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桎梏★(3/4)

衝動のまま身体を傷つけられることに、抵抗は無い。
彼と出会う前までは、行きずりの男たちに蹂躙されることが、ストレスの捌け口にもなっていた。
ただ、それはあくまで身体の欲求を満たすだけの行為。
心までも満たす必要は無いと、思っていた。

互いのことは殆ど知らない関係。
そんな男がもたらした恋愛感情は、頑なになっていた俺を大きく変えた。
明確な意思表示は、彼からも無かったし、俺からもしなかったけれど
何処かで繋がっている安心感は、確かに持っていたと思う。
彼から与えられる刺激の全てが、俺の身体と心を虜にしていく。
それが堪らなく、幸せだった。


調査を一通り終え、書類をまとめる段取りを付け終ったのは、夜の7時過ぎ。
「ちょっと、寄って行きたいところがあるんですけど、付き合って貰えます?」
帰り際、彼が言った一言が様々な憶測を呼び、隣を歩く彼の息遣いを感じるだけでも、身体が疼く。

ある駅で電車を降りた時から、彼の意図は把握できた。
駅の目の前には、大きな海浜公園が広がる。
足を踏み入れたことはなかったが、夜の姿は伝え聞いていた。
潮風に煽られる彼のスーツの上着を見やりながら、袖口に手を伸ばす。
彼は振り向くことなく、俺の手を取り、軽く引き寄せる。
闇に浮かぶ木々の薄気味悪い姿が、その感触をより確かなものにしてくれるようだった。


道から入った林の中。
木を背にして立ち止まった彼は、背後から抱きしめるように俺の身体を引き寄せた。
言葉も無いまま、彼の手がスーツの上を滑って行く。
左手が上着の中に入ってくると同時に、右手が太腿から上へ上がってくる。
心音が耳の奥を支配するほどの興奮が、静かに身体を蝕んでいくのが分かる。
耳に寄せられる唇の気配に呼ばれるよう振り向き、口づけを求めた。

軽く唇を触れ合わせただけのキスをしてくれた彼は、低い声で囁く。
「何考えて、こんなにしてるんだ?」
股間の辺りを弄る手には、俺の昂ぶりが明白に感じられていただろう。
「やらしい妄想しまくって、硬くしてんだろ?言ってみろよ」
ネクタイが解かれ、喉元の窮屈さが軽くなっていく。
ワイシャツのボタンを外すぎこちない手の動きが、唇を震わせた。
「・・・貴方に、虐めて貰うことを、想像して・・・興奮してました」
「どんな風に?」
「縛られたり、咥えさせられたり・・・罵られたり」
僅かに歪む彼の口が、満足げな表情を演出する。
求めていた姿が、目の前にあった。

Tシャツの上から感じる指の感触が、焦燥感を募らせる。
痛む程の刺激を欲している部分を、彼は優しく撫でるだけに留めている。
欲求を口にすることも出来ず悶える身体は、酷く熱を帯びているようで
暑い季節でも無いのに、首筋を汗が流れて行った。

スラックスのファスナーが下され、服の中から昂ぶったモノが顔を出す。
「見えるだろ?」
先端を撫でる彼の親指に、だらしなく流れる汁が纏わり付き、糸を引く。
微かな水音が、恥ずかしさと快感を身体に与えてくる。
「想像だけでベトベトにしやがって・・・変態が」
摘み上げられる亀頭が、照りを帯びながら潰れていく。
「う・・・っあ」
「ほら、こっち向けよ」
快感で滲む視界。
半開きの唇に、彼の舌が這う。
背中から伝わる鼓動、尻の辺りに感じられる昂揚。
俺だけじゃない、そのことが、嬉しかった。
「どうして、欲しいって?」
「・・・しゃぶらせて、下さい」


首筋から抜かれたネクタイが、頭上で手の自由を奪う。
木を背にしてしゃがみこまされた身体が、腕を引っ張られることで上向かされる。
股間で荒ぶる器官は鎮まることも無く、潮風に曝されていた。
目の前に、彼のモノが差し出される。
一瞬、彼の顔に視線を投げ、幾分硬さを帯びた部分に舌を伸ばす。
彼の味、彼の臭い。
脳に沁みる感覚が、衝動をエスカレートさせる。

根元から先端に向かって舐め上げる度に、うなだれながら奉仕を受け入れる彼の表情が目に入った。
高圧的な眼差しと、快楽に震える唇。
拘束されたままで掴まれた手に、彼の指が絡む。
やがて、眼鏡が外されると共に、口の中が彼のモノで満たされる。
僅かに空いた口端から息を吸い込み、頭を動かし始めた。

腰が顔に打ち付けられる音が、徐々に激しさを増す。
気道が圧迫されて漏れ出す呻き声が、木々の間を抜けていく。
薄くなる意識が、頭上から降ってくる荒い息遣いに呼び止められる。
「これ、が、良いんだろ?」
霞む彼の表情は、よく見えなかった。
すぼめていた口を少し開き、唸るような声で問いに答える。
更なる快楽を求める彼の腰の動きが早くなった。
口の中を満たしていた唾液が首筋へと流れ落ちる。
不快感すら、快感に取って代わる彼からの加虐。
彼が絶頂を迎える頃、俺の身体は、この現実にすっかり酔いしれていた。

□ 22_破壊★ □ ※SM表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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□ 52_桎梏★ □
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海と栗の香り

栗の花のむせかえる香りは、ティッシュで拭き取った精/液と同じ青い匂いがする。
普段は甘過ぎて食べない栗のケーキのモンブラン。
秋に一回位は食べます。でも、やっぱり、甘い!
プルー/ストの『失われた時を/求めて』には、紅茶に浸したマドレーヌを食べて、祖母との懐かしい想い出が甦るという題名に繋がる有名な場面があります。
今日の海浜公園の場面。
海の潮の香りから、荒い息遣いや性急な手の動きなど様々な事が湧き上がり、まさしく五感に働きかけられ、堪能しました。

嗅覚のエロス。

嗅覚から記憶が蘇り、心身を刺激する。
画面からその刺激を与えることが出来ないのが残念なくらい
この直接的な感覚が好きです。
煙草の臭いが染みついた鄙びたホテル。
古い図面が無造作に積まれ、紙の臭いが漂う事務所。
うっすらと身体が昂ぶる感じが、人間の単純さを思い知らせてくれます。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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