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結論★(12/14)

目の前の男を壁に押さえつけ、無理やり唇を重ねた。
突然のことに驚きつつ、その身体は具合の良い体勢を取ろうともどかしげに動く。
時折息継ぎをしながら徐々に舌を深く沈め、絡ませる。
相手の昂ぶり具合が、吐息から嫌というほどに感じられた。

壁に添えられた手を取り、自分の方へと引き寄せる。
太腿に触れる寸前で、彼の指は意志を持って揺らぎ始めた。
捉えられた部分は、けれどまだ何の反応も見せていない。
官能的な雰囲気をまとった視線を受け止めながら、少し、笑って見せた。
「口で、してくれよ」


壁を背にしてしゃがみ込んだあいつは、時折こちらを伺いながらファスナーを下ろしていく。
萎びたままの性器を外へ引きずり出し、小さく鼻で息を吸い、軽く唇を当てて、静かに愛撫を始めた。
柔らかな感触が敏感な場所をなぞる度に、寒気にも似た刺激が背筋を駆けていく。
更なる快感を求めるよう、壁に両手をつき、僅かに膨らみ始めたモノを彼に預ける。
意図を察したであろう男は、根元から舌を這わせ、舐り上げた。
鼓動が早くなり、吐く息が深くなる。

やがて、他人の口の中に咥え込まれた性器が翻弄され始める。
あいつの小さな呻き声と、卑しい水音と、俺の乾いた喘ぎが辺りに響いた。
緩急をつけながら、深く、浅く、時折亀頭をしつこくしゃぶりつつ、不意に眼差しを向けてくる。
愛おしげな表情が、瞬間、挑戦的な顔つきに見えた。
鬱屈した衝動が、頭の中を支配する。
こんなんじゃ、足りない。

片手で男の頭を掴み、驚愕を露わにした顔へ思い切り腰を打ち付ける。
悲鳴のような砕けた声が喉元から発せられ、妙な昂ぶりを感じた。
力任せに腰を振り、残酷な悦びと快楽に身を任せる。
腰に回されていた彼の手が、力なく膝の方まで落ちていくのが分かっても尚
野蛮な欲望が掠れることはなかった。

まもなく終着点に手がかかろうとするタイミングで、いきり立ったモノを口から抜き出す。
前髪を掴んで上向かせた表情は、崩れ落ちそうなほどの辛苦を滲ませていた。
きっと俺は、酷く醜い顔をしていたのだろう。
半開きの口と、深い皺の寄った眉間と、潤んだ目は、何かを乞うているように見える。
その眼前で、自らの性器を扱く。
「・・・こうして、欲しかったん、だろ?」
俺の言葉で、あいつは目を閉じた。
その覚悟の直後、身体から、本能が噴出していった。


鼻の頭から顎の方まで吹き散らかされた精液を、親指で塗り拡げていく。
唇の隙間から無理矢理指を押し込むと、苦しげな声が聞こえてきた。
「何なんだ、お前」
床にへたり込み、目尻に皺を寄せながら喉を震わせている姿を見るなり
衝動を解き放った高揚感は泡のように消え失せ、途方もない後悔が押し寄せてくる。
「何で・・・俺なんだ」
自己否定の言葉を、彼がどう捉えたのか分からない。
身体から力が抜け、急に涙が込み上げてきた。
視界がざわめく様に乱れ、崩れていく。

あいつは俺の手首を静かに掴んで自らの身体から離し、立ち上がる。
気配が薄れていくだけで、気が遠くなりそうだった。
しばらくして、洗面所の方から水音が聞こえてくる。
顔を洗い、口を濯ぎ、水栓が締められる音のすぐ後を溜め息が追いかけた。

それからしばらく、無音の時が続いた。
壁にもたれかかり、玄関に脱ぎ捨てられた自分の靴と、揃えて置かれた他人の靴に視線を落とす。
遠くから聞こえてきたオートバイの音が、あっという間に近づき、遠ざかっていく。
あいつはどんな顔をして、何を考えているのだろう。
失望しただろうか、軽蔑しただろうか。
二人で行く末を見たかった。
二人で来し方を懐かしみたかったのに。


ゆっくりとした足音が聞こえ、不意に気持ちが強張った。
少し離れたところに腰を下ろした彼は、小さく息を吐く。
「斎藤さんは・・・オレの気持ちに付き合ってくれてるだけですか」
気の休まらない俺とは対照的に、冷たさを帯びた平坦な声色だった。
「そんなことない」
「オレが告白した時のこと、覚えてますか?・・・あり得ないって、顔してた」

好きだという感情に、誰しも違いはないと思う。
俺だって、あいつに告白される前から、好意は持っていた。
二人の間で異なっていたのは、互いに求める関係性。
俺は後輩・友人として、あいつは恋人としての存在を、その感情の先に望んでいた。
だから、あの時は、戸惑った。

「やっぱり、言わなきゃ良かった」
「やめろ」
けれど、幾度となく逡巡して至った結論に、もう躊躇いはない。
「そりゃ、そうですよね。告白されたからって、男と付き合うなんて・・・」
「浅野」
顔を上げた先には切なげに目を伏せた男の姿があった。
「本当に、悪かった・・・頼むから、言い訳、聞いてくれ」

自分の無能さに腹が立って、自棄になった。
いくら振り払おうとしても、絶望感が圧し掛かってきた。
何もかもが、優しささえも、煩わしく思えた。
俺に向けられた想いすら、幻なんじゃないかと怖くなった。
むしろ、全てが夢であって欲しいと願った。

やっと目が覚めたのは、心と身体が離れていく現実を目の当たりにした時。
心の底から大切なものに対峙して、あれだけ思考を狂わせた鬱憤が吹き飛んだ。
「どうしたらいい」
「どうって?」
「どうしたら、傍に、いてくれる?」
微かに歪んだ彼の表情が、再び潤み始めた視界で途端にぼやける。
「・・・お前がいないと、俺、生きていけない」

□ 01_猶予 □   
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□ 100_結論★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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