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覚醒★(5/6)

かつて自分がされた経験と、願望と、想像を混ぜ合わせた行為。
舌に感じられる剥き出しの感触。
柔らかく、けれど程よく硬い先端に舌を滑らせる。
バスタブの縁を掴む彼の手の甲に幾筋もの血管が浮き出たのを見て、その身体の反応を知る。
唇で挟み込み、吸い付きながら舌を揺らすと、乱れた息が浴室に溶けた。
モノを咥え込もうとする俺の首筋に、彼の手が触れる。
上げた視線の先には、怯えるような後輩の眼差し。
添えられた手を取り、指を絡めたままで、口に含んだ。

裏筋を舌で刺激しながら、頭を動かして行く。
慣れない苦しさを、頭上から聞こえて来る声にならない声が和らげてくれるようだった。
前のめりになる様に上半身を起こし、より深く飲み込む。
握り締める手の力が、痛いほどに強くなる。
やっと掴んだ、彼の悦び。
喉の底から押し出されてくる自分の呻き声が、身体中に響く。
心の中の霧が、晴れてくるような気がした。

「・・・も、う」
一定のリズムが身体に刻まれる頃、快感に溶けた声が聞こえた。
立ち上がり、彼の身体に身を預けるように抱き締める。
手を添えたモノは、限界寸前の様相を呈していた。
「イきそう、か?」
耳元に唇を這わせながら囁くと、彼の下顎が小さく痙攣する。
手の動きを早めると共に、その身体は前に傾き、激しい息が口から吐き出される。
「うっ・・・あ」
耐え切れない声を上げながら迎えた彼の絶頂が、俺の手にその感触を残した。


温めに設定したシャワーの湯が、身体の熱を奪っていく。
後ろから腰に回された手に導かれるよう振り向き、唇を重ね合わせる。
「浅井さん」
「・・・ん?」
水に押されるよう降りて行く彼の掌の熱が、少し鼓動を早くした。
「オレ、も」
真っ直ぐに向けられる目に、何故か気分が揺らぐ。
モノに触れんとする手を、思わず制してしまった。
「じゃあ・・・あっちで、頼む」

彼の身体を快楽に導くことには、大して抵抗も無かった。
それなのに、同じような行為をされることに不安が残る。
あの手が俺の身体を弄り、俺のモノを扱く。
その行為の顛末を、イメージ出来なかった。
何も感じられなかったら、不快感が勝ったら。
夢のようにふわつくこの時間を、最悪な現実で終わらせるのが怖い。


先にユニットバスを出た豊嶋は、下着姿で立ったまま煙草を咥えていた。
俺の姿を認めると、煙草を灰皿に押し付け、俺の手を引く。
手を握るその手に急に力が籠り、身体がベッドの上に倒れ込む。
身体の上に跨った彼の顔が近づいて来て、無意識の内に息が震えた。
「・・・良いんですか」
消え入りそうな声が、耳元に落ちる。
「お前は、どう、したい?」
「浅井さんに、触って・・・オレの手で、感じて、貰いたい」

彼の手に顔を包まれながら、彼の唇を受け入れる。
感触を確かめるように軽く触れ合わせた後、舌が唇の上を滑って行く。
薄く開いた隙間から入り込んだ舌に、自分の舌を伸ばす。
ぬるついた触感と煙草の残り香が口の中を刺激して、身体を強張らせた。
しばらくの交わりの後、唾液の筋を引き摺りながら、彼の顔が離れる。
「あと、一つ・・・」
「何だ?」
一瞬余所を向いた眼が、再び、俺の眼を捉えた。
「もう一度・・・名前、呼んで、下さい・・・」

目の前の男が求めているのは、恋人と言う存在。
俺はそれに見合うことが出来るのか。
彼の上半身に腕を回して身体を引き寄せ、肌の感触を確かめる。
「敦志・・・お前の、好きなように、して良いから」
若い彼に身を任せることで疑問が氷解してくれることに、賭けてみた。
「今度は、俺が、流されてやる」


壁を向いて横になった俺の身体が、後輩の身体に後ろから抱き締められる。
頭の下を回る手が首筋に触れ、喉仏の辺りを擦る。
振り向いた先にある顔に、何度も口づけを求め、気分を高揚させていく。
彼の身体に寄りかかるよう傾いた上半身がより露わになり、そこに彼の片方の手が滑る。
下腹部の感触を楽しむ様な手の動きに、つい、声が出た。
「・・・くすぐったい」
「柔らかいっすね」
何処か愉快そうで意地悪い口調の声に、反射的に腹を引っ込める。
目の前の顔に、微かな笑みが浮かんだ。
「そのままで、良いですよ」
瞼の上に唇を這わせながら、彼は囁く。
「オレには、幸せな、感触です」

□ 58_覚醒★ □
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踏み出す季節。

小さい設計事務所には新入社員と言う存在も無く
年度が替わっても、正直新たな気分にはなりません。
ただ、確実に暖かさを増す空気の匂いと
新入社員や新入生の初々しくも希望に満ちた姿を見ると
一歩を踏み出す季節なんだなと、思います。

一つ、お詫びをさせて下さい。
こちらのコメントは、管理者であっても属性(公開・非公開)を変えることが出来ません。
承認待ち状態を非表示に致しましたので、ご了承下さい。

ご要望のシチュエーションは、何処かで使わせて頂きたいと思います。
敢えて予告は致しませんので、見かけたらニヤリとしてやって下されば幸いです。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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