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矜持★(7/8)

遠くで物音が聞こえたのは、気のせいでは無かった。
近づいてくる足音はやがて建物の中に入ってくる。
淫らな妄想で意識がはっきりしない視界に、若い男の卑しい笑みが映った。

何某かの足音は、ブースのすぐ傍で止まる。
男は扉を一瞥した後、俺のネクタイを静かに外し、ワイシャツのボタンを外し始めた。
衣擦れの音すら恐怖に感じる中で、ひたすら息を潜める。

程なく、放尿する音と共に見知らぬ男の安堵の溜め息が聞こえてくる。
中途半端に肌蹴られた衣服は、けれど彼の目的には十分だった。
首筋から辿られる指の気配に頭を小さく振っても、何の効果もあるはずは無かった。

ファスナーを上げる音に続いた洗浄の音に紛らわせ、息を吐いた。
乳首を撫でる指は、俺の緊張をあざ笑うかのように軽やかに動く。
遠ざかる足音に心が緩んだ瞬間、目の前の男がドアの扉を拳で突いた。


顔の見えない男は、思慮が深すぎた。
立ち止まった足音が、再びこちらへ近づいてくる。
彼は俺の顔を見たまま、指の動きを止めない。
「・・・大丈夫?」
目の前の顎が、軽く上向く。
何か答えてやれ、そういう意図だったのだろう。
「・・・ああ、へい」
瞬間、両乳首が摘み上げられる。
「・・・っき、だ」
「ホントに?ヤバかったら救急車呼ぶ?」
捻じるように弄ばれ、喉が震えた。
「い、や・・・だいじょう、ぶ」
「・・・そう」
当然のように訝しげな声が興奮を助長し、きつく引っ張られる刺激に抗いがたい快感が湧き上がる。

鞄を探るような音がした後、頭上から何かが降ってきた。
「お大事に」
床に落ちたのは、広告が付いたポケットティッシュ。
それを見た男は小さく笑みを浮かべ、ようやく指を放す。
「どーも」
足音が聞こえなくなる頃、彼は愉しげにそう叫んだ。


裸にされた下半身に、凍える空気が纏わりつく。
それでも一所に集中した興奮は冷めないままだった。
「何もしてねーのに、マジでビンビンになってんじゃん」
男はそれを軽く指で弾いた後、自らの性器をこちらに突き付けてくる。
「ほら、ガッツリ掘ってやるから、丁寧にしゃぶれよ」

二人の息遣いと水音だけが耳に届く。
奥底の疼きを取り払ってくれるのは、これしか無い。
快楽を求める身体に押されるよう、男の性器をじっくりと舐る。
見上げると、時折顔を歪ませ息を吐く様子が窺うことができ、その姿に、あの夜感じた狂気は無かった。

自身のモノが僅かに跳ね始める頃、男は俺の手枷を解く。
便器を跨ぐように立たされ、タイル張りの壁に手をついた。
背後から尻にあてがわれた性器の感触が背中を引きつらせる。
割れ目を数回行き来させ、一息ついた彼は、穴の中に侵入してきた。

激しい痛みと息苦しさは、初めての時と何も変わらない。
性欲さえも吹き飛んでしまいそうな刺激は、全身を強張らせた。
しかし、男は行為を止めることなく、むしろ激しさを増していく。
「う、っぐ・・・あっ」
歯を食いしばっても漏れていく呻きが、腰を打ち付ける音と共に空に消えていく。

股間に伸びてきた手が、おもむろに性器を掴む。
「よっぽど、ケツが好きなんだな」
萎えることなく留まりつづけていることが、何よりの証明だった。
男に犯され、感じている身体。
刻みつけられた禁忌が恨めしい。
「オレより先に、イくんじゃねぇぞ」

男の動きに変化が出たことで、終焉が近いことを悟る。
ひたすらに腰を突き出し、彼のモノを受け入れた。
脚の付け根を掴む手に力が入り、荒い息遣いが聞こえてくる。
「・・・うっ」
小さく声を上げた男は、一層深く性器を挿し込み、精液を注いでいく。
得も言われぬ感触は身体をビクつかせ、性感を刺激する。
彼を体内に残したまま自らの性器を扱き、絶頂を追いかけた。


背後の気配が少し距離を置いたと感じ、振り向こうとした瞬間、不意に肩を掴まれた。
そのまま壁に押し付けられた身体に、男の上半身が迫る。
衝動を発散した余韻を残す表情を浮かべ、一回瞬いた。
「く、っそ」
小さく吐き捨てた言葉と共に顔が迫り、程なく、唇が重なった。

柔らかい感触を味わう様にしばらく触れ合わせた後
男の舌は俺の唇を舐め、その割れ目から中へと入り込んでくる。
吐息が漏れ、無意識に舌を差し出す。
貪り合うような口づけは、いつ以来だろう。
唾液と共に絡みつく感触が、歪んだ官能をくすぐった。

□ 98_矜持★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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