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依拠★(9/9)

腰の上で握り締めた手を、彼の手が優しく掴む。
腕が伸ばされ、その枷と腰のベルトとが鎖で繋がれた。
少し肘を曲げるだけで、異物の圧迫感が身体を突き抜ける。
肩を持ち上げ、背中を反らすと、何とか痛みが和らいだ。

何も言葉を発する事無く、淡々と俺の身体を苛む彼。
心が見えない不安が、些細な戸惑いを生む。
俺の顔の前に腰を下ろした彼は、責めに喘ぐ上半身に手を添え、抱え上げた。
「す、み・・・よし、さん」
細く歪んだ視界の向こうには、切なげな目をした先輩の姿。
眉間から降りてくる唇の感触に、辛苦を訴える言葉が掻き消される。
躊躇いの声を聞く前に、震える声を吐いた。
「・・・だい、じょう、ぶ」
酷く歪めた表情のまま、彼の思惑に流されたいと思う気持ちを表す。
重ねられた唇は、互いに、震えを隠しきれていなかった。


膝立ちになった彼のモノが、目の前に差し出される。
屹立したそれは、この時間に如何に心酔し、満足しているのかを明らかにしているようで
痛みに打ちひしがれそうになる心を鎮めてくれる。
照りを帯びた先端に舌を伸ばす。
快感に足を踏み入れた乾いた声が頭上から聞こえ、腰が揺らぐ。
舐る程に、俺の肩を支えてくれている手の力が強くなる。
口の中で混ざり合う二つの味を飲み込み、モノを咥え込んだ。

浅く潜り込む塊ですら、頭の中を白くする。
無慈悲に突っ込まれた男たちのモノの感触が思い起こされた。
ゆっくりと頭を動かすと、自らの腰を打つ刺激が強くなる。
それでも、彼を絶頂に導く為に、より深く口に含む。

肩に添えられていた手が二の腕の方へ下がり、気道を締める質感が増してくる。
打ちつけられる腰の動きが徐々に激しくなり、その度に差し込まれている玩具が奥を叩く。
「んっ・・・う、っん」
前後の穴が犯されているような感覚。
この上ない屈辱のはずなのに、堪らなく、気持ち良い。
さっきまで太腿辺りに当たっていたモノの感覚が無くなっている。
滾った欲望は揺らがない程に硬くなり、玩弄されることを待っていた。

「う、あ・・・」
朧げな声のすぐ後で噴き出された彼の精液が、口の中に充満する。
込み上げる嘔吐感を抑え込むように、彼は俺の顔に腰を押し付けた。
苦しさの中で、必死に、飲み込んだ。
やがて抜かれていくモノに、唾液が糸を引く。
それが切れるのを見届けるかのように、上半身が持ち上げられ、彼の顔が近づいてくる。
軽く唇を触れ合わせ、中に入って来た舌が、余韻を舐め取る。
腕を撫でていた手が下半身へ伸び、待ち侘びるモノに触れた。
「・・・っく」
痺れを切らした声が、絡み合う舌に響く。
逸る気持ちを乗せた視線を、彼は真っ直ぐに受け止めてくれた。


全ての拘束を解かれた身体には、所々に残る刺すような痛みと、明確な昂揚が同居している。
片方の足をベッドに乗せて座った俺の下半身で蠢く頭。
仰け反る身体を腕で支え、彼から受ける快楽に身を投じる。
聞こえてくる水音と、小さな呻き声が興奮を助長する。
裏筋を辿る舌、カリを抱え込む唇。
この部屋でなされた全ての行為が、今の快楽をより激しいものにしている。
髪の影に見え隠れする眼鏡のフレームを見やりながら、うわ言のように声が出た。
「はぁ・・・いい」
ふと動きを止めた彼は、見上げる視線を俺に送り、微笑む。
それは、いつもの、俺が待ち侘びていた表情で
日常とは掛け離れたこんな時にでも、見られたことが心から嬉しかった。

彼の腕が俺の腰を抱え込み、絶頂へ導く動きが早くなる。
この時間が終わる、そのことに幾ばくかの無念を感じながら、身を任せた。
「う・・・い、く」
咄嗟に腰を引こうとする俺を捕らえたまま、彼は俺の射精を口で受け止める。
迸りが無くなった後も、しばらく、モノに舌を絡ませながら名残を楽しんでいるようだった。

俄かに腰を上げた彼が、俺の上半身をベッドに押し倒す。
覆い被さる様に身体を重ね、震える俺の頬に唇を寄せた。
「ありがとう」
囁かれた感謝の言葉が、胸に響いた。
顔に手を添え、引き寄せる。
互いの想いを刻むように、何度も、何度も、唇を重ね合わせた。


それから、会社帰りに彼の家に立ち寄る機会が多くなった。
決まって金曜日の夜。
人影のまばらなオフィスで帰るタイミングを見計らい、共に会社を後にする。

廊下の壁に手を付いた俺の胸元を、ワイシャツの上から彼の手が弄る。
布ごと引っ張り上げられる乳首が、痛みと快感を身体にもたらす。
「これじゃ、物足りないかな」
吐息と共に頷きで答えを返すと、スラックスからシャツが抜かれ、中に手が入り込む。
ゆっくりと焦らすように突起を撫でる指。
「つま、ん・・・」
言葉を全て聞かない内に、その指は二つの乳首を摘み上げた。
「うっあ・・・」
「こう?」
「は、あ・・・も、っと」
捻じられることで、悲鳴にも似た声が喉から出ていく。
「凄く、感じやすくなったね」
「住吉、さんの、せい・・・ですよ」
彼に虐げられないと、純粋な欲求を満たすことが出来なくなった身体。
「心配無いよ。ちゃんと・・・オレが、責任取るから」
「・・・っん、うぁ」
「良い声。もっと、聞かせて」

苛まれる身体が、彼への依存を強くする。
虐げられて悦ぶ身体が、彼からの依存を受け止める。
歪んだ柱かも知れない。
それでも、俺たちは、僅かに噛み合った部分で支え合っている。
きっと、これは、愛なんだと思う。

□ 62_依拠★ □
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愛も行為も

愛する人に特殊な行為は要求できない。かといって、愛のない人との行為は心がむなしい。
たいがい、愛か行為かの二者択一になる現実。
住吉さんと藤枝さんは、途中ハラハラしましたけれど、愛も行為も両方手に入れられてよかったです。幸せそう。
ていうか、今更ながら一話冒頭での住吉さんが、会社で藤枝さんがミスしても激甘だったことが思い出されます。
(腰ベルトと手枷を繋いじゃった人と同一人物とは思えない。凄すぎる。←尊敬)
もう最初っから住吉さんは、藤枝さんが可愛いくて可愛いくてしかたがなかったんでしょうね。
やっぱり試練を乗り越えられたのは、それまでにたっぷり注がれていた愛故だったのかもしれません。住吉さん報われましたね。
PS、恋愛は無償の愛が基本だと思っていたので、前回頂いたお返事コメントには驚きました。
私、ちゃんと、まべちがわ様のお話読み取れてるのかな?と。もしかしてピントのずれたコメントばかりしているかもしれません。もし「コイツ分かってないな」的なことが有りましたら、お許しください。まべちがわ様のお話にこの上なく感動していることは確かなのです。

作者の特権。

恋人同士が夜を繰り返す際、例え性行為があったとしても
互いが望む性癖を曝け出せることは少ないと思います。
愛が身体を触れ合わせ、身体が愛を深くする。
特に激しい行為を書く際には、いつもそんなことを考えています。

無償の愛、という言葉から私が想像するのは
人類愛や親子愛と言った、一人を相手としない崇高な感情です。
特定の誰かと関係を結ぶ以上は、何かしらの希望を持つ。
それは無償とは言えないんだろうな、と思っています。

もちろん、綴っている言葉が、そのまま私の考えという訳でもありません。
物語は、誰かに読んで貰って、何かしら感じてもらうことに価値があります。
そこに正解は無く、例え私が書く際に思い描いていた真意と違っても
貴女がこの文字の羅列から読み取ったものが、その小説の真意になる。
こういう風にも感じ取れるんだと思えるのは、作者の特権だと思っています。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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