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治癒★(6/6)

高校生なんて、身体は大人とそう変わらない。
大柄ではない彼の体つきも、痩せ型の貴司と比べれば、彼の方がたくましいだろう。
でも、まだ、子供だ。
頼まれたとは言え、高校生のモノを扱いてるとこなんか見られたら、俺はどうなる?

「彼女にでも頼めよ」
「彼女なんて、いねぇし」
「じゃ、車椅子でトイレ連れてってやるって。左手でも行けるだろ?」
「何で、ダメなんだよ」
「あのな」
「あんただって、眼鏡のお友達に、抜いて貰ってるんじゃねぇの?」
予期しない指摘に、一瞬言葉が出なかった。
ここでうろたえたら、図星がバレる。
「んな訳、ねぇじゃん。俺は右手で十分なんだよ」
「ふ~ん・・・」
彼の左手が、俺の相棒に触れる。
「・・・誰にも、頼めねぇんだ」
「俺なら、良いのか?」
「頼み、聞いてくれそうだなって、思ったから」
これは俺の本意じゃない、そう示すように大きくため息をついた。
「すぐ、イってくれよ?」


恋人と快楽を共有することが目的であって、射精はあくまでも手段。
でも、今は射精させることが目的。
キスも、ハグも、全部すっ飛ばして、モノを手にするだけ。
有り得ない状況に、些か緊張感が増してくる。
当然、彼も同じなのだろう。
背後からハーフパンツの腰周りを撫でるように手を入れると、肩に力が入り、背筋が浮き上がる。
身体を押さえるように腹に回した手に、その震えが伝わってくる。
「寄りかかってて、良いから」
そう呟くと、彼の身体の重みが上半身にかかってきた。

半分ほど皮を被っていたモノが、徐々に顔を出してくる。
口を閉じ、鼻から荒い息を出しながら、腕の中の少年は刺激に悶えていた。
頭の中に、ふと恋人の姿が浮かぶ。
ごめん、そう思わせたのは、俺の中の不埒な想いだったのかも知れない。

「北條さん?」
突然聞こえた声に、度肝を抜かれる。
咄嗟に彼の口を手で塞ぎ、取り繕うように叫んだ。
「あの、すみません、ちょっと・・・身体拭くの、手伝ってまして」
いきなりのことで驚いたのか、手の中のモノが一気に興奮していく。
「そうですか。じゃ、しばらくしたら、検温お願いしますね」
「はい・・・分かりました」
カーテン一枚隔てた向こうに立っていた看護士は、何事も無かったように去っていった。
それでも、激しく脈打つ鼓動が、強張る身体をなかなか解きほぐさせない。

彼の唇が薄く開き、濡れた吐息が掌に沁みる。
口を塞がれたからなのか、却って抑圧された声が身体から響いてくる。
上向いていく彼の顔を肩に抱えるように、手に力を込めた。
シーツを掴む左手が、強く握り締められる。
喉から搾り出すような呻き声と共に、彼の身体の力が抜け、俺の手を精液が伝っていく。
力の抜けた引き締まった身体が、もたれかかる。
目の前に落ち着いた幼い顔に、思いも寄らない愛しさが込み上げる。
俄かに目を覚ました衝動を感じながら、久しぶりの右手の活躍を覚悟した。


「これさ、いろいろオレも集めてみたんだけど」
年末とは思えないほど暖かくなった退院の日。
迎えにやってきた貴司は、何やら大量のカタログを持って来た。
「会社がOEMで車椅子メーカーに制御機器卸したりしているから」
見ると、例の車椅子サッカーのものだけではなく、義足や大学のパンフまである。
「そう言う関係の所に、ちょこちょこ手を広げてるみたいでさ」
「大学って・・・?」
「そこの大学、要するに、彼みたく・・・」
そう言って、貴司は空のベッドに視線を向ける。
「スポーツやってたけど、事故とかで障害負った学生に奨学金出してるんだって」
「へぇ・・・体育大学なんだ」
「障害者スポーツにも力入れてるみたいだよ」
もちろん、これが全てじゃない。
それでも、無限にある将来の可能性を手繰り寄せる手段になるのなら。
頑張れよ、心の中で呟きながら、隣のベッドの簡易テーブルに冊子を置いた。


松葉杖を抱えてタクシーのシートに座る俺に、彼は何となく申し訳無さそうに呟く。
「免許、やっぱ要るかな」
「何で?」
「こう言う時とかさ・・・あった方が、良くね?」
「俺は、もう二度と、事故はゴメンだけどな」
「そう言う意味じゃなくて」
「分かってる」

ポケットの中に感じる僅かな振動。
携帯を見ると、一通のメールが来ていた。
『右手の指、何とかくっついた。パンフ、ありがとう。眼鏡の彼氏によろしく』
思わず顔が綻んだのを、彼は見逃さなかったらしい。
「誰から?」
「ん?隣の高校生」
「何だって?」
「・・・内緒」
「何だよ、それ」
「妬くなよ」
「妬いてねぇし」
荷物の下に潜り込んだ彼の手を、少し引き寄せる。
ふと俺に視線を向けた顔を見て、心底気持ちが落ち着いた。
「免許、取んのは良いけど」
反面、俺は、彼がいなくなったら、どうなるんだろう、そんな気持ちが不安を煽る。
「絶対、事故るなよ?それだけは、約束してくれ」


久しぶりの我が家。
ほんの2週間なのに、その充満している空気が懐かしい。
ドアが閉まる音が聞こえると同時に、振り向きざま、彼の身体を抱き締めた。
「どうした?」
「やっぱ、落ち着く。お前じゃなきゃ、ダメだわ。俺」
少し身体が離れ、頬に温かな手の感触が纏わり付く。
「そんなの、知ってる」
唇が何度と無く触れ合い、互いの顔の熱が伝わっていく。
「オレも、そうだから」
微笑む表情に、心が癒される。
何があっても、彼がいれば癒し合える、乗り越えられる。
今の幸せに感謝しながら、再び彼の身体を強く抱き締めた。

□ 37_明鏡 □
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□ 46_治癒★ □
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コメント

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近頃のJK

最後は後味の良い結末。まべちがわさんはやっぱり筆力のある方ですね。
初対面の人にこんな事を頼む高校生もアレですが…。それにしても、最近の高校生、本当にぶっ飛びますよ!
娘の女子校では、部活は中高一緒。ジャ○ーズの某グループの大阪でのコンサートで、偶然、高校生の先輩と同時間に近くの席に居た事が分かり、娘と話が弾んだそう。その先輩によると、コンサートへはリア友とは行かず、ネットで参加者を募って、責任者がチケットを確保して行ったらしい。当日の目印は同じ色のシュシュを髪につけて!東京のコンサートへ一緒に行くだけの知り合いが東京にも居るそうです。
『追っかけ』じゃないですよ。
リア友と一緒に行かない理由は、『旅の恥は掻き捨て』で、心置き無くハシャグ為だそうです。因みに中学生は参加出来ないんです(笑)。

別次元の存在。

社会人になって長い年月が過ぎているせいか、普段高校生と接する機会は殆どありません。
それ故、彼らの行動や言動を想像するのは、なかなかに骨が折れました。
自分も同じ時期を過ごしてきたはずなのですが、時代が違い過ぎて、経験値を活用することも出来ず。
やっぱり、別の世界に住んでいるとしか思えない存在です。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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