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結論★(13/14)

立ち上がったあいつが近寄ってきて、俺の隣に再び腰を下ろす。
肩を抱かれた身体がそのまま彼の方へ引き寄せられた。
「この間、和賀さんが言ってました」
後頭部を撫でる唇の感触に宥められ、目を閉じる。
「あいつはいろんなこと考え尽くした上で、最悪の結果だけを待ち構える悪い癖があるって」
反論の余地がない指摘だと思った。
最悪の事態を想定しておけば、実際その通りになったとしても傷は浅くて済む。
そんな風に考える癖がついたのは、もうずっと昔のことだ。
「5年、経って、オレは結局何も変わらなかった。そのことに、少しは自惚れても良いんじゃないですか」
顎に指が添えられ、顔を上向かされる。
さっきまでの出来事が嘘のように、穏やかな表情が眼鏡の向こうにあった。
「こんなことで離れられるのなら、苦労しません」
小さく笑みを浮かべたあいつが、一瞬の口づけをくれる。
「オレも、斎藤さんのいない将来なんか、もう考えられないから」


あいつに手を引かれ、部屋の中へと戻る。
ベッドの前で立ち止まった男は、荷物を置く間もなく、身体を寄せてきた。
左手が頬を撫で、右手が腰回りを擦る。
「終わってから、口の中に指突っ込まれた時は、最悪だ、って思ったのに」
やがて、その指が、服の中へ乱雑に仕舞い込まれた部分に達した。
「今になって、すげームラムラしてきた」
数十分前の絶頂は、心に微塵の満足感ももたらさなかった。
けれど、身体には独特の疲労感が残り、再度達する自信が無い。
しかも、彼へ手を伸ばすことに何処か物怖じしている自分がいる。
「もう、無理?」
答えに窮する俺の意図を察したのか、あいつは俺の耳元で甘い言葉を囁いた。
「じゃあ・・・手伝って」


上半身だけ服を脱ぎ、ベッドの上に壁を背にして胡坐をかく。
一方の彼は、服を全て脱ぎ捨ててベッドに上がり、俺に背中を預け、寄り掛かるような体勢をとった。
軽く仰ぐように振り向いた顔があっという間に視界を覆い、唇を奪う。
感触を求めるよう身体に腕を回して素肌を密着させると、男の湿った体温が憂いを少しずつ溶かしていく。

手首を掴まれ引き寄せられた先には、刺激を待ち侘び奮い立った物があった。
添えた手の上から彼の手が被さり、そのままゆっくりと動き出す。
僅かに離れた口は薄く開き、吐息が揺らぐ。
快楽に歪んだ眼は、真っ直ぐに俺の目を捉えている。
掌に感じられる凹凸はますます明瞭さを増し、本能に流されていく様が見て取れた。

上下運動を繰り返していた右手が、亀頭の方へと促される。
撫で付けられた指の腹に、独特の滑りが塗りつけられた。
親指を添えて緩やかに愛撫を始めると、強張る身体が俺から離れていく。
咄嗟に左腕を彼の腹の方へ回し、抱き寄せた。
項垂れて露わになったうなじに舌を這わせ、耳の後ろの方まで舐り上げる。
「はっ、あ」
「気持ち良いか?」
「きもち、い・・・」
主導権を握っていたはずの男の手は、いつの間にかただの添え物になり
激しくなる鼓動を全身で感じるにつれ、俺の中の衝動が熱くなっていった。

人差し指で唇を撫でると、一呼吸の後、彼の口の中へ吸い込まれる。
「ん、・・・く」
あいつは横目でこちらを伺いつつ、愛おしそうにそれをしゃぶり始めた。
ざらついた舌の感触を暫し楽しんでから、指を胸元へ滑らせる。
「ここだろ?」
「そ、こ」
小さな突起は待ちきれないとばかりに固くなり、半開きになった男の口が更に急かす。
「・・・弄って」
卑猥な声色に引きずられるよう、摘み上げた。
「いっ・・・あぁ」
蕩けるような喘ぎが理性を犯す。
性器を掴み、慌ただしく扱く。
「あっ、ああっ」
暴れる身体を腕で押さえつけ、一直線に絶頂へと導いた。
「イっ、て、いい?」
「・・・いいぞ」
「は、あ・・・んんっ!」
瞬間、仰け反るように伸びた身体が俺の方へ傾き、右手の中から生暖かい精液が溢れていく。
2、3回引きつった声を上げた後、力の抜けた背中がもたれかかってきた。


「・・・さいとう、さん」
「ん?」
頬を紅潮させたあいつは、数回虚ろな息を吐いて呼吸を整える。
「あいしてる」
突然の台詞に、思わず息を飲んだ。
照れ隠し代わりに唇を触れ合わせ、彼は目を細める。
「これ以上の、言葉が、見つかんない」

普段は意識することもなく、字面だけでも何となく気恥ずかしさが残る言葉。
その返答に値するものは、たった一つしか思い浮かばない。
「俺も・・・」
人生の中で、まさか、口にする機会がやってくるとは思いもよらなかった。
「・・・愛してる」

□ 01_猶予 □   
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□ 100_結論★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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