激が首筋を引きつらせ、身を捩る度にソファが軋む。
引っ張られ、捻じられ、苛まれ続ける内に、そこは熱を持ち、感覚が麻痺したような状態になった。

乳首から離れた指が、俺の口端から漏れた唾液を拭う。
ぼんやりとした頭が再びやってきた感触で冴えた。
決して激しくはない、ぬるぬるとした弄りが直接的な快感となって駆けていく。
「気持ち良いんだろう?ん?」
男の問い掛けに、上ずった呻きが鼻から抜ける。
衝動が一所に集まっていく状況を、抑えきれない。
柔らかな刺激に、程なく物足りなさを感じ始めることを、彼は分かっていたのだろう。
緩急を付けた甚振りが、無駄な抵抗を削り取っていった。


ソファに深く沈みこんだ身体は、性的欲求に逸るが如く小さく波打つ。
正面に回り込んだ末広が、スラックスの中で燻る部分を二本の指でなぞっていく。
既に窮屈な状態になっていることは、服の上からでも一目瞭然だった。
「ここも、随分、立派じゃないか」
もどかしい刺激が、焦燥感を募らせる。
縋るような視線を受け止めながら時折笑みを浮かべ、それでも彼はファスナーを下ろすことはない。
知らず知らずの内に、身体を寝かせ、股を開く。

不意に、男の手が、俺の右手を取った。
「何か、勘違いしてるだろう」
股間に促された手に、自らの性器の感触が当たる。
「君は、僕を楽しませる為に、今、ここにいるんだ」
そう言って立ち上った彼は、顎を上げて俺に余興を求めた。

手にしたモノは紅潮し、筋が立ち、先端が僅かに濡れ始めていた。
満足げな表情の男が軽く頷いたのを合図に、指を添わせる。
竿を扱きながら亀頭を親指で撫でると、いつも以上の快感が身体を奮い立たせていく。

普段、自分を慰める時に思い浮かべるのは、幼い頃から成長していない彼の姿。
たった一度のキスの感触から、全身の、少年の興奮具合を妄想する。
制服の下にある成長しきらない身体を想像しては、汚してきた。
けれど今は、そんなきっかけは、全く必要無かった。
「まだイくんじゃないぞ?」
いやらしい視線が、全身を舐めるように這う。
決して他人に見せることの無い姿を見られているという恥辱だけで、身体は悦びを感じ始めていた。


「その辺で、終わりだ」
絶頂まであと数段というところで、彼は俺の自慰を制する。
昂ぶった様子で傍に立った男は、猿轡代わりのネクタイを乱暴に外す。
唾液を引き摺りながら床に投げ捨てられた物は、もう使い物にはならないだろう。
つまらない考えが過った頭が掴まれ、無理矢理唇が重ねられた。
吸い付くように唇を舐り、割れ目から入り込んできた舌が咥内を犯していく。
絡め取られた舌が、卑しい水音を引き摺りながら翻弄される。

貪るような口吻で呼吸が乱れる俺の前に、男の性器が突き付けられた。
得も言われぬ臭いを放つそこに、唇を寄せる。
不快感と共に湧き上がる、充足感。
どうかしてる。
俺が、求めていたものは、こんなものだったのか。
瞬間、諦めの笑みを浮かべながら、差し出されたご褒美を口に含んだ。

□ 95_陶然-酔- □
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□ 96_陶然-醒-★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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