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真偽★(8/13)

言葉を失った彼は、小刻みに震えていた。
「僕も、君のこんな顔、見てみたいな」
何故、そんな思いを身体全体で表しているようだった。
「な、にを・・・言って、るん、ですか」
画面を凝視したままの彼の緊張具合が、腕を通して沁みてくる。
「先生・・・飲み、過ぎじゃ」
「震えてるね。別に、怖がること無いさ」
「こんな、やめて・・・下さい」
拒絶の言葉が、気持ちに火を点ける。
「嫌なら、僕を殴ってても、出て行けば良い」
頬に携帯を滑らせると、睨みつけるような弱弱しい視線が向けられた。
「商談は、無かったことにも、出来るんだよ?」
眉をひそめ、何か諦めたように唇を噛む彼の顔に、自分の顔を近づける。
掌を滑り落ちて行ったはずの幻が、実体化する瞬間。
純粋なものが、僕の唇で穢れて行く。

今まで、どの生徒とも交わして来なかった行為。
柔らかな感触が鼓動を早くする。
少し乾いた唇に舌を滑らせると、やがて口が薄く開き、アルコールが鼻を抜けた。
彼の身体に覆い被さるよう、姿勢を変えて行く。
舌を絡ませるにつれ、その心は崩れて行ったのだろうか。
程なく、二人の身体が折り重なるように、ソファに沈み込んだ。
服越しに感じる脚や胸板、萎れた気配の腰回り。
全てが、長い間感じ続けていたもどかしさを取り払う。
紅潮していく歪んだ顔を両手で包み、何度と無く口づけを繰り返した。


彼のネクタイに手をかけ、ゆっくりと緩める。
その吐息が、より深くなったように感じられた。
力なく横たわる彼の身体に跨り、ワイシャツの中に手を差し入れて行く。
熱を帯びた上半身は思いのほか滑らかで、掌に感じる鼓動と相まって発奮を促す。
目を瞑り、行為に耐える彼の耳を唇で突きながら、囁いた。
「抵抗、しないんだ」
薄く開いた切なげな視線を向けながら、彼は呟く。
「・・・何故、こんな」

彼が僕に好意を持っていることは、確かだと思う。
但しそれは、教師と教え子、営業と顧客と言う、ありきたりな関係性の中で成立しているものであって
僕が望んでいるようなものでは無い。
抵抗の意思を見せない彼の行動は、それに絡め取られているからなのだろう。
僕はそんなものじゃ、満足できない。
しがらみが無くなった今だからこそ、彼の全てを手に入れたい。
先走る気持ちが、真情を吐露させる。
「何回も、何十回も、こうやって君の身体を触って来たよ。・・・頭の中で、ね」
脇腹から脇の下を通り、胸元まで滑らせた指に、小さな突起の存在を感じる。
親指で軽く撫でると、彼の喉仏が小さく揺れた。
「やっとだ、やっと・・・。堪らないよ、瑞貴」
怯えを隠せない彼の眼を見ながら微笑みかける。
引きつったその表情が、欲望を加速させた。


ワイシャツのボタンを開け、中のTシャツをたくし上げる。
震えながら上下する胸に、唇を這わせていく。
髪にかかる吐息を感じながら、愛でる如く感触を確かめる。
夢心地な気分を、下半身の疼きが現実に引き戻す。
自らの身体を焦らすように、彼の身体を弄り続けた。

彼のベルトに手をかけると、不意にその手が動きを制する。
些末な抵抗。
溜め息をつきながら、彼の頬に唇を寄せ、その表情を窺う。
股間に添えた手には、昂ぶりが僅かに纏わりついた。
彼の身体に起きている、異常な変化。
「感じてくれてるんだね」
当て所の無い視線が、宙を泳いだ。
「そ、れは・・・」
形を明確にしているモノを二本の指で挟み、緩慢に扱く。
ソファに埋めるように顔を逸らし、肩を震わせる彼。
スラックスを持ち上げる勢いで膨らんでいく性欲を感じながら、耳たぶを軽く唇で挟んだ。
「背徳感で、逆に、興奮しちゃうのかな」
男に弄ばれて反応する身体に、煽られる嫉妬心。
女ならいざ知らず、僕以外の男に触られた経験があるなんて考えたくも無かった。
「こっち、見て」
躊躇いがちに向けられた顔に手を添え、口を押し広げるように指を突っ込んだ。
苦しげな声が喉の奥から響いてくる。
潤みがちな目が、何かを訴えているようだった。
「可愛いよ」
引き抜いた指を、見せつけるように舐る。
彼の味が、思わず顔を綻ばせた。
もっと味わいたい。
何もかも。

□ 54_真偽★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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