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受動★(1/11)

甘ったるい煙が充満した室内には、粋がった選曲のサイケデリックトランスが延々と流れている。
土曜日の夜、現場を出た足でやってきたのは、場末にある古いマンションの一室。
「ハジメ、新しいやつ手に入れたんだけど、試してみない?」
くたびれたソファに座り、天井を仰ぎながら酒を口にしている俺に、一人の女が声を掛けてきた。
「言ってんだろ?俺は、やんねぇって」
「いいじゃない、ちょっとくらい。これキメてヤると、すっごく気持ち良いのに」

持っているキセルをこちらに差出し首を傾げるのは、高校生の頃に付き合っていた女。
付き合っていた、というよりも、体の良いヤリ友、といった方がしっくりくるだろう。
恋愛感情が無かった訳でもないけれど、彼女とのセックスで愛を感じたことは一度もなく
女の中に青い性欲を吹き出す毎に、その気持ちは段々と薄れていった。


再会したのは、大学進学の為に上京してから15年も経った頃だった。
「ハジメだよね?やだ、何年ぶり?」
たまたま親方に連れて行かれたクラブでホステスをしていた女は
俺の顔を見るなり、親しげに話しかけてきた。
「こんな美人と知り合いか?鈴木君も隅に置けねぇな」
「何だハルカちゃん、こんなのがタイプなの?」
幾人もの男とそれなりの金に磨かれたであろう彼女の美貌に、親方たちの冷やかしも冴える。
純粋な性欲を煽る、匂い立つような女の色香を纏っていたのも確かだった。

連れの手前、連絡先だけ受け取って店を出たが
タクシーの中で微睡む俺に、女は一通のメールを寄越す。
『もう少し、昔を懐かしまない?』
懐かしむことなんか、何かあるだろうか。
一緒に出掛けたことも、将来を語り合ったこともあるはずなのに
思い出せるのは、ただただ拙いセックスに喜ぶ子供の姿だけ。
あれから随分時が経ち、互いに大人になったけれど、結局、やることは同じだ。
「すみません。ちょっと、戻って貰って良いですかね?」
Uターンしたタクシーの窓の向こうに、程なく、歓楽街の入り口が見えてくる。
軽く手を上げた女を隣に乗せ、そのまま、場末のホテルで身体の関係を持った。

たまに会っては身体を重ねる、それだけの関係が2ヶ月ほど経ち
女は、あるマンションの一室に俺を連れ込んだ。
築30年は過ぎているであろう古いマンションのペントハウスは、床面積が150m2を超える程の部屋で
違法に改造されたであろうだだっ広いリビングには、複数の男女が思い思いの時間を過ごしている。
部屋の中に広がる薄い靄と酒の匂いがいかがわしい空気を作り
足を踏み入れた時の率直な感想は、ヤバいところに来た、そんな感じだった。


吸っていたハーブに飽きたのか、ハルカはキセルを灰皿に叩き付け、火種を落とす。
「ハジメは真面目すぎるのよねぇ」
ノーブラにキャミソールだけを着けた女の上半身が俺の身体に重ねられ
密着する乳房の感触が、在り来たりな興奮を撫でた。
「今日は疲れてんだよ」
「あたしはハジメのが欲しいの・・・ね?座ってるだけで良いから」
クスリに浮かされた瞳が徐々に大きくなり、唇が重なる。
甘ったるい匂いを口の中で感じながら、流されるまま、女の身体に手を伸ばした。

床に座り込んだ女は、スラックスの中から覚束ない手つきで萎れた性器を取り出し
亀頭に舌を這わせ、根元まで唾液を纏わせた後、口に含んだ。
ソファの背もたれに身を預け、舌の動きと吸い付くタイミングが絶妙な性技を愉しんでいると
背後から誰かの手が首筋に伸びてくる。
「手伝ってあげよっか」
首を傾いだ方向にあったのは、ショートボブの女の顔。
どいつもこいつも同じ顔をしてやがる。
不意に過った想いは、アルコールの匂いと共にやってきた唇に掻き消され
絡まされた舌が、抗いを奪っていく。
「ハルカと終わったら、ウチとどう?」
第二ボタンまで外していたワイシャツの首元から女の手が入り込み、上半身を撫でる。
「考えとく」
二人の女にももたらされる虚ろな快感が、徐々に身体を蝕み
あの時の予感は、きっと、的中しているのだろうと、思っていた。


女の体重を受けたソファが軋んだ音を立てる。
唾液を纏ったモノは昂ぶり、指一本触れていない女の部分も、受け入れる準備は出来ているようだった。
しばらく性器同士を擦り合せた後、彼女は自らの中に俺を沈めていく。
暖かく湿ったそこは、それほど窮屈さを感じさせず、とはいえ包み込んでくる感触は得も言われぬもの。
目の前の身体は跳ねる様に捩れ、互いの官能を段々と融化させた。

上下に揺れる大ぶりな胸を両手で掴み、興奮を示す突起を親指で弾くと
彼女は上ずった声を上げて性器を締め付けた。
俺の手の上に重ねられた手がそこへの刺激を一層求め、俺はそれに応える。
「ひっ、いやぁ」
指で摘み引っ張り上げると同時に、ハルカは捻じ曲げられた感覚に喘ぎを吐いた。
耳からの刺激で、やっと女の興奮に身体が追い付いてくる。
動きに合わせて腰を突き上げると、手を掴む力が強くなり、乾いた音を喉から漏らす。
「もっ、と・・・突いてぇ」
底無の性欲が全身に絡みつき、性器を奪われんばかりに彼女の中に飲み込まれる。
絶頂が近い、そう悟った俺の身体が、無意識の内に逸った。

頭の中で何かが弾けるように理性が途切れ、精液が吹出す。
荒い息を吐き出す俺の口を塞ぐように、女は何度もキスをせがんだ。
「ねぇ・・・もう一回。今度は、ベッドで」
萎れたモノが、再び暑苦しい感触に締め付けられる。
「いや、マジ無理」
「良いじゃない。何なら、エミも入れて、3Pでも良いわよ」
「また今度な」
ひとしきり興奮は出来る。
けれど、射精してしまうと、急に理性が戻る。
余韻を引き摺っていたい女とは、そこが決定的に合わないのだと思う。

□ 90_能動★ □
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■ 8 ■   ■ 9 ■   ■ 10 ■   ■ 11 ■
□ 92_受動★ □
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■ 8 ■   ■ 9 ■   ■ 10 ■   ■ 11 ■
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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