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羨慕★(4/8)

羨ましい。
夜、一人悶々と画面を前にする程に沸き上がる歪な欲望。
声も無く、黙々と自らのモノを扱く姿。
大げさに声を上げながら、様々な玩具を使った自慰を見せ付ける姿。
そんな動画に付けられる、同じような性癖を持つ男たちからの露骨なコメント。
誰かと繋がりたかったのかも知れない。
見ているだけでは飽き足らなくなるまで、驚くほど、時間はかからなかった。

ネットに動画を流すなんてリスクは、嫌と言うほど知ってるはずなのに、好奇心が恐怖を薄めていく。
シャワーを浴び、脱いだスーツに再び着替えた。
一部のユーザーから需要があるらしい、スーツ姿での自慰行為。
折角リスクを被るなら、求められている方が良いだろう。
その計算が功を奏すのか想像もつかないけれど、堅苦しい着衣での行為が身体を昂らせるのは確かだった。

顔が映りこまないように、ディスプレイにセットしたWebカメラの位置を調整する。
画面に映る自分の姿に、背徳感が募る。
例え録画しても、ネットにアップロードしなければ、誰にも見られない。
この好奇心が恐怖に打ち負かされたのなら、そのままファイルを消去すれば良いだけだ。
思案を巡らせながら、震える指で、録画ボタンをクリックした。


ネクタイを緩め、ワイシャツの上から胸元を弄っていく。
逆の手を、足の付け根から股間へ滑らせる。
緊張からなのか、体の興奮とは裏腹に、モノへの刺激が脳に響かない。
萎れたままのモノをスラックスの上から撫でながら、シャツのボタンを外し、手を差し入れた。
普段なら有り得ない、素肌に直接感じるワイシャツの生地の感覚が僅かな刺激を呼ぶ。
敏感ね、そう囁く彼の声を思い出しながら、自らの乳首を指で擦る。
その小さな快感が、緊張に堰き止められていた衝動を溢れさせた。
「ん・・・」
堪え切れなかった声が、カメラのマイクに吸い込まれていく。

一度走り出した欲求を止めることが出来るのは、絶頂だけなんだろう。
徐々に頭をもたげ始めたモノを、服の中から解放する。
ゆっくり扱き出すと、いつもとは質の違う刺激が下半身に纏わり付いて来た。
ネクタイを解き、ワイシャツをはだけさせる。
刺激を待ち侘びる突起を強めに摘むと、身体の中で強烈な快楽が入り混じった。

ぼやける視界に飛び込んでくる、自らの痴態。
強制的に見せ付けられたその姿に、急に気持ちが冷静になる。
何やってるんだ、俺。
冷めた気分で弛む手の動き。
けれど、激化した身体はその心境の変化を赦さなかった。
途端に脳の中を支配する焦燥感。
登りかけた梯子を外すことに、耐えられない。
せめぎ合う二つの感情は、悦楽に手を引かれ、やがて片方に取り込まれていった。

ベルトのバックルが擦れる金属音と、口から絶え間なく漏れる吐息。
頂点だけを追い求める意識が、徐々に白く霞んでいく。
染み出た汁が全体を濡らし、得も言われぬ感覚が背筋を強張らせる。
自らの指に唾液を纏わせ、乳首を焦らすように撫でまわす。
こんな姿を、誰かに見られる。
画面の向こうから伸びる、見知らぬ男たちからの食指。
頭の片隅を巡る度、恥辱が刺激をより一層強くした。
目を閉じて、右手に神経を集中させる。
「・・・っう」
息苦しさから解放されても尚、波打つ鼓動。
乱れた服装のまま、手の甲を落ちていく精液の感触に酔いしれる。
薄い視界の向こうには、情けない姿のまま呆ける男の姿があった。


動画を編集し、ネットにアップするまでの自分は、信じられないほど冷静だった。
と言うよりも、画面上に表示されたサムネイルを見た時の動揺具合が、そう思わせたのかも知れない。
公開期間は、どんなファイルでも2日半と決められている。
それまでに、何人の人間が、これを観るのか。
居ても立ってもいられず、すぐにブラウザを閉じた。

不意に携帯に着信が入る。
乱れた服装のまま手に取ると、相手は彼だった。
「お客さんがちょっと途切れたから、休憩がてら、声を聞きたくて」
優しい声に、罪悪感が沸き上がる。
ごめん、思わず出そうになる言葉を、慌てて飲み込んだ。
「・・・俺も、声、聞きたかった」
「良かった」
「早く、会いたい」
「もう少しだから、我慢して。いっぱい、可愛がってあげるから」
官能的な言葉の響きに、発散されたはずの疼きが、身体の奥底で目を覚ます。
「うん・・・待ってる」

□ 48_羨慕★ □
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コメント

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孤独の深さ

まべちがわさんがユーモアのわかる方で良かったです。
週末婚って、色々難しいですね。
父が長年東京住まいで、どっちが本宅かわからなかったです。夏休みに東京で塾の講習を受けました。
叔母(母の妹)が母に「東京妻が居ても、却って有り難いじゃないの!」と話していたのを立ち聞きした事があります。
大人には色んな事情があるとわかっていたので、自分でその話は一切してません。
東京という大都会での孤独は、地方での孤独より一層深い気がします。

自分のテリトリー。

家族の元から離れて暮らすことが如何に寂しいことなのか
上京してから、しみじみ感じることがあります。
生まれ育った自分の故郷、テリトリーを離れて生きて行く。
特に、歳を取ってから新たな土地での生活を始めることは
孤独ではない状況を避ける方が難しいのではないかと思います。
私にも、同じような経験がありますが
今となっては、父の気持ちも分かるような気がします。
切ないことには、変わりありませんが。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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