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桎梏★(1/4)

冷たい人間だ、と言われることがある。
あまり感情を外に出さないからなのか。
気の許せる仲間も、数は多くない。
それは、自分の中に抱えるものがあまりにも醜悪で
如何に悟られないかを日々思案している結果なのかも知れない。

折角、全てを曝け出せる存在を得たと思っていたのに
身体に触れて貰うことも、言葉を囁いて貰うことも、もう出来ないんだろうか。


「永岡さん、外線1番にコンサルティングサービスの楠木さんからお電話です」
「ありがとう」
苗字を聞くだけで、指が微かに震える。
動揺を振り払うように、息を吐いて受話器を取った。
「替わりました。永岡です」
「お世話になります。CSの楠木です。今度の現地調査の件なんですが・・・」

彼と出会ったのは、とあるクルージングスペース。
虐げ、虐げられる関係になってから、もうどのくらい経つだろう。
身も心も絡め取られていく幸せを感じていたところに生じた、関係の捻れ。
子会社の社員として顔を合わせた彼は、明らかに動揺していて
見ている俺でさえも居た堪れなくなったのを、今でも覚えている。
もちろん、同じように衝撃を受けた俺は、表に出さないよう、必死に耐えていた。

その出来事が彼をどう変えたのか、以降の態度で明白だった。
縋るように掛け続けた電話にも、祈るように書き続けたメールにも応じてくれない。
彼は、俺との関係を終わらせようとしている。
そう思って、一人、打ちひしがれる日々が続いていた。

社用の電話にさえ出ることが怖くなってきたのは、それから2週間ほど経ってからだろうか。
仕事が進展していくにつれ、急速に過去が遠ざかっていくようで、不安になる。
心の拠り所だったはずの受話器の向こうから聞こえてくる声さえも、冷たく響いた。
それなのに、身体は未だ彼の声に依存しているようで
電話が終わった後に残る悲観的な焦燥感が、鼓動を僅かに早めていく。

お世話になります。
--- 何て言えば良いか、分かってるだろ?
25階のACMRについては対象外と言うことで宜しいですか。
--- もっと、やらしい顔、見せろよ。
12階と13階の更改工事の図面から、一部、機器が抜けているようなんですが。
--- こんなにヒクヒクさせて・・・どうして欲しいんだ?
いえ、こちらこそ、宜しくお願いします。
--- 我慢しろって言っても、無駄だろうけどな。

耳に残る薄情な言葉と、彼から与えられた言葉を混ぜ合わせる。
自らの身体を慰める行為は、あれから激しさを増す一方だった。
1時間も、2時間も、ひたすらに虐げる。
痛みが快感に変わらなくなっても、何かの刺激を感じていなければ、心が壊れそうだった。


クローゼットに押し込んである、小さな旅行鞄。
中に入っている様々ないかがわしい道具を見るだけで、身体が疼いた。
彼から貰った首輪を、ネクタイを外したワイシャツの下に、きつめに着ける。
自然と息が荒くなり、胸元の辺りから熱が広がっていく。
ベッドに背もたれるよう床に座り、上半身と下半身をそれぞれに弄る。
正面にある鏡には、乱れた服装の自分が映っていた。
「お願い、します」
背を向けた彼の幻に向かうよう、そう呟いた。

スラックスから引き出したシャツの中に、手を差し込む。
掌の熱が胸の辺りの熱と混ざり合っていく。
興奮を表すかのように勃起した乳首に指を当て、静かに撫でる。
右手で服の上から包むように弄っていたモノが、その刺激に呼応するように僅かに震えた。
力を入れて摘み上げると、堪らない刺激が背筋を駆け、身体を仰け反らせる。
奥底に潜む被虐欲求が、一気に顔を出して来るようだった。

ワイシャツのボタンを外し、中のTシャツをたくし上げる。
大きめの錘が下がるクリップで、淫らな突起を苛める。
重力に引き摺られるよう、上半身が軽く前傾した。
首輪による息苦しさと痛みとが相まみえることで、脳内で快楽が生まれていく。

下半身の昂揚も、スラックスから顔を出したモノの状態で明らかだった。
液体に塗れた先端を、親指で潰すように愛撫する。
「・・・っう」
深い息とともに漏れる声。
ずれた眼鏡で視界が歪んでも、眼前に映る自らの痴態からは逃れられない。
「もっと、見て。もっと、虐めて・・・下さい」
滑りを纏うモノをゆっくりと扱きながら、懇願を口にする。
この手が、彼のものだったら。
遣り切れない想いが、身体を徐々に絶頂へと導いていく。

□ 22_破壊★ □ ※SM表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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□ 52_桎梏★ □
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コメント

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狡い女も心を奪われる!?

『破壊』の永岡視点というリクエストにこたえて頂き、ありがとうございます。
幾つかリクエスト候補を挙げていた理由は、恥ずかしくて本命をカモフラージュしたんですよ(笑)。狡い女ですね、私って!
そしたら、まべちがわさんにトランプの持ち札をズバリと当てられたようです。

第一話から、ドキドキしてアドレナリン急上昇(笑)。
まべちがわさんに脱帽しました!あなたの瞳を見たら、心の中も見抜かれそうです…。

情熱に惹かれました。

大変お待たせしまして、申し訳ございませんでした。
リクエストを頂いた時点で、どれにしようか迷ってはいたのですが
一番情熱的なコメントを頂いていた話を選んでみました。
結果、良い方向に転んだようで何よりです。
ご期待に添える話になっていると良いのですが…。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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