Blog TOP


桎梏★(2/4)

シリコン製の細い棒を口に含む。
唾液を絡みつけるように、音を立てながらしゃぶりついた。
滑らかで、何の味も臭いも無い。
彼のモノと重ね合わせるには、あまりにも違いすぎた。

片足をスラックスから引き抜き、開脚して下半身を露わにさせる。
挿入している部分が良く見えるようにと剃毛された部分には、短い毛が生え始めていて
チクチクとした感触が、指を軽く痛めつけた。
咥えていた玩具を、自らのモノに擦り付け、尻の方へと下ろしていく。
指で押し広げるように、肛門の辺りを押さえる。
淫乱だと男たちに揶揄されてきた穴は、潤滑油無しでも、異物を易々と受け入れた。

狭い道を押し広げるように入り込んで来る息苦しさが、堪らない。
腰を上げるように、上半身を少し寝かせる。
捻りながら、中を掻き混ぜていく。
おぼつかない手で再びモノを扱き出した。
「やす、ひろ・・・さん。俺を・・・」
名刺でしか知り得なかった、初めて口にする名前。
「このままに、しない、で」
背筋が痛くなるほどの快感に溺れる姿は、視界が霞んで、よく見えなくなっていった。


彼と物件を担当して1か月も経った頃、現場の調査で顔を合わせる機会に恵まれた。
ぎこちない空気に耐えながら、ビル内の設備機器を見て回る。
あるフロアの空きテナントを調査中、図面の隅にある小部屋に目が行った。
事務エリア用の空調機が収められている機械室。
今回の調査の対象にはなっていなかったけれど、念の為、鍵は開けて貰っていた。
「現況図とは、随分違いますね」
天井内の機器を見ていた彼が、脚立を降り、振り向きざまにそう声を掛けてくる。
西日を浴びて困ったように笑う姿に、思わず声が出なかった。
「ま、まぁ、良くあることとは言え・・・困ったもんです」

分からないのか、これが、最後のチャンスだって。
頭の中の叫びが、背中を押す。
「・・・そうだ、エアハンも見て行きます?」
「機械室、開いてるんですか?」
「ええ、鍵を開けておくように、言ってあるので」
OAフロアに映る俺の影に、脚立を担いだ彼の影が俄かに重なる。
ここで彼に拒絶されたら、俺は、どうなるんだろう。
不安が、歩みを少しだけ遅くさせた。

防音ドアを開け、彼を先に中へ促す。
「随分綺麗ですね。まだ新しいからかな」
「確か、一昨年くらいに入れ替えたんだったと思いますよ」
機器やダクト、配管を一通り見て回る彼を見ながら、脇にあるドアを閉める。
その音に気が付いたらしい彼は、怪訝な表情で俺を見た。
「・・・どうしました?」

こんなにも緊張で胸がはち切れそうになったことは、あっただろうか。
近づく俺を前に、後ずさる彼の背後には躯体壁。
逃げ道は無い。
「な、永岡さん?」
その呼び掛けが、心の堰を崩す。
そんな風に、呼ばないで欲しい。
もう一度、名前を呼んで欲しい。
震える手を彼の頬に伸ばし、そのまま唇を重ねた。

身体に腕を回し、抱き締める。
薄く開いた唇の間から舌を差し入れると、戸惑いながら彼の舌が絡んで来た。
待ち侘びていた、感触。
動きが滑らかになる頃、名残惜しさを我慢して顔を離し、彼を見た。
「お願いです・・・俺から、目を・・・逸らさないで」
眼前の顔が、微かに滲む。
見つめ合う眼が細くなり、腰の辺りに添えられていただけの彼の手が、背中に回る。
苦しいくらいにきつく抱えられた身体が、熱くなるのを感じた。

「ごめん・・・オレ」
彼の声が、耳に響く。
言い訳なんて、いらなかった。
「もう、抑えられない・・・」
「・・・え?」
「俺のこと、壊れるくらい、愛して・・・下さい」


絡めた指が、離せない。
見つめあったままで、どのくらいの時間が経ったんだろう。
「何時まで、だっけ?ここ」
「一応、5時半までには・・・事務所に戻らないと」
俺の答えを聞いた彼は、ふと自らの時計を見やる。
誘われるまま視線を落とした瞬間、身体が壁に押し付けられた。
耳元に迫る口から、小さく息を吐く音が聞こえる。
「・・・どうすんだよ。スイッチ、入っちまいそう」
低く響く声が身体中を痺れされる。
空間を圧迫するように置かれている空調機が、否が応にも彼の肩越しに目に入ってきて
今すぐにでも、そんな欲望とせめぎ合う。

彼の唇が首筋を撫でる。
耳の後ろに息がかかり、敏感な場所がくすぐられる。
舌がもたらす温かく湿った感触が上半身を強張らせた。
衝動の蓋を開けようとする身体を這う手を、無意識の内に制してしまう。
我に返ったかのような彼の溜め息が、肩口を滑って行った。

□ 22_破壊★ □ ※SM表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
■ 1 ■   ■ 2 ■   ■ 3 ■   ■ 4 ■   ■ 5 ■   ■ 6 ■   ■ 7 ■
□ 52_桎梏★ □
■ 1 ■   ■ 2 ■   ■ 3 ■   ■ 4 ■
>>> 小説一覧 <<<

コメント

非公開コメント

ベルベットの肌触り

昨夜、テレビで映画『悪人』を熱心に観ていた夫。番組が終わってから私の顔をじっと見て、「深津/絵里に似てるな。」
娘にジョ/ニー・ディップにちょっと似てると言われたばかりなので、男に似てると言われなくて良かったわ(笑)。

この間、友達と食事に行った時、乗せてもらったベ/ン/ツのSクラス。滑るように流れるように走って行く、その感じそっくりです、今日の更新された文章!
ベルベットの肌触りのようで、読みながらゾクゾクしました!本当に惚れ惚れする文ですね。

『使ってナンボ。』で、最後にまべちがわさんが書かれた事についての私の個人的な考え。ラストスパートでメチャクチャに突かれた後、挿れられているソレを締め付ける時が、女性側の一番精神的に満ち足りる瞬間だと思います。

嗚呼、本能。

どれもこれも同じような文体だと、自分では思っているのですが
それぞれにおぼろげな色が付いているのでしょうか。
特に、一度出来上がった話の派生なので、それがより濃いのかも知れません。

繁殖の為なんて、つまらない詭弁ですね。
本能のままに快楽を求める情欲を表現できるような文章が書けるようになりたいと
リアルなコメントを頂いて、思いました。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

*** Link Free ***



>> 避難所@livedoor
Novels List
※★が付く小説はR18となります。

>>更新履歴・小説一覧<<

New Entries
Ranking / Link
FC2 Blog Ranking

にほんブログ村[BL・GL・TL]

駄文同盟

Open Sesame![R18]

B-LOVERs★LINK

SindBad Bookmarks[R18]

GAY ART NAVIGATION[R18]

[Special Thanks]

使える写真ギャラリーSothei

仙臺写眞館

Comments
Search
QR Code
QR