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桎梏★(4/4)

目の前にしゃがみ込んだ彼の舌が、俺の唇から首に向かって流れていく。
刺激を待ちきれずに細かな上下を繰り返すモノが、不意に指で弾かれる。
「ん・・・っ」
「このまま、帰るか?」
意地悪な声が、耳に響く。
縋るように、彼を見た。
「何だ?」
「イきたい・・・です」
鋭い笑みを浮かべながら、彼の手が俺のモノを扱き出す。
それは一気に高みへと引っ張り上げるような勢いで
口を閉じる余裕も無いほど強張った身体の中で、腰だけが自然と浮いていく。

ふと、その手の動きが止まる。
声にならない訴えは、彼の気持ちをより興奮させたのだろう。
「焦らされるの、大好きだよな?」
彼の手はモノから離れ、スラックスからワイシャツを引出し、服の中へと入っていく。
宙に浮いた衝動のやり場となった部分を、2本の指が静かに弄る。
吐息が、眼前の彼の前髪を揺らした。
「そ・・・こ」
「相変わらず、やらしいな。こんなにおっ勃てて」
「も、っと・・・」
じれったい刺激に捩る身体を、彼は愉快そうに眺めている。
「もっと?」
「強く、摘んで、下さい」
鼻で笑う声に、被虐心が膨らむ。
強烈な痛みが背中まで突き抜けた。
「どうなんだ?」
乾いた喘ぎが、喉を揺らす。
「きも、ち、いい・・・です」

頬を撫でる風さえも、奪えないほどの熱。
絶頂の寸前まで追いやられながら、手を引っ張られる行為が、何回繰り返されたのか。
「も・・・イ、かせて・・・もう」
うわ言のように口から言葉が出ていく。
閉じられない唇に触れる彼の唇の感触だけでも、身体が震える。
モノに軽く添えられただけの彼の手に擦り付けるよう、無意識の内に腰が動いた。
「そんなんで、イけるのか?」
無駄な足掻きであることは分かっていたけれど、何でもいいから、きっかけが欲しかった。
おかしくなっていく身体を、解放する為のきっかけが。

彼の腕が俺の頭を抱えるように回り、片方の手も再び動き始める。
「・・・う・・・はぁ」
力の入らない足が、徐々に崩れ落ちていく。
耳元で感じる、小さな溜め息。
「雅哉」
快感で混乱する頭の中に、甘い囁きが響いた。
「・・・愛してる」
感情が、身体中を突き抜ける。
信じられないほどの、昂ぶり。
「ん・・・ああっ」
絶頂と同時に喉奥から吐き出された声が、闇に溶けていった。

久しぶりの満足感に囚われた身体は、しばらく動かなかった。
乱れた服装のまま、何度となく口づけを交わす。
「楠木、さん」
「苗字なんだ」
両手で頬を包み、真っ直ぐに視線を向けてくる彼は、何処となく照れたような笑みを浮かべた。
「・・・靖弘さん」
「何?」
「本当に・・・ありがとう、ございました」


真夜中の公園の中を歩きながら、彼は自身が持つ葛藤や苦悩を話してくれた。
過去に受けた行為から残る、性的なトラウマ。
偽名を使っての付き合い。
逃れられない上下関係によって、卑屈になって行った自尊心。
感情を表に出さなかった俺の態度も、それに拍車をかけた。
「オレが上であるべきだ、って言う強迫観念が、あったのかな」
街灯を背にした彼の顔は、切なげだった。
「弱いところを見せたら、君が去って行くんじゃないかと思って、怖かった」
「そんな訳・・・ありません」
隣に立つ彼の手を取る。
静かに絡んだ指は、やがて固く握り締められた。
「俺は、身も心も・・・貴方に拘束されてますから」
手を自分の口元に引き寄せ、そっと唇をつける。
「この指じゃないと、ダメなんです」
風が止んだ一瞬、息を飲む音が聞こえた。
「枷をかけられてるのは、オレの方かも・・・知れないな」
身体が強く抱き締められる。
息苦しさと、軋むような痛みが、幸せを実感させてくれた。


殆ど水と化した湯を浴びても、火照った身体は冷めては行かない。
激しい鼓動と共に全身へ回る熱を抱えながら、ユニットバスを出る。
いかがわしい内装の部屋に置かれた革張りのソファに座った彼は、俺に笑みを向け立ち上がった。
手にした革の首輪を少し緩めに着け、その指が顎を撫でる。
求めるように突き出した唇に、彼の唇が重なった。
軽く触れ合わせ、濃厚に舌を絡ませる。
息苦しさで僅かに潤んだ彼の眼が、不意に狂気を見せる。
焦がれていた視線が、言葉を押し出した。
「・・・お願い、します」

□ 22_破壊★ □ ※SM表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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□ 52_桎梏★ □
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開かずの扉

オフィスにあるような鍵付きの両開き扉のスチール本箱が、ズラリと壁面に並ぶ夫の書斎。鍵がかかっているので、「開かずの扉」になっていて、中に何が入っているか分からない。
ある日、鍵をかけ忘れた一つの本箱が少し開いていたので、好奇心に駆られて開けてみたら…。
その中に『サ/ド全集』がありました!
サディズムのあのサ/ドです。
黙っていられずに帰宅した夫に、
「サディストなの?」と、ズバリ直球を投げつけました。
すると、顔色も変えずに、
「お前は推理小説やサスペンスを良く読んでるけど、それを読んだ読者は殺人鬼か!?本を読んだからといって、実行するわけでは無い!」
なんだか上手く丸め込まれました。
他にも、稲垣/足穂や折口/信夫、フランスの哲学者M・フー/コーらの全集がありましたが、一見共通点の無さそうなこの三人の共通点は同性愛。
後、別の本箱には手塚/治虫全集60巻があり、子供にも触らせずに鍵がかかっています…。夫は全集コレクターかしら!?

内面を映す鏡。

本棚は、その人の内面を映す鏡だと言う話を聞きます。
お恥ずかしいことながら、私はあまり本を読まない為に、本棚も大変貧相で
殆どは仕事関係の専門書です。
全集がぎっしり詰まった本棚を想像するにつけ
もっと読書を嗜む様な人間だったら、1時間に1段落しか書けない、なんて言う
苦行に苛まれる必要もなかったのかな、と思ってしまいます。

心の青アザの隣に

あなたの小説や文体が好きです。その才能をどれ程尊敬している事か!
執筆に疲れて休憩される時に、傍に居てお茶や御菓子をお出しする事は出来ませんが、夜空を見上げれば、空はずっと繋がっていて、同じ月を見られます。

創作の喜びはまべちがわさんが享受されるもの。
そして、その苦しみは、東の空に向かって撫でて差し上げます。

9日の『嗅覚のエロス。』の文章。素晴らしいです。そっと、心の青アザの隣に、しまっておこうと思います。

画面の向こう。

不思議な感覚です。
自宅でPCに向かって黙々と文字を打つ。
blogにアップされたその文字を、全く知らない方々が画面を通して目にする。
更に、その中の幾人かの心に、何かしらの感想を残す。
回りまわって、今まで頂いたことの無いような言葉を頂ける。

もちろん、blogとして公開しているのは、誰かの評価を求めているからであって
それは多少の自惚れもあるかも知れませんが
どんな形であれ、誰かに褒められるのは怖いくらいに嬉しいものだと、実感します。

このお話。シビレました。ありがとうございます。

ありがとうございました。

コメント頂きまして、ありがとうございます。
再びそのような感想を抱いて頂けるような話が書けるよう、精進して参りますので
今後とも宜しくお願い致します。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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