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鶴望★(4/7)

実家に帰ると家族は殆ど寝ており、親父だけが一人TVを観ていた。
「待ってたの?」
「そう言う訳じゃない」
そう、と簡単に答えを返し、冷蔵庫からビールを出す。
「飲む?」
「ああ」
こうやって、親父とサシで話すのは、何年振りだろう。
たわいも無い話だけれど、何故だか気分が落ち着いた。
後何回、親父と顔を合わせる機会があるのか。
やっぱり、年に1、2回くらいは帰省するべきかな、そんな風に考える。

次の日の法事は天気にも恵まれ、つつがなく終わった。
礼服は持っていないから、黒いスーツに黒いネクタイで済ませてしまったが
特に何も言われることも無かった。
この歳になれば、法事も増える。
そろそろ礼服ぐらい買っておけ、と久しぶりに会う兄貴にも諭された。
「お前、このまま帰るんだって?」
「休みが明日までだからね。明日は一日ゆっくりしたいんだよ」
「家でゆっくりして行きゃいいのに」
「また、冬に帰って来るさ」
自然と、そんな言葉が出た。


法事があった寺から、仙台駅まではそれほど遠くない。
新幹線の時間まで余裕があったので、歩くことにした。
通りを歩いていると、前方に車が停まっているのが見えた。
仙台ナンバーのBMW。
嫌な感じを抱えつつ歩いていくと、人が降りてくる。
泉だった。
「お久しぶりですね、緒方先輩」

どうしてここに居る?
きっとそんな表情をしていたんだろう。
「さっき、見かけたもんで」
見かける?何処で?
そう微笑む後輩の顔に、得体の知れない気味の悪さを感じた。
「崇史と、友達なんだそうですね」
タカフミ?ああ、武藤のことか。
昨日のことを思い出し、少しバツが悪くなる。

怪訝な顔をするオレに、奴は畳み掛けてくる。
「恵理子のこと、まだ怒ってます?」
大学の時の彼女のことだ。
その名前を聞いて、急にイライラが募った。
「何が言いたいんだ、泉」
「積もる話でも、したいなぁと思って」
「悪いけど、新幹線の時間があるから」
例え時間があっても、こいつと話をする気にはなれなかった。
オレが通り過ぎようとした時、いきなり腕を掴まれる。
振り返った瞬間、腹に蹴りを喰らった。
その衝撃は、オレが気を失うのには十分だった。


「新幹線の時間は、良いんですか?緒方先輩」
そう言う声と、顔にかけられた水の冷たさで、目を覚ます。
ベッドに寝かされた状態で、腰の辺りに泉が馬乗りになっている。
手は黒いネクタイでベッドのヘッドボードに縛られていた。
眼鏡は外されてしまったようで、視界がぼんやりとしていた。
部屋を見回すと、寂れたラブホテルのようで、悪趣味なことに天井は鏡張りになっている。

「何の・・・つもりだ」
「あんたは、俺の欲しいもの、全部持って行っちゃうんですよね」
「知らねぇよ、そんなこと」
冷ややかな目でオレを見下ろしながら、泉は続ける。
「恵理子とは、結局すぐ別れたんですよ。あんたに申し訳ないって」
それを聞いて、少し清々した気分になる。
「俺とのセックスで、あんなに良いって言ってたのにね」
さっきの気分が吹き飛ぶ。
「そんなこと、オレに言ってどうする」
「崇史もそうだ」
泉の顔が近づいてくる。
「前から、心に引っかかってる奴が居るって言うのは聞いてたけど」
探られている口調に、気分が悪くなる。
「昨日、帰ってきた後、様子がおかしくてね」
「送って貰っただけだ」
「あんなに長い時間?」
「久しぶりに会ったんだ、いろいろ話もあるだろう」
「・・・男の勘も、案外バカにしたもんじゃないんですよ」
その冷たい表情に、心底恐怖を感じた。

ワイシャツのボタンが、上から外される。
「おい」
「緒方先輩、男とやったこと無いでしょう?」
「当たり前だろ」
「じゃ、どんなもんか味合わせてあげますよ」
血の気が引く思いだった。
冷や汗が吹き出る。
「そんなことして、何に、なる」
「動揺してるんですね・・・当然か」
泉は、オレの態度を見て楽しんでいる。
身体を捻って抵抗した時、ご丁寧に足首まで縛られていることに気が付いた。
このまま、コイツに犯されるのか?
震えが止まらなかった。

泉は、ベッドサイドに置いてあった眼鏡を、オレにかける。
「天井に映る自分の姿を、存分に見て下さいね」
最悪な趣味だ。
程なく上半身が露にされる。
決して滑らかとはいえない手の感触が、胸から腹、わき腹と、広い範囲を回っていく。
不快感が脳に伝わり、鳥肌が立つ。
やがて、泉は俺の脚の方へ移動し、ズボンのベルトを外す。
ある程度自由になった上半身を動かすが、ネクタイが手首に食い込むだけで、さほど効果は無かった。
「案外、大きいんですね」
オレのモノは、泉の手によって、空気に触れた。

□ 10_鶴望★ □   
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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