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陶然-醒-★(5/17)

上半身に衣服を引っ掛けたまま、ベッドの上で四つん這いになる。
生温かい液体が、尻の割れ目を流れて太腿の方まで垂れていく。
間を置かず、絡み合う毛の中の一点を指が探り当て、細かな刺激で解される。
口淫の間も手を触れることの無かった自らの性器は、未だ昂ぶりを手放すことは無く
入口に男のモノが宛がわれた瞬間、更に怒張を増したような気がした。
「本当の自分の姿を、よく見ておくんだな」
窓の映る俺の中に、男が、入ってくる。
裂けるような激痛が喉からも耳からも音を奪う。
腰を打つ衝撃は徐々に激しさを増し、それにもかかわらず、痛みは徐々に和らいでくる。
代わりに背筋を引きつらせるのは、未経験の快感。

上半身を起こされ、より深く、侵される。
「うっ・・・あ」
腰回りから胸元へ上がってきた手が、無防備なもう一つの性感帯へ伸びていく。
「く、うっ」
責めを待ち詫びていたかのように、身体が悦びで震える。
双方の乳首が強く摘み上げられるほどに、欲求が飛び出してしまいそうになる衝動に駆られた。

ふと視線を脇へ逸らす。
ガラスの向こうには、性欲に流され、皮を剥かれた淫らな自分の姿。
これが本当の自分。
こんな俺に、淡い片想いをいつまでも寄せている資格なんか、無い。

途端に男の動きが慌ただしくなる。
再びベッドに伏した身体が、蹂躙されながら、絶頂へと追い立てられた。
体内に男の精液が注ぎ込まれるのとほぼ同時に、俺の中からも、噴き出していく。
残酷な満足感が心身を蝕み、その陰で、唯一の拠り所が崩れていくのが見えた。


末広に促されるまま、シャワーを浴びる。
その間、極力、何も考えないようにしていた。
絶望からも、希望からも、目を背けていた。

浴室から出ると、男は既に身支度を始めているところだった。
「部屋はもう一晩押さえてある。好きなだけ居れば良い」
そう口にした彼の表情は、夜の初め、料亭の前で見せていた柔和な初老の男のものになっている。
「・・・分かりました」
現実に戻り、抱くべき感情を探しながら、とりあえず、そう答えた。

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。
驚きで固まる俺を余所に、男はアプローチの方へ姿を消す。
ドアのロックが外される音のすぐ後にやってきたのは、扉の開く音と女の声。
「失礼します」
「遅かったな」
「申し訳ございません。ご所望の物がなかなか見つからなかったので」
「まぁ、良い」
二人がこちらへ向かってくる気配を感じ、傍にあったバスローブを羽織り、ベッドに腰を下ろす。

目に入ってきたのは、俺よりも一回りほど離れているであろう和装の女だった。
抑え目な化粧が施された眼がこちらを一瞥すると同時に、口元に笑みを浮かべて軽く頭を下げる。
「状況はどうだ?」
「仰せの通りに進めております」
手に抱えた幾つかの包みをローテーブルの上に置きながら、彼女は初老の男に答えた。
「そうか」
ネクタイを締め直す男がそっけない返事を口にし、女は慣れた手つきでその形を整える。
愛人、部下・・・彼らはどういった関係なのか。
余計なことを考えようとする頭に、どうでも良い疑問を押し込んで落ち着かせた。


それから5分と経たない内に、末広は部屋から出ていった。
俺から見える位置で深々と頭を下げた女は、扉が閉まると姿勢を戻し、静かに振り返る。
「何か、飲みますか?」
やや低めの、それでいて透明感のある声が、少しだけ心を落ち着かせてくれるようだった。
小さく首を振ると、女は眼を細めて頷きを返してくる。

冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをベッドのサイドテーブルに置いた彼女は
俺と僅かに距離を置いて、ベッドに腰掛ける。
「・・・汚れますよ」
女が放つ香りを感じ、思わず声が出た。
「大丈夫ですよ。ありがとう」
ついさっきまでの異常なシチュエーションが嘘のように、部屋の中の空気は穏やかだった。

太腿に置いていた俺の手に、彼女の手が重ねられる。
「して欲しいことがあれば、何でも言って下さいね」
しなやかな指の数センチ先には萎びた俺自身が横たわっており
ここまできて、あの男が女を残していった理由に、やっと気が付いた。

女を抱くことで、男としての尊厳を取り戻す。
悪い冗談のようだけれど、これが末広なりの労いなのだろう。
そんなことができれば、どんなに良いか。
それすらできない俺は、どうすれば良いのか。
頭の中に浮かぶ無防備に笑う少年の面影。
思い返す度、胸の奥が僅かに苦しくなるような感覚があったはずなのに、何も感じられない。
「・・・一人にして、貰えますか」
あんなに想い続けてきたのに、もう、縋るところが見つからない。

俺の方へ伸びてきた手が静かに頭に添えられ、彼女の方へ引き寄せられる。
「悪い夢は、早く忘れなさい」
首元の体温を頬で感じながら、込み上げるものを必死で堪えた。
「失くしてしまったものは、またいつか、必ず手に入るから」
慰めの言葉を擦り込むように、女は静かに俺の背中を撫でていく。
堪えていたものが、堰を切る。
枯れるほどの涙を流したのは、この時が生まれて初めてだった。

□ 95_陶然-酔- □
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□ 96_陶然-醒-★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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