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覚醒★(6/6)

耳の後ろを滑る舌が肩の力を抜いていく。
段々息が荒くなるのを、自分でも感じていた。
まだ湿っている太腿を彼の手が静かに撫でる。
毛が絡むザラザラとした感覚と、その行先への意識が、脚を強張らせる。

鎖骨を擦っていたもう一方の手が、胸の方へ下りて行く。
乳首への柔らかい刺激が、吐息に薄い声を混ぜ込ませた。
その反応に、彼の指の動きは少しずつ大胆になる。
軽く摘まれ、引っ張られると、僅かな痛みと快感が身体の中を駆ける。
「こんな、浅井さん・・・見られるなんて」
後輩の言葉に、羞恥心が煽られた。
「俺、だって・・・こんな」
興奮で自制が効かなくなっているのか、彼の指に力が入る。
「い・・・って」
「あ・・・」
「も、少し・・・」
自制が効かなくなってるのは、多分、俺も一緒だったんだろう。
「優しく・・・してくれ」


彼の手が添えられたモノは、多分、ある程度の反応を見せていたのだろうと思う。
触れられた瞬間にびくついた身体を、彼はそっと抱きしめてくれた。
静かに扱かれる毎に走る、快感。
男としての官能を、確かに、まだ持っている。
それが、同性の、後輩の手によるものであっても、俺は感じている。

先端から液体が滲む頃、後輩の身体がふと離れて行く。
その身体を腕で制し、頭を抱え込んだ。
「・・・いい」
俺がした行為を、自分も、と思っていたのだろう。
拒絶されたと思ったのか、彼は微かな戸惑いを目に映した。
取り直すように、滲む視界の中の彼に言う。
「顔、見せてろ・・・お前に、されてるって、思い知りたい」
躊躇いなく言葉を吐く俺の表情は、彼にどう見えたのか。
半開きになった口の中に、彼の舌が入り込んで来る。
呼ばれるように出した舌を、互いの興奮と共に絡ませた。

快楽で霞む眼中に浮かぶ、黒髪の男。
夢の中とは違う姿でも、これは、間違いなく夢の続き。
極限から手を離そうとする身体。
早くなる彼の動きに、その手が引き剥がされる。
「・・・っう」
圧倒的な解放感と共に、腹の上に広がる精液の感触。
瞬間白くなった頭の中にあったのは、視界が開けた安堵の気持ちだった。


軽くシャワーを浴びて部屋に戻ると、豊嶋は相変わらず立ったままで煙草を咥えていた。
「座って吸ったら良いだろ?」
彼のすぐ傍には、机に備え付けられた椅子が置かれている。
「何か・・・落ち着かなくて」
吐き出された煙が、室内に消えて行く。
その行く末を追いかけるように、彼の視線が宙に浮いた。
「ああ、やっぱり、オレ、浅井さんが・・・好きなんだって」
乱れたベッドに腰を掛けた俺に、改めて自分の気持ちを吐露する後輩。
未だ気持ちの所在が掴み切れないのは、俺のせいだ。

彼に向かって伸ばした手を、その手が軽く握る。
指を絡ませ、自分の方へ引っ張った。
見上げながら小さく顎を突き出すと、彼の顔が近づいて来て唇が触れる。
「ずっと、そのままで・・・いろよ」
息を飲み込む拍子に、彼の喉仏が揺れた。
「お前の気持ちは、間違ってない、から」


けたたましく鳴る携帯電話のアラームで目が覚める。
背中に感じる、人の気配。
「豊嶋、起きろ。時間だぞ」
眠たげな目を向けながら、後輩は上半身を起こし、首を回す。
その行為で我に返ったのか、ハッとした表情でベッドから降りた。
「そっか、オレ、荷物、全部あっちだ」
「そりゃ、そうだろうな」

慌ただしく服を着る彼の様子を見ながら、出発時間を確認する。
「じゃ、8時にロビーで良いか?」
「分かりました」
スラックスにワイシャツを羽織っただけの彼は、革靴を履くタイミングで振り返る。
顔に浮かぶ表情で、何を求めているのかは一目瞭然だった。
軽く溜め息をつき、唇を重ね合わせる。
「お前、仕事中、そんな顔するなよ?」
満足げに目を細めた彼は、おどけた口調で言葉を返す。
「努力します」


久しぶりに、悪夢を見ないままで迎えられた朝。
真夏の太陽が、背中を焦がすようだった。
ノーネクタイのワイシャツ姿で上着を腕にかける後輩を日差しの中に見ながら
夢から覚めたことを実感する。
「浅井さん」
「ん?」
「忠宏さんって、呼んで・・・良いですか?」
不意に呼ばれた名前に、思わず顔が引きつった。
「ダメ」
「何でですか?」
「社内で口走ったりしたら、どうするんだよ?」
あからさまに不満げな顔をする後輩が、妙に愛おしく見えた。
「夢の中だけに、しておいてくれ」

□ 58_覚醒★ □
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コメント

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重なるパルス

キスもした事が無い男が、デリケートな聖域とも言える瞼に唇を這わすんですから、愛の力は強い!行為から始まる愛もあると思います。

毎日ヤりまくっていた新婚さんが、週2回のペースに落ち着く…。っていう事ですね。(更新の例えが変で、すみません。)分かりました。

ところで、ウチの息子も、今日、帰省する予定です。例年、2日に高校の部活OBの新年会が神戸か大阪のどちらかであるので、たいていその翌日に午前様で帰宅した後、あちらに戻っています。日数は短くても、元気な姿を見るだけで、親としては嬉しいものです。
あなたも故郷で懐かしいお料理を!
本年はありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

いつまでも新婚気分を。

今年最後の更新、コメント返信となります。
色々なことがあった年ではありましたが
故郷の空気と懐かしい顔に触れ、穏やかに暮を迎えられたことに感謝です。

blog開設から1年3ヶ月、既に新婚と呼ぶには時期が経ったものの
気持ちだけは、新婚初夜のことを忘れないように行きたいと思っています。

来年も、どうぞご愛顧のほど、宜しくお願い致します。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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