羨慕★(5/8)
『何処に住んでんの?今度、オレと遊ばない?』
『もっと気持ち良いことしてみない?興味あったら、ここにメールして』
『素人スーツもの、超萌えるw』
SNSの管理画面に垂れ流されるコメントの数々。
視聴回数は、二晩で4桁を超えそうな勢い。
閲覧者の絶対数も少ないだろうし、顔も出していなければ、スタイルが特別良い訳でもない。
想像以上の反応に、その理由も分からないまま、読みきれないメッセージを眺めていく。
コメントには、投稿者のIPアドレスが表示されている。
大半は、他の動画のコメントでも良く見る、業者や宣伝。
そのゴミの中に埋もれるよう、同一アドレスの人間が書き込んだと思われる文言が複数あった。
『ぎこちない感じが、逆にいやらしいね』
『乳首、敏感そうだね。じっくり弄ってあげたいな』
『声がMっぽくて、すごいそそられる。もっと聞かせてよ』
ネット上であられもない姿が晒されている事実が、その好奇の言葉で突きつけられる。
見知らぬ誰かに性的視線を向けられることで興奮を覚える自分。
その姿で自らの欲求を発散している男たち。
歪んだ関係性に心まで満たされるような、そんな錯覚に陥っていた。
肌寒い日曜日の朝。
人通りの少ない道を歩き、彼のマンションへ赴く。
玄関で出迎えてくれた彼は、普段とは全く違う趣で、そこに立っていた。
「・・・どうしたの?」
いつもなら、仕事を終え、シャワーを浴びた素の彼がいるはずだった。
「ごめんね、さっき帰ってきたところなの」
アップにした長い髪の中に、大きなイヤリングが揺れている。
ゆったりとした、けれども大きく肩を露わにした服の下は、タイトなミニスカート。
初めて見る彼の格好に、違和感を持たずにはいられなかった。
「見とれちゃった?たまには、良いでしょ」
彼の腕が首に絡みつき、俺の身体を引き寄せる。
しな垂れかかるように抱きつかれたまま、唇を重ねた。
腰に軽く回した俺の手を、彼の手がその太腿へ促していく。
網タイツのざらついた感触が、嫉妬心を煽る。
「この格好で・・・お店に出たの?」
「ダメ?」
「ダメじゃ、無いけど」
男からの好奇な視線。
自分の身体はあんなに昂るのに、大切な人がそんなものに晒されるのは、耐えられない。
「妬いてるの?」
「別に・・・」
脚を撫で、服の中に差し入れようとする手が制される。
「シャワー浴びてから、ね」
リビングに漂う、煙草の残り香。
使ってからそれほど時間が経っていないと思われるバスルーム。
身勝手な妄想が、心を急きたてた。
誰かが、この部屋にいたんだろうか。
俺しか知らない彼を、そいつは見たのか。
彼を信じようとすればするほど、醜い感情が噴き出してくる。
シャワーの湯を幾ら浴びても、洗い流せない。
「バスタオル、ここに置いておくわね」
いつもと変わらない、彼の声。
「・・・ありがとう」
それすらも、見せかけのものに感じてしまう。
程よい大きさのリビングテーブルに並べられた花やプレゼントの包み。
週末、彼が店で貰う贈り物の数々だ。
掻き分けるように作られたスペースに、コーヒーが置かれる。
カップに口をつける俺の側に立った彼は、おもむろにスマートフォンを弄り出した。
「・・・誰?」
「ん?別に」
「さっきまで、誰か、いたの?」
「どうして?」
画面に向いていた視線が、ふと俺に移る。
言い知れない雰囲気を口に出すよりも早く、彼は口を開いた。
「ちょっと、面白いもの、教えて貰ったの」
小さな画面に映し出された映像を見て、心まで凍りつく思いだった。
「これ、匠くん、よね?」
どうして、そんな言葉だけが頭の中を巡る。
震える口から、声は出なかった。
背後から近づいて来た唇が、耳を擦りながら囁く。
「こんな姿、他の男に見せちゃダメって、言ったのに」
こめかみに軽くキスをした彼の口調は、酷く落ち着いていた。
「・・・いけない子」
□ 48_羨慕★ □
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『もっと気持ち良いことしてみない?興味あったら、ここにメールして』
『素人スーツもの、超萌えるw』
SNSの管理画面に垂れ流されるコメントの数々。
視聴回数は、二晩で4桁を超えそうな勢い。
閲覧者の絶対数も少ないだろうし、顔も出していなければ、スタイルが特別良い訳でもない。
想像以上の反応に、その理由も分からないまま、読みきれないメッセージを眺めていく。
コメントには、投稿者のIPアドレスが表示されている。
大半は、他の動画のコメントでも良く見る、業者や宣伝。
そのゴミの中に埋もれるよう、同一アドレスの人間が書き込んだと思われる文言が複数あった。
『ぎこちない感じが、逆にいやらしいね』
『乳首、敏感そうだね。じっくり弄ってあげたいな』
『声がMっぽくて、すごいそそられる。もっと聞かせてよ』
ネット上であられもない姿が晒されている事実が、その好奇の言葉で突きつけられる。
見知らぬ誰かに性的視線を向けられることで興奮を覚える自分。
その姿で自らの欲求を発散している男たち。
歪んだ関係性に心まで満たされるような、そんな錯覚に陥っていた。
肌寒い日曜日の朝。
人通りの少ない道を歩き、彼のマンションへ赴く。
玄関で出迎えてくれた彼は、普段とは全く違う趣で、そこに立っていた。
「・・・どうしたの?」
いつもなら、仕事を終え、シャワーを浴びた素の彼がいるはずだった。
「ごめんね、さっき帰ってきたところなの」
アップにした長い髪の中に、大きなイヤリングが揺れている。
ゆったりとした、けれども大きく肩を露わにした服の下は、タイトなミニスカート。
初めて見る彼の格好に、違和感を持たずにはいられなかった。
「見とれちゃった?たまには、良いでしょ」
彼の腕が首に絡みつき、俺の身体を引き寄せる。
しな垂れかかるように抱きつかれたまま、唇を重ねた。
腰に軽く回した俺の手を、彼の手がその太腿へ促していく。
網タイツのざらついた感触が、嫉妬心を煽る。
「この格好で・・・お店に出たの?」
「ダメ?」
「ダメじゃ、無いけど」
男からの好奇な視線。
自分の身体はあんなに昂るのに、大切な人がそんなものに晒されるのは、耐えられない。
「妬いてるの?」
「別に・・・」
脚を撫で、服の中に差し入れようとする手が制される。
「シャワー浴びてから、ね」
リビングに漂う、煙草の残り香。
使ってからそれほど時間が経っていないと思われるバスルーム。
身勝手な妄想が、心を急きたてた。
誰かが、この部屋にいたんだろうか。
俺しか知らない彼を、そいつは見たのか。
彼を信じようとすればするほど、醜い感情が噴き出してくる。
シャワーの湯を幾ら浴びても、洗い流せない。
「バスタオル、ここに置いておくわね」
いつもと変わらない、彼の声。
「・・・ありがとう」
それすらも、見せかけのものに感じてしまう。
程よい大きさのリビングテーブルに並べられた花やプレゼントの包み。
週末、彼が店で貰う贈り物の数々だ。
掻き分けるように作られたスペースに、コーヒーが置かれる。
カップに口をつける俺の側に立った彼は、おもむろにスマートフォンを弄り出した。
「・・・誰?」
「ん?別に」
「さっきまで、誰か、いたの?」
「どうして?」
画面に向いていた視線が、ふと俺に移る。
言い知れない雰囲気を口に出すよりも早く、彼は口を開いた。
「ちょっと、面白いもの、教えて貰ったの」
小さな画面に映し出された映像を見て、心まで凍りつく思いだった。
「これ、匠くん、よね?」
どうして、そんな言葉だけが頭の中を巡る。
震える口から、声は出なかった。
背後から近づいて来た唇が、耳を擦りながら囁く。
「こんな姿、他の男に見せちゃダメって、言ったのに」
こめかみに軽くキスをした彼の口調は、酷く落ち着いていた。
「・・・いけない子」
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