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玩弄★(4/9)

優秀な人間は、その存在さえも武器に変える。
自尊心を傷つけられたくないが故に湧き起こる劣等感。
良い大学を出ている訳じゃ無い、女にモテるツラでも無い。
だから、俺はあいつより劣っていても、仕方が無い。
何処かに言い訳を作って、空っぽな安らぎを得る。
それで、彼の勝ちは、決まる。

ただ、後輩との関係に対してだけは、言い訳が思いつかなかった。
一緒に時間を過ごす中で、心を通わせてきたつもりだった。
納得できない。
負けたくない。
恋愛感情など関係なく、人間として。
「・・・かもな」
躊躇いがちに発した俺の声に、彼は小さく頷いて、背を向ける。
「・・・すみません」
それでも俺は、彼に敵わない。
去って行った言葉は、試合終了を報せるホイッスルの音のように、心に刺さった。


「お前は、辞めんなよ?」
「は?」
「これ以上同期が減ったら、寂しいだろ?」
程々に盛り上がった送別会の帰り、海老名はそう言って笑った。
同期の妬みも、後輩の恋慕も知らない男は屈託のない表情を見せる。
自分の小ささを、改めて思い知った。
「その内、また飲みに行こうな」
「もちろん。お疲れ、気を付けて」
郊外へ向かう電車のホームへ上がっていく彼を見ながら、虚しさが心を覆う。
優位に立つのは、いつだって想いを受け止める側。
俺は、このままずっと、望みを見上げたままなんだろうか。


週末という感じがしない。
すっかり習慣になった些細な時間を手放したからだと、一人、酒を飲みながら思う。
仕事の上で、後輩との関係に問題は生じていなかったけれど
彼が俺を避けているのは、明らかだった。
喧嘩でもしたのかと言われるほどの態度を諌めることも出来ず、足早に帰る姿を見送る日が続いていた。

携帯端末の中にある、秘密の一時。
数枚ある写真は、どれも苦しげで、切ない眼差しを向けているものだった。
お前は最低だと、訴えているようにも、見える。
それなのに、心が疼く。
行き過ぎた俺の独占欲を受け止める土壌を、彼は持っている。
このまま行けば、もしかしたら。
引き込まれるよう画面に指を滑らせた時、不意にドアチャイムが部屋に響いた。

時計は既に夜中の12時近くを指している。
こんな時間に、そう思いながら玄関からドアスコープを覗いた。
「・・・何で」
思わず出た独り言を飲み込み、ドアを開ける。

スーツ姿の彼は、ろくに俺の顔を見ないままで玄関に滑り込んだ。
「おい・・・」
後手でドアを閉めるなり鞄を廊下に放り投げ、俺の襟元を掴んで身体を壁に押し付ける。
「氏家」
「今日は・・・」
目を細めた彼の顔が近づいて来る。
飲んでいるのか、少し充血した眼差しが突き刺さる。
手の気配が腰の辺りに纏わり付き、ベルトに手がかかった。
「何、してんだよ」
「オレのも、抜いて下さい」
軽い金属音と共に、締め付けが緩くなる。
ファスナーが下され、ジーンズの中に彼が入ってくる。
その感触に、思わず眉をひそめた。


壁に寄りかかりながら、大きくなっていく快楽に身を委ねる。
聞こえるのは、息遣いと、水音と、小さな呻き声だけ。
痛々しいほどの怒張を、更に痛め付ける様に彼の舌がモノを這う。
付け根から舐め上げ、裏筋を唇で挟み、先端を吸い上げる。
余りに丁寧な行為が、身体の焦燥感を益々加速させた。

唾液に塗れた欲望の塊は、彼の手によって解放される時を待っている。
あと一歩、その段になって再び彼の口の中へ吸い込まれた。
「ん・・・っ」
抜けていく声を押さえる様に腕で口を塞ぎながら、目を閉じた。
緩急のある刺激が上半身を痺れさせる。
喉の震えが腕に響いた。
長い助走期間の末、衝動が、彼の中へ飛び出していく。


床に座り込み、肩で息をする彼を見下ろす。
萎れたモノの先から彼に向かって糸を引いていた液体が、フッと消え去った。
「どうした、お前・・・」
「・・・無理、だから」
「何が?」
俺を見上げたその顔は、紅潮し、興奮を隠しきれないでいる。
恐らく、身体の昂ぶりも感じているのだろう。
一瞬目を細め、彼は呟いた。
「海老名さんとは、無理、だから」

□ 68_玩弄★ □
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□ 74_挑発★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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