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矜持★(6/8)

2週間ほど経った日の昼休憩の際、久しぶりに部下を連れて昼食に出た。
駅から続くデッキには前日に降った雪が残っており
それなりに人通りの多い場所では、足元の悪い場所を避けようとちょっとした渋滞も起きている。
ふと視線を揺らしたタイミングで、向こうから歩いてくる一人の男の姿が目に入ってきた。
顔を上げたコート姿の彼は、俺を認識したのか、軽く目を細める。
行き過ぎるまでの数秒間、待ち侘びていた眼差しを受け止め続けた。

その夜、エレベーターホールに着くと、丁度エレベーターが上がってくるところだった。
確信があった訳では無かったが、追い立てられるように非常階段を駆けた。
だだっ広いホールは相変わらず薄暗い灯りで照らされ、人影がぼんやりと浮かんでいる。
やがて到着したエレベーターの光が姿を浮かび上がらせ、やっと彼が口を開く。
俺を見る彼の表情は、特に感情を表してはいなかった
「・・・何か?」
答を窮している間に、エレベーターは再び閉まる。
「・・・何だよ。殴りにでも来たのか?」
口に出せるはずも無い願望を、悟ってくれはしないか。
否、悟ったところで、彼からそれに応えることはしないだろう。

ふと、閉ざされた扉に視線を送った。
その気配を察したであろう男が、僅かに表情を変える。
目の奥に、彼の本性が垣間見えた気がした。
未だ言葉の出ない俺を小さく鼻で笑い、顎を軽く上げる。
「残念だな。今日はもう店仕舞いなんだよ」
背格好の殆ど変らない、20歳ほども年下の男に見下される屈辱。
それでも尚、縋ろうとしている自らの衝動に恐怖すら感じた。
「何なら、そういうとこ、紹介してやるけど?」
からかい口調の言葉に、つい首を振る。
「・・・違う」
「何なんだよ。面倒くせぇな」
「・・・君じゃなきゃ、ダメなんだ」


会社から歩いて5分ほどのところにある公園に、人の気配は殆ど無かった。
先に行っているよう指示された公衆便所の前にあるベンチに、一人腰を掛ける。
吹きつける乾いた風は顔を凍えさせ
けれど、これから起きるであろう出来事を妄想して逸る身体は、徐々に熱を帯びてくる。

程なくやってきた男の姿は、昼間にすれ違った時と変わらない物だった。
右手から下げているのも、小ぶりなビジネスバッグが一つだけで
俺の身体を散々貶めた、いかがわしい品々が入っているとは思えない。
彼は2、3秒ほどこちらへ視線を向けると、便所へと消えていく。
寒風に晒されて僅かに呼び起された理性を振り払うように一息吐き、腰を上げた。

最近改修されたであろう便所の中には、独特の臭気が満ちている。
左手にはカウンター式の洗面器が2つ、その奥に小便器が4つ並び、右手にある大便器のブースは2つ。
男は奥のブースの前に立ち、先に入るよう促す。
割合広めに取られたスペースには洋風大便器と荷物棚が設置されていた。
「コート脱いで、そこ座って」
扉の鍵を後ろ手で閉めながら、彼は命令を投げる。
言われるがままコートを脱いで渡すと、そのまま乱雑に折りたたみ、棚の上に投げ置いた。

便座の冷たさが服を通して伝わってくる。
真正面に立つ彼は、意味ありげな笑みを浮かべて俺を見ていた。
やがて自らのコートのボタンを開け、地味な色のネクタイを外し始める。
「あんたが悦びそうなもん、今日は何も持ってねーんだよなぁ」
体温を微かに帯びた紐が、腰の後ろで組んだ俺の両手を拘束していく。
「だから、勝手におっ勃てな」
「・・・え?」
耳元に口を据えたまま、男の手は無防備な俺の股間へ伸びる。
「あんたみたいな変態なら」
的を微妙に外した指の感触に、鼓動が早くなった。
「オレにされたいこと想像しただけで、勃つだろ?」


彼の手が首元に伸びてきて、ネクタイを少し緩める。
ワイシャツのボタンが外され、やがて上半身が露わになった。
乾いた指先が冷たい感触を引き摺りながら胸を弄り、乳首を軽く突く。
首筋に寒気が走るような優しい快感は、すぐに刺すような痛みに替わり
双方の突起への責めが深い息を吐き出させた。

スラックスのファスナーがゆっくりと下げられ、その隙間に他人の手が入り込む。
「何だ、もう半勃ちじゃん。どんだけ欲求不満なんだよ」
引き摺り出された性器は、確かに頭をもたげ始めていた。
静かに根元から撫で上げられると共に、吐息が荒くなる。
柔らかい刺激は焦燥感を募らせ、ますます身体を急き立てていく。

やおら自らの鞄を探り出した男は、一笑して何かを取り出した。
「良かったなぁ。大好物があったぞ」
黒光りする玩具のコードを指に引っ掛け、俺の目の前で揺らす。
「・・・で?何処弄って欲しい訳?」
高圧的な視線が心身を辱め、一瞬言葉を失う。
けれど、そこは、小さく痙攣を繰り返しながら期待を募らせていた。
「ケツの穴まで晒しておいて、今更恥ずかしがんなよ」
あらぬところから涎が滲んでいくのを感じ、唇が震える。
「・・・チンポ、弄って、下さい」

微弱な振動が、竿を刺激しながら徐々に先端へ向かってくる。
声を抑えようとすると呼吸が乱れ、妙に息苦しさを感じた。
彼の指が先走る液体を拭うと、ヌルヌルとした感触が背筋を仰け反らせる。
「ここがお好きなんですよねぇ。部長」
楽しげに玩具を手にする男が、敏感な部分へ物を押し付けた。
「・・・っく」
思わず腰が跳ね、誰もいない便所の中に音が響く。
「暴れちゃダメですよー」
「ううっ・・・」
出力を上げながら裏筋と亀頭を撫でまわす彼の顔には、白い歯も覗いている。
「我慢汁ダラダラで恥ずかしくないんですかぁ」
軽口の中に含まれるのは、社会的地位への鬱憤かも知れない。
何であれ、それが俺自身をも昂ぶらせていることは、確かだった。

□ 98_矜持★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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