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破壊★(4/7)

初めて味わった、加虐の悦び。
そして、他人を服従させると言う支配感に、憧れのような想いを抱き始める。
名前も知らない行きずりの男に、俺は、変えられて行っているのかも知れない。

シャワーから降り注ぐ湯が、行為の跡を消し去っていく。
後ろから彼の腰に手を回す。
振り向いたその表情は、穏やかだった。
濡れた髪が顔に触れ、そのまま唇を重ねる。
柔らかい感触が、言葉を促した。
「今、付き合ってる奴、いるの?」
一瞬驚いた表情を見せ、彼は言った。
「いえ、特には」
「こうやって、知らない奴相手にしてる方が、良い?」
「そう言う訳じゃ、ないですけど」
彼の指が、俺の頬を撫でる。
「怖くて」
「何が?」
「背中を向けられるのが・・・」

自分がゲイであると確信した時から、俺は人との距離を取る様になった。
受け容れてもらえない苦しさ、続かない蜜月の関係。
長年そうやって過ごす内に、自分自身、何処かで諦めてしまったのかも知れない。
誰かを求めると言う行為を。
いざ、機会が訪れたとしても、容易に向き合えるかと言われれば、どうだろう。
きっと、目の前の彼も、同じ思いだったに違いない。

「じゃあさ」
頬を撫でる手に、自分の手を添える。
「背中を向けられないくらい、目を逸らせなくなるくらい、俺を嵌めてよ」
彼は、俺を見たまま唇を震わせる。
言葉を選んでいるのだろうか。
しばらくの間が空いて、彼は口を開く。
「・・・分かりました」


彼は、マサヤと名乗った。
俺は、ナカジマ、と咄嗟に偽名を口に出す。
後ろめたい部分があったのも確かだけれども
携帯の番号さえ分かっていれば、名前が何であれ、関係を続けて行くことは出来る。
そんな風に、軽く考えていた。

SMの経験だけで言えば、彼は俺よりもずっと上を行っている。
プレイ可能なホテル、様々な道具、そして自分の身体の限界。
どの知識も持っていない俺は、彼に教えを乞う事も多かった。
その中でも、行為中の彼は、決して主従関係を崩すようなことはせず
ただひたすら、俺の意のままに、快楽に身を預けていた。


そのホテルの部屋は、磔台と大きな鏡があることが売りだと言う事だった。
シャワーを浴び、一通りの準備をした後、彼は俺に向かって言う。
「お願いします」
それは、彼と俺との間にある約束。
プレイの最初と最後には、必ず挨拶をすること。
お願いします、で始まり、ありがとうございました、で終わる。
この間、彼は俺に服従する時間を過ごすことになる。
挨拶をするタイミングは、彼の一存。
その一言で、俺はスイッチを切り替える。

手と足、腰の部分に枷がついたXの形をした台に、彼を拘束する。
期待と不安が入り混じった目が、俺を見ていた。
プレイを楽しむ際、彼は様々な道具を持ってくる。
俺が興味を持った物も含まれるようになっては来たが、概ね、彼の嗜好によって選ばれている。
ただ、それをどう使うかは、俺の自由だ。

まだ柔らかい状態のモノに、金属製の貞操帯を取り付ける。
南京錠が閉まる、カチリと言う小さな音で、彼の顔が小さく歪む。
「我慢しろって言っても、無駄だろうけどな」
そう笑いかけると、彼は唇を噛んだ。
乳首には、クリップを着ける。
銀で出来た小さな鈴がついていて、彼が身を捩る度に、この空間に似つかわしく無い音を立てた。
それだけで、鏡に映る自分の姿を見る彼の身体は、紅潮していく。

ローションを手に取り、腰から尻へ塗り広げる。
アナルをほぐすように指で撫でていると、大きな吐息をついた。
「力、抜けよ」
小さめのローターを押し込むと、彼の腹筋が陰影を表す。
「これじゃ、物足りないだろ?」
「・・・はい」
素直な欲望に応じるよう、もう一つローターを入れ、プラグで栓をする。
スイッチを入れるまでも無く、彼の吐く息に声が混じった。

「言うことは?」
尻から伸びる2本のコードとリモコンを、腰に巻かれた枷に押し込む。
「ローターの、スイッチ・・・入れて下さい」
望みどおり電源を入れてやると、彼の上半身は大きく仰け反り、鈴が甲高い音を立てる。
ローター同士がぶつかる音が、喘ぎ声に混じって聞こえてきた。
「ケツの中は、どうだ?」
「は、あ・・・気持ち、良い、です」
リモコンの強度を徐々に上げると、喘ぎは乾いた悲鳴のような声に変わる。
刺激に耐える彼の顔が、欲情を駆り立てた。
鏡の方を向かせるよう、彼の顎を掴み、耳元で囁く。
「恥ずかしい顔、しやがって」
その目は、更なる加虐を望んでいた。

□ 22_破壊★ □   
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□ 52_桎梏★ □
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相互依存

M男の名前はマサヤ。頭文字がM(笑)。
咄嗟に偽名を名乗ったナカジマ。用心深い。

英国の著名な女流作家で哲学者でもあるマー/ドックの作品には、しばしばゲイが登場する。彼女によると男性の同性愛は対等な関係でなく、他が他人を支配したり支配されたりするから、自分は否定的だと言う。
ところが、作品を読むと、そのゲイの登場人物が一番魅力的だったりする。
言っていることと違うじゃん!!

そう言えば、西部劇や数々の映画で活躍したハリウッドの大スターで、その後、監督としても成功したI監督。本人はタカ派を自称。
しかし、作品はリベラル!?
これまた、言っていることと違う!それを指摘したら、
「米国では保守派の存在が大きい。そんな中で、自分の本当にしたい事をする為に、敢えてそう言う必要があった。」
と、家族に言われて納得しました。
ナカジマとマサヤは、相互依存になってきましたね!執着・愛…。呼び名は色々ありますが…。互いに、得難い存在になってしまってます。
『破壊』とは、何を破壊するのか!?ますます、気になります。

一人じゃダメなこと。

いわゆる三大欲求は自分一人でも発散することが可能です。
けれど、こう言った行為は、相手がいて初めて成立するもので
その欲求は一人で解消することが出来ません。
しかも、嗜好が特殊な分、その絆は強くなっていくのかも知れません。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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