籠絡★(3/10)
俺は彼を絶頂へ導く。
けれど、彼が俺の欲求を満たしてくれることは、無い。
口の中で徐々に大きくなるモノを、丁寧に舐めあげる。
頭上からは、隠しきれない喘ぐ吐息が降り注ぐ。
添える手で根元を扱きながら、先端をゆっくり唇で愛撫していくと
独特の妙味を帯びる液体が染み出してきた。
昂る身体を鎮めるのは、自分の手。
彼のモノを口に咥えながら、俺は自らを慰め始める。
ほんの少し触れられただけだと言うのに、身体と心は素直に反応していて
空気に触れる頃には、既に硬さを帯びていた。
撫でるように扱き始めると、口の隙間から息が抜けていく。
蔑む様な彼の視線が、俺の興奮を更に加速させる。
彼の腰の動きと共に揺れるネクタイを見上げる。
微かな喘ぎと、抑制された呻きと、いかがわしい水音。
まるで世間から切り離されてしまったような空間が、俺と彼だけの世界。
***********************************
ネクタイが抜け、ワイシャツの首元が開き、ベルトが外される音がする。
身を捩るのも億劫なくらいの倦怠感が全身を包んでいた。
「・・・すみません」
「構わないよ。ちょっと、水持ってくるね」
酒での失態は、初めてだった。
自他共に認める酒豪のはずだったのにと、くだらない腹立ちすら覚える。
冷蔵庫を開ける音がした後、彼は何処かへ電話をしているようだった。
何を話しているのかは、分からなかった。
部屋に戻って来るタイミングで言った一言で、電話は終わる。
「ああ、今日は掃除、いらないから」
彼の手が肩から背中の方へ差し込まれていく。
「ちょっと、頭起こせる?」
アームレストに頭を引っ掛けるように置き、彼が口に運んでくれた水を飲む。
喉を通る冷たい感触が、だるさを幾分紛らわせてくれる。
「ありがとう、ございます」
「寒い?」
「いえ・・・大丈夫です」
照明の光が、目を閉じていても頭を刺激するような気がして、自分の腕で目を覆う。
深く溜め息をつくと、気分だけは落ち着いてきた。
「加納君のこんな姿見るのは、初めてかも」
ソファにもたれるよう床に腰を下ろしたらしい先輩は、何処か楽しげにそう言った。
「俺も・・・ここまで酔ったのは、初めて、です」
「酒、強いもんね」
「そう、思ってましたけど・・・弱くなったの、かな」
「体調もあるから。今週は忙しかったし、疲れてたんじゃない?」
「ですか、ね」
腹の辺りに彼の腕の重さを感じる。
その腕が、身体を抱えるように腰へ回る。
普通じゃない雰囲気に、僅かに鼓動が早くなった。
「加納君さ」
「・・・はい」
「好きな人、いる?」
「えっ・・・いえ・・・別に」
突然の質問に、意中を明かすことも出来ず、おぼろげな意識の中でおぼつかない答えをする。
何故そんなことを聞いてくるのか、彼の意図が分からなかった。
「オレさ、自意識過剰なのかも知れないんだけど」
腰にある手が脇腹の方へと上がり、辺りを擦り始める。
「自分に好意を持ってる女って、大体分かるんだよね」
「そう・・・ですか」
「初めは勘みたいなもんなんだけど、まぁ、概ね当たってる」
「それは、どういうところで、分かるんですか?」
「これってポイントは、無いんだよ。ホント、勘」
腕をずらし、真っ直ぐに俺を見る彼を認めた。
レンズの向こうの目は相変わらず優しげで、妙な緊張感に包まれる。
「もしかしたら・・・男でも同じことが言えるんじゃないかって、思ってさ」
その言葉に、背筋が凍った。
尊敬する先輩。
それ以上の感情を表に出さないよう、出来るだけの努力をしてきたはずだ。
付き合いで乗り気じゃない顔を見せていたからだろうか。
俺のどんな行動で、彼は感情を悟ったのか。
巡る思考が、インターホンのチャイムで中断された。
□ 30_籠絡★ □
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けれど、彼が俺の欲求を満たしてくれることは、無い。
口の中で徐々に大きくなるモノを、丁寧に舐めあげる。
頭上からは、隠しきれない喘ぐ吐息が降り注ぐ。
添える手で根元を扱きながら、先端をゆっくり唇で愛撫していくと
独特の妙味を帯びる液体が染み出してきた。
昂る身体を鎮めるのは、自分の手。
彼のモノを口に咥えながら、俺は自らを慰め始める。
ほんの少し触れられただけだと言うのに、身体と心は素直に反応していて
空気に触れる頃には、既に硬さを帯びていた。
撫でるように扱き始めると、口の隙間から息が抜けていく。
蔑む様な彼の視線が、俺の興奮を更に加速させる。
彼の腰の動きと共に揺れるネクタイを見上げる。
微かな喘ぎと、抑制された呻きと、いかがわしい水音。
まるで世間から切り離されてしまったような空間が、俺と彼だけの世界。
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ネクタイが抜け、ワイシャツの首元が開き、ベルトが外される音がする。
身を捩るのも億劫なくらいの倦怠感が全身を包んでいた。
「・・・すみません」
「構わないよ。ちょっと、水持ってくるね」
酒での失態は、初めてだった。
自他共に認める酒豪のはずだったのにと、くだらない腹立ちすら覚える。
冷蔵庫を開ける音がした後、彼は何処かへ電話をしているようだった。
何を話しているのかは、分からなかった。
部屋に戻って来るタイミングで言った一言で、電話は終わる。
「ああ、今日は掃除、いらないから」
彼の手が肩から背中の方へ差し込まれていく。
「ちょっと、頭起こせる?」
アームレストに頭を引っ掛けるように置き、彼が口に運んでくれた水を飲む。
喉を通る冷たい感触が、だるさを幾分紛らわせてくれる。
「ありがとう、ございます」
「寒い?」
「いえ・・・大丈夫です」
照明の光が、目を閉じていても頭を刺激するような気がして、自分の腕で目を覆う。
深く溜め息をつくと、気分だけは落ち着いてきた。
「加納君のこんな姿見るのは、初めてかも」
ソファにもたれるよう床に腰を下ろしたらしい先輩は、何処か楽しげにそう言った。
「俺も・・・ここまで酔ったのは、初めて、です」
「酒、強いもんね」
「そう、思ってましたけど・・・弱くなったの、かな」
「体調もあるから。今週は忙しかったし、疲れてたんじゃない?」
「ですか、ね」
腹の辺りに彼の腕の重さを感じる。
その腕が、身体を抱えるように腰へ回る。
普通じゃない雰囲気に、僅かに鼓動が早くなった。
「加納君さ」
「・・・はい」
「好きな人、いる?」
「えっ・・・いえ・・・別に」
突然の質問に、意中を明かすことも出来ず、おぼろげな意識の中でおぼつかない答えをする。
何故そんなことを聞いてくるのか、彼の意図が分からなかった。
「オレさ、自意識過剰なのかも知れないんだけど」
腰にある手が脇腹の方へと上がり、辺りを擦り始める。
「自分に好意を持ってる女って、大体分かるんだよね」
「そう・・・ですか」
「初めは勘みたいなもんなんだけど、まぁ、概ね当たってる」
「それは、どういうところで、分かるんですか?」
「これってポイントは、無いんだよ。ホント、勘」
腕をずらし、真っ直ぐに俺を見る彼を認めた。
レンズの向こうの目は相変わらず優しげで、妙な緊張感に包まれる。
「もしかしたら・・・男でも同じことが言えるんじゃないかって、思ってさ」
その言葉に、背筋が凍った。
尊敬する先輩。
それ以上の感情を表に出さないよう、出来るだけの努力をしてきたはずだ。
付き合いで乗り気じゃない顔を見せていたからだろうか。
俺のどんな行動で、彼は感情を悟ったのか。
巡る思考が、インターホンのチャイムで中断された。
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