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真偽★(7/13)

あまりの遣り切れなさに、吐き気がする。
画面に映し出された写真が、あの時の屈辱を蘇らせる。
「僕も、君のこんな顔、見てみたいな」
「な、にを・・・言って、るん、ですか」
友の精液に塗れた、自分の顔。
震えで視界さえもぶれる。
こんなものを宝物と呼ぶ恩師。
心底悔しく、心底、哀しかった。

酒に浮かされた熱が、ワイシャツを通して沁みてくる。
「先生・・・飲み、過ぎじゃ」
「震えてるね。別に、怖がること無いさ」
「こんな、やめて・・・下さい」
「嫌なら、僕を殴ってても、出て行けば良い」
手にしたままの彼の携帯が、俺の頬を撫でる。
「商談は、無かったことにも、出来るんだよ?」
彼と向かい合わされた顔に、その唇が近づいてくる。
長い間、頭の中に仕舞われてきた妄想が、具現化する瞬間。
柔らかな感触が、寒気がするほどの興奮を呼んだ。

熱を帯びた舌が俺の唇を舐って行く。
うっすらと塗り込まれていく唾液が、閉じた口を緩める。
吐息を漏らしながら、彼の舌を受け入れた。

互いの息遣いが空間に満ち、家族の影を徐々に消し去る。
歪んだ感情が絡み合う程、遠い過去に感じた嫉妬が解けて行く。
彼の体重を受け止めた身体が、ソファに沈む。
携帯が床に落ちる鈍い音が耳に入った。
顔を両手に包まれながら、幾度となく彼の唇の感触を確かめる。


中高は男子校、大学も工学部で男ばかり。
社会人になってからは、小さかった交友関係が更に狭まった。
恋愛に興味が無かったのかも知れない。
昔抱いた鬱屈した想いだけが、ずっと火種として奥底に眠って来た。
彼の手が、ゆっくりとネクタイを解いていく。
首筋を滑る指の感触が、それに風を送り、火を点ける。
例え、その想いが、常軌を逸していても構わない。

片足だけを床に投げ出すよう横たわった身体に、彼の身体が馬乗りになる。
スラックスから引きずり出されたワイシャツの中に、その手が入り込んで来る。
腹から上がって来る気配に、背筋が寒くなった。
「抵抗、しないんだ」
身体の震えは、さっきまでと些か種類の違う感情が引き起こしていた。
こんな気持ちを悟られるには、早すぎる。
「・・・何故、こんな」
俺の上半身を気持ち良さそうに弄る彼が、興奮気味の視線を投げる。
「何回も、何十回も、こうやって君の身体を触って来たよ。・・・頭の中で、ね」
人差し指で与えられた小さな性感帯への刺激に、思わず喉が鳴った。
「やっとだ、やっと・・・。堪らないよ、瑞貴」
目を細め、俺を真っ直ぐに見つめる恩師。
様々な顔を持っているであろう彼は、今、俺だけの顔を見せてくれている。

露わにされた上半身を、彼の唇が這って行く。
鼓動が早まり、視界が揺れる。
優しい刺激の中に混ざる唐突な快感を得る度に、深い息が彼の髪を浮かせた。
それをきっかけに、彼の動きは段々激しさを増す。
幸せで、残酷な仕打ちが、全身を悦びに包んでくれる。


ベルトのバックルが、些細な金属音を立てた。
無意識の内に、彼の手に自分の手を添える。
小さな溜め息と共に、その顔が近づいて来て、頬に唇の感触を残す。
制された手はベルトから離れ、下半身へ伸びる。
俺の片方の太腿に跨るような体勢を取っている彼の手から逃れる方法は、無かった。
昂ぶりが顔を出して来始めたモノに、スラックスの上から指が滑る。
「感じてくれてるんだね」
「そ、れは・・・」
触れられていることを認識するだけで、顔が熱くなって行く。
彼は耳を唇で突きながら、遣り切れないモノを二本の指で挟み、上下に擦り上げる。
ソファの背もたれに顔を埋めるよう、その刺激に耐えた。
「背徳感で、逆に、興奮しちゃうのかな」
囁かれた言葉に、身体が追い込まれる。
「こっち、見て」
僅かに傾けた顔に、彼の手が添えられた。
親指が口の端を撫で、中に入り込んで来る。
えぐる様に押し広げられ、喘ぎと唾液が漏れた。
恥ずかしさが、より一層発情を促す。
「可愛いよ」
口から引き抜いた、俺の唾液に塗れた指を、彼は微笑みながら舐める。
変質的な彼の行為でさえ、俺の心を捕らえるには十分だった。

□ 54_真偽★ □
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熱情と熱帯魚

12作目の『奪取』を読んだ時の驚愕と興奮をまだ覚えています。サスペンス・ミステリー好きな私は、本当に素人が書いた小説かと疑った程!小説を書く技量が抜きん出ていると、作者に伝えたいと思いました。でも、その時はコメントする勇気がありませんでした。しかし、我慢出来ずに14作目の『嫉妬』で、初コメントしたのです。

三島/由紀夫も誉めたという映画『地獄に/堕ちた/勇者ども』。イタリアの大貴族の出身で、当時の時代背景からの影響で共産主義にかぶれ、「赤い公爵」と呼ばれたルキノ・ビィス/コンティ監督の作品。ナチが台頭する頃のプロイセン(バルト海南岸のドイツ北東部)が舞台で、画面から倒錯した退廃臭がプンプンします。公開から15年以上後に再上映された時に、恥ずかしいので誰も誘わずに、1人で見に行きました。映画の中で網タイツで女装して歌った若手俳優が、監督の愛人だったらしい。ちなみに、2人とも男性!
とにかく、むせかえって気分が悪くなるほどの退廃。でも、「人間って、何でも有りなんだ…」と、強烈に思いました。
初対面で夫を見た時に、プロイセン士官みたいだと思って一目惚れしたのは、この映画の影響が心のどこかにずっと残っていたからかもしれません(笑)。

退廃や背徳は、「熱情の友」。
間宮と及川も溺れてしまっていますね。恋のなせる魔術だわ…。
間宮は可愛い熱帯魚(笑)。及川の水槽に入ったみたい…。

夕方前のファミレスで。

外出で昼食を採る時間が無く、夕方前に入った会社近くのファミレス。
何の気無しに携帯で自分のblogを見た時、目に入って来た『コメント:1』の文字。
目を疑いました。こんな場末blogに何故、と。
それほどアクセス数がある訳でもありませんが、それでもコメントや拍手を頂くことで
ああ、私は、この方たちの為にも書き続けよう、と結構本気で思わされています。
単純です、本当に。

空になった家の表現で、本当は水槽を持ち出そうとしたのですが
世話をしないと不衛生になって嫌だな、と急に現実的な思考が働き、辞めました。
水槽の外から覗く歪んだ顔は、誰の顔なのか。
もう少々、お付き合いください。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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