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未練★(6/12)

上等とは言えないベッドの上に、二人並んで横になる。
彼の方へ身体を傾けた俺に穏やかな眼差しを向けながら、ヒカルは自らのことを呟き始めた。

大学生の彼が明確に男を求めるようになったのは、高校生の頃だった。
身体とは裏腹に、心の中には常に背徳感が付きまとう様になり、ひたすら感情を押し殺してきたという。
大学に進学して周りの世界は大きく広がったものの、身の回りの環境はそれほど変わらず
LGBT系サークルの門を叩こうと考えたこともあったが、結局カムアウトすることが怖くて踵を返した。

ここに来たきっかけは、子供の頃からの親友の結婚。
「恋愛感情とかは全然無くて、ただ大切な友達だってずっと思ってきたのに」
高卒で就職した友に彼女がいたことは、彼も知っていた。
「子供デキたから結婚するって言われた時、すごく複雑な気分になって」
切なげに目を伏せた男の表情に、俺を苦しめている同様の感情が重なる。
「ああ、オレ・・・あいつのことが好きだったのかも、って思った」
着実に人生の階段を上っていく大切な男を、引き留める権利は自分には無い。
けれど、性的指向故の諦めに、若い男はまだ不慣れだった。
「彼女の話とか楽しそうな話聞いても、もうオレ、どんな顔して良いか分からなくて、それで・・・」
「ヤったら、何か、変わるかもって?」
「・・・そう、思った」

彼の気持ちを浅はかだと責める事はできない。
実際、俺がここに来るのも、ヤりたい衝動より気持ちをリセットする目的の方が大きい。
しかし、欲求を発散した後の虚しさも、大きい。
身体が満たされても、手に入らない、諦めざるを得ない男の穴を埋めるものが見つかる訳では無いからだ。
「一ヶ月くらい迷って、いざ来てみても、何回も店の前行ったり来たりしてた」
「初めは、大抵そんなもんだ」
「康平・・・に声かけられた時も、すげーテンパった」
第一印象は、確かに良くは無かった。
それは、彼にしたって同じだっただろう。
「いきなり、ここで咥えろって・・・でも、そういう場所なんだって、とりあえず」

結局、大したことはしなかった。
最中にも、終わった後にも、敢えて突き放すようなことを言ったはずなのに
流されるだけだった彼の気持ちは、どうして俺に傾いたのか。
「何で、俺、なんだ?初めての相手だったからか?」

彼の手に引き寄せられた腕に掌の感触が滑り、手が握られる。
「そうなのかも、知れない。でも、誰でも良かったって訳じゃなかったと思う」
指を絡ませながら、彼は俺から視線を外した。
「他人のモノ咥えてることにも興奮したし、自分の弄られてる時、まだイきたくない・・・って」
僅かに紅潮した顔と、掌から伝わってくる体温に、心がほだされていく。
「男とヤりたいって衝動は、何かの間違いだって思いたかったけど・・・本物なんだなって実感した」
ゆっくりと導かれた手の甲に、膨らみかけた感触が当たった。
「それを教えてくれたから。また逢いたい、いつかちゃんとヤりたいって、思うようになった」

再び戻ってきた視線に誘われる様、頬を寄せ合う。
身体の痛みを懸念しつつ、求めに応じたいという気持ちもあった。
「・・・身体、大丈夫か?」
他人からの刺激を待ち侘びる場所に指を添わせると、彼の目が小さく歪んだ。
「平気・・・」
俺の腕と交差するように、彼の手がこちらへ伸びてくる。
その気配に思わず腰が引けた。
「俺のは、いいって」
そんな言葉とは裏腹に、彼の吐息が前髪を揺らす度、衝動が身体を熱くしていく。
程なく重なった乾いた唇の感触が、更にそれを助長する。
「頼むから・・・今日が終わる前に、本物を、感じさせて欲しい」


上半身を起こし、ヘッドボードに背中を預ける。
開いた脚の間に彼の身体が入り込んだ。
半勃ちのモノに根元から舌が這い上がってくる。
傷だらけの細い肢体は、憧れた男の物とは全く違うのに
ひたすらに俺を求め、健気に快感を与えてくれるこの身体を、愛おしく思わずにいられない。
「ヒカル」
俺の呼びかけに、彼は性器を頬張ったままでこちらを見る。
「すっげ・・・気持ちいい」
ふと満足げに目を細めた男の中に、更に深く、飲み込まれていく。

数分後、今度は頓挫することも無く、絶頂の縁に手を掛けるところまで辿り着いた。
初めての時よりも動きがスムーズで多彩になったのは、恐らく奴に躾けられたからだろう。
そんな嫌悪感も、亀頭を刺激する細かな舌の動きと、陰茎を扱く力強い手の動きに蹴散らされる。
まだイきたくない、飛び出しそうになる欲求に対する無駄な足掻きが頭の中を巡った。

「・・・は、っあ」
吐いた息と共に漏れた喘ぎを合図に、彼は最後の追い込みにかかった。
喉奥まで咥え込まれたモノがきつく締め上げられながら擦られる。
仰け反る様に天を仰ぎ、抗う気持ちから手を離す。
その直後、頭から理性が逆流し、純粋な性欲と共に噴き出していった。


萎れても尚、俺は彼の中にいた。
男はえずきながら何かを飲み込み、柔らかくなった部分を丁寧に舐る。
「どんなに痛くても、辛くても・・・これは康平からされてるんだって思えば耐えられた」
脚の付け根辺りに載せられた頭を撫で、肩に手を回して身体を引き寄せる。
顎の方まで垂れている唾液を指で拭い、唇を重ね、舌を絡ませた。

「いつか、本物を感じたいって、願ってたのに」
彼の元へ手を伸ばすと、そこは既に限界まで滾っている。
「すぐ・・・イきそう」
先端からは焦れる汁が漏れていて、陰毛をも濡らしていた。
親指でカリ首を撫でながら、扱く手を徐々に早めていく。
「っ・・・く」
小さく首を振る彼の身体を強く抱き締める。
「我慢すんなよ。好きなだけ、してやるから」
俺の言葉で、僅かに残っていたであろう冷静さが一気に崩れた。
「はぁっ、あ・・・い、く」
苦しげで切なげな官能を纏った声が部屋に響く。
同時に飛び出した若い精液が、腹の辺りに熱い感触を残した。

□ 94_未練★ □
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お疲れ様です。康平とヒカルの心が少しずつ近づいていく様子が良かったです。
火曜日が楽しみです。

折り返し。

いつもコメント頂きましてありがとうございます。
ちょうど中弛みする頃かと思いますが、しばしお待ちください。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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