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治癒★(2/6)

一人暮らしは僅か2日で終了した。
新しい同居人は、どうやら高校生らしい。
両足と腕を包帯でグルグル巻きにされ、顔にも細かな傷を負っている。
学校の帰り、トラックにはねられたんだと、付き添いの母親が教えてくれた。

翌日、見舞いにやって来た騒がしい集団。
男子高校生らしいノリの中でも、彼の表情は冴えなかった。
漏れ聞こえて来る話によれば、彼はサッカー部に所属している高校2年生。
落書きに汚されて行くギプスを恨めしく思う気分は、きっと俺よりも遥かに強いだろう。
「もう、オレ、サッカー無理だ。こんなんじゃ」
淋しげな呟きが、場の空気を一気に冷やして行く様だった。


ベッドから車椅子に乗り移るのにも、大分慣れてきた。
恋人との面会にも、同じ部屋に他の患者、しかも高校生がいれば気を遣わざるを得ない。
「うわ、寒っ」
貴司と共にやってきたのは、入院している病棟の屋上。
少し小高い所に建っていることもあり、程ほどの夜景が見渡せる。
しかし、今は真冬。
流石に人っ子一人いない。
「今日は特別寒かったからなぁ」
そう笑いながら、彼は自らのコートをパジャマ姿の俺にかけてくれた。
「でも、すげぇ綺麗」
申し訳程度に設置された小さなベンチに腰掛け、彼は眩い光を零しながら浮かぶ夜景を眺めている。
静かに重ねられた手が、凍える身体を温めてくれる。
遠くに電車の走行音が聞こえる以外、耳に入ってくるのは彼の息遣いだけ。

「貴司」
「ん?」
手を僅かに引いただけで、彼は俺の意図を汲んでくれる。
傾げた顔がゆっくり近づいてきて、唇が触れ合う。
薄い隙間から舌先を入れると、熱を帯びた彼の舌が絡んで来た。
互いの吐息が、顔も、身体も火照らせる。
「眼鏡・・・曇る」
「・・・うん」
どちらからも離れることの出来ないキス。
息苦しくなるまで、ひたすら求め合う。

肩に置かれた手を、自らの胸元に促す。
「誰か来たら・・・どうすんだよ」
「逃げる」
「置いてって良いのか?」
「ひでぇ」
曇りが晴れて来た眼鏡の奥の眼が細くなる。
コートの中に潜り込むように、彼の頭が胸元に沈んでいく。
下から入り込んだ手が脇腹を撫で、そのくすぐったさと温かさが、心地の良い快感を与えてくれる。
2、3個ボタンを外されると、隙間から風が入ってきて、身体が震えた。
「・・・勃ってる」
何処か愉快そうな囁き。
「寒い、からだろ」
直後、熱い舌が乳首を舐め上げる。
思わずビクついた身体が、車椅子の背もたれを軋ませた。
吐き出した息が、夜の空に溶けていく。

上半身から徐々に手が下へ伸びる。
そんなに溜まってた訳でもない。
普通じゃないシチュエーションが、身体の昂りを促しているのだろうか。
俄かに鼓動が早くなるのを感じながら、その手の気配を待ち侘びた。
はだけられた胸元から、首、喉仏を舌が滑り、耳たぶが唇で挟まれる。
「ここは、寒いせいじゃ、無いよな」
「そ・・・ね」
硬くなり始めたモノを、彼の手が緩やかに扱く。
荒くなった鼻息に反応するように、動きは大胆になる。
「声、出すなよ?」
からかうような、意地悪な口調。
パジャマの中に入り込んだ手が与えてくる幸せな刺激に、目を閉じて耐えた。

禁じられた分だけ、焦燥感は募る。
半開きになった口から白い息が止め処も無く溢れ、視界をぼやけさせる。
「イきそう?」
俺の身体を抱きかかえるように腕を肩に回した彼が、耳元でそう呟いた。
「ん・・・も、出る」
頬に触れた唇に呼ばれるまま、顔を彼の方へ向ける。
悶える口の中に舌が差し込まれ、抑圧された声が喉から漏れた。
手の動きが、衝動を押し上げる。
絡み合う舌の感触を味わいながら、背筋を抜けていく快楽に溶かされる。
程なく達成感に包まれた俺の身体は、大きく車椅子を軋ませた。


「やっべ・・・もう、9時過ぎてる」
ハンカチで精液に塗れた部分を拭き取りながら、貴司は声を上げた。
「コート着る季節で、良かった」
俺の額に軽くキスをした彼は、俺の手を自らの股間に促す。
幾ばくか硬さを帯びたモノが、スラックスの中に感じられた。
呼吸を整えるように大きくため息をつき、その手を引き離す。
「今度は・・・オレの番、な」
「怪我人に、何させるつもりだ?」
「冗談だよ。ハルの顔思い出しながら、自分で抜く」
そう言って切なげに微笑みながら俺を見下ろす彼の腰に、腕を回し抱き寄せる。
顔の先にある、くすぶる膨らみに唇を寄せた。
「ちょ・・・やめろって」
「ホント、コート着てなかったら、電車乗れないな。これじゃ」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「じゃ、次は、俺の番な」

□ 37_明鏡 □
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□ 46_治癒★ □
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可憐な正体

同室者は高校生でしたか…。ドキドキ(笑)。

『野菊○墓』や『伊豆○踊り子』には純情可憐な乙女が登場しますが、あくまで男性から見た幻想ですからね。
たとえ外見が鷹のような猛禽類や北米の獰猛な熊のグリズリーみたいであっても、実は傷付き易くて繊細な心を持つ可憐な生き物なんですよね、男性は!
ヒロインより「お前の方が可愛いよ。」
って思いますね。

妄想の積み重ね。

どんなに親しい人間であっても、他人の心の中までは決して窺えません。
不意に嫌な部分が見えたりすると、その一面だけが印象となって刻まれることも少なくなく
人間なんて、そんなもんなんだなぁと何処か冷めてしまいます。
こう言った文章を綴っているのは、そんな現実から逃避する為なのかも知れません。
妄想に妄想を重ね、自分好みの人間を書いて行く。
自己満足の極みですね・・・。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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