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偽名★(8/10)

スタンドミラーの前に立つ、少し前屈みになった自分の姿。
「自分で、捲り上げてみて」
背後に立つ彼の声が、全身を痺れさせる。
息を吐きながらワンピースの膝の辺りを両手で掴み、ゆっくりと引き上げていく。
処理がなされた脛が現れ、やがて見えてくるのは両足の太腿に付けられたガーターリング。
そこに挟み込まれたえげつない物体から伸びるコードを見て、思わず手を止めた。
「・・・どうしたの?」
優しげで残酷な唇が、耳の裏を這う。
肩を軽く揺らしながら、目を伏せる。
見るまでも無く明白な変化が身体に起きていることを、認めるのが恥ずかしい。
「ちゃんと、僕に見せて」
キャミソールのストラップが、彼の手によって腕の方へ抜け落ちる。
露わになって行く上半身に、逃げ道は無いと覚悟を決めた。


自宅のマンションで出迎えてくれた彼は、夏を纏った俺の姿を見て、嬉しそうに目を細めた。
「珍しいね」
「たまには・・・良いかと思って」
玄関先に立ったままの俺の腰に手を回し、そのまま引き寄せる。
「綺麗だよ」
その囁きに追い立てられる鼓動を鎮める間もないまま、唇が重なり合った。
いつもより、情熱的だった、様な気がする。
互いの舌の感触を、貪り合うように味わう。
熱い吐息が顔を紅潮させる。
程なく離れた、けれど僅かな距離の先にある彼の目が、俺を捉え続けた。

「少し・・・散歩に行かない?」
「今から?」
「このまま脱がすのは、もったいないから、さ」
幾分昂揚した声に、微かな嫉妬心が生まれる。
普段の俺では生まれないであろう、欲情。
それでも、彼が求めているのは、俺と言う一人の人間であることを信じたかった。
「こっちの、私の方が・・・好き?」
くだらない問に、彼の表情が呆れたように明るくなる。
「そんなこと、気にしてるの?」
「・・・ちょっと、だけ」
「前にも言ったよね。僕は、君の、全部が好きだって」


鏡に映る自分の股間には、下着に包まれること無く興奮を示す性器が存在を主張する。
下腹部の前で拳を握りしめたまま、目を閉じて、俯いた。
腰に回された手が、脚の付け根を弄る。
「こんなになって・・・はしたないな」
「・・・ごめん、なさい」
頬を滑る唇が背筋を寒くさせ、脚を震えさせた。

体内に異物を入れたままでの外出は、10分足らずだったのだと思う。
身体のラインが強調されたワンピースを通る風が、無防備な下半身を舐める度に
歩みはぎこちなくなっていった。
それでも、しっかりと繋がれた手に引かれ、見知らぬ夜の住宅街の中を進む。
嗜虐的な行為と、穏やかな微笑が、少しずつ、俺の身体を狂わせていくようだった。

「お仕置きしないと、ね」
耳を掠めた声に、思わず首を振った。
募る不安と期待。
瞬間突き抜けた小さな振動は、腰を砕くほどの刺激となって身体を駆ける。
「・・・っあ」
追いかけるように、もう一つの玩具も動き出す。
「は、あぁ・・・」
背後の彼に身を任せながら、上半身が前傾していく。
「ほら、顔上げて」
彼の腕が、俺の身を抱えるように胸元を弄る。
視線の先に映ったのは、顔を歪めて快楽に耐える、だらしのない顔。
「お尻の中、気持ち良いの?」
強張った唇から出るのは、声にならない呻き声だけ。
「言ってごらん」
優しい声と共に強くされる責めに、酷く壊れた音が口から漏れた。
「い、い・・・っん」
「いやらしい声。可愛いよ、ジュン」

腹の辺りから上がって来る手の気配を感じた胸元に、汗が滲む。
激しい息遣いに揺れる上半身は既に空気に曝されていた。
官能に溺れる下半身に引き摺られるよう、その昂ぶりは一層増していく。
柔らかく愛撫する指は、けれど、求める場所にはやって来ない。
「どうして欲しい?」
全て分かり切っている彼は、意地悪な口調で問う。
「・・・さ、わって」
躊躇いを少しだけ残して、そう答えた。
細やかな感覚が乳首を捉え、荒い吐息が宙に放たれていく。
捩れた肩は、彼の腕でしっかりと包み込まれている。
「触るだけじゃ、物足りないんでしょ?」
屈辱すらも、快感に変わるようだった。
「そこ、も・・・おし、おき・・・し、て」

□ 64_偽名★ □
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コメント

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男性ならでは!

この天谷はなかなかの色事師ですね!しっかり主導権を握って、ジュンを翻弄しています…。
Hの最中でいよいよ挿れるって時に、必ず「どうして欲しい?」って聞く男性がいますね。
夫もそうです。ほぼ毎回聞きます、今だに…。
支配欲を満足させる為なんでしょうか?
そういう人は同時に、ビックリする程甘えてきますから、男性心理はよくわかりません…。
普段は安心しきって、
「他の男ともしてみたら?」
なんて言っていたくせに、他の男性の影を嗅ぎ付けるやいなや、胸を鷲掴みしながら、
「浮気はするなよ」
と、低い声で凄むんですから、呆れます。

男性の右脳は女性より発達しているそうですから、女には理解しにくい性的イメージを楽しんでいるのかもしれませんね。

人が人の上を目指す。

誰かの上に立つ。
男女差があるかどうかは分かりませんが
仕事ではもちろん、日常の些細なことでも
そんな競争意識が心の奥底にあるような気がします。
支配欲と優越感を満たす条件さえ二人の間で合致すれば
セックスという行為は、最適なもかも知れません。

頂いたご意見について。

>2012/05/07 18:50 にコメントを頂いた閲覧者様へ

お返事が遅れて申し訳ございません。
ご連絡頂いた件につきましては、先方にお伝えしておきました。
何卒ご理解ください。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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