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慙愧★(3/6)

「あんたは、良いの?」
壁に寄りかかり、見知らぬ男たちに組み敷かれる婚約者を眺める俺に、一人の男が声を掛けてくる。
穏やかそうな見かけに反し、その手には赤いロープといかがわしい玩具。
「俺は見てるだけで、良い」
既に興奮しているのだろう紅潮した顔が、俺の言葉に怪訝な表情を映す。
「・・・結婚、するんだろ?」
「まさか」
「どうすんだよ、あの娘」
「俺が知るかよ」


壁際に置かれたスツールに座り、地獄のような光景を眺めていた。
視界を覆われたまま服をはぎ取られ、赤いロープで装飾が施されて行く身体。
抵抗を示す言葉は徐々に喘ぎに変わる。
玩具で性感帯を責められながら、男たちのモノを代わる代わる口に含む。
耳に入るのは、男たちの昂ぶった声と、彼女の嬌声。
それしか無い空間が酷く息苦しくて、眩暈がしそうになる。

中年の男のモノが、彼女の中へ沈んでいく。
割れるような声を上げた後、深い吐息をつく女。
腰をゆっくり動かしながら、男の手が乳首とクリトリスに付けられたチェーンを引っ張り上げると
引きつったような悲鳴が部屋に響いた。
「気持ち良すぎて、声にもならない?」
笑いながらそう言う若い男は、彼女の手を自分のモノに促し、扱かせる。
首筋から耳の裏を丁寧に舐りながら、もう一人の男が呟いた。
「気持ち良いって言ってごらん?そうすれば、もっと気持ち良くなるよ?」

下半身がぶつかり合う度に、男の背中の筋肉が激しく陰影を作る。
全てを受け止め、快楽に湿るその身体は、確かに俺のものだったはずなのに。
「きも、ち・・・いぃ」
「ん?もっと気持ち良くなるか?」
「も、っと・・・もっと、してぇ」
屈辱に打ちのめされそうになりながら、それなのに、その現実が身体を狂わせる。


我をも忘れると言う女の快楽を羨ましいと思ったことは、一度や二度じゃない。
四つん這いになった彼女の前後から、男のモノがその身体を弄ぶ。
自らモノにむしゃぶりつく姿は、もう、俺の知る婚約者の姿ではなかった。
「美味しい?アユミちゃん」
「ん・・・おいし・・・」
口で快楽を愉しむ男が、その目を覆うベルトに手をかける。
「彼氏にも、そう言ってあげな」
細い布がベッドに落ち、彼女はモノを口に含んだままで俺に目を向けた。
混乱しているのか、反応は鈍かった。
「・・・やっ」
彼女の唇が震えると同時に、背後の男の動きが早くなる。
「すっげ締まり、良くなったぞ」
「や、っあ・・・見な、い、で」
眼前の男の腰に抱きついたままで刺激に耐える姿に、不意に興奮が駆けた。
「ずっと・・・見てたよ。君だけを、見てた」

絶望をも掻き消す快感なのか。
それとも、こんなことは、もう、どうでも良いことなのか。
俺が階段を下り、トイレに入る頃には、再び淫らな声が室内に充満していた。
ドアを閉め、鍵をかけ、便座に腰かける。
僅かに聞こえて来るくぐもった声を聞きながら、自分を慰め始める。
虚しすぎる絶頂。
程なく便器の中に吹き出された精液は、希望と共に、水流に巻き込まれて行った。


夜明け前、満足した表情の男たちはコテージを出て行く。
手元に残ったのは、幾らかの金と、快楽に溺れきった女の身体。
精液に塗れ唖然とする彼女の上に、一枚一枚、札を並べて行く。
震えながら向かって来る手を避けるように、ベッドから離れた。
「それで、帰んな。フロントからタクシー呼べるから」
声も無く、その眼から涙が零れる。
俺の心に響くには、あまりにも遠い光景だった。


恋愛が生活の中を占めるウェイトは、自分が思っていた以上に大きかったのだろう。
最悪な幕引きを迎えてから2週間。
相変わらず忙しい日々の中で、仕事に対する意欲が目に見えて減っていることに気が付いた。
こんなに無理して働くことに、何の意味がある?
最も考えてはいけない思考に、心が支配されていくようだった。
つまらないミスを重ねても、その呪縛からはなかなか逃れられない。
何も考えられないまま、流されるままに仕事に没頭出来ていたことは、幸せだったのかも知れない。

致命的な失敗を回避するのは、マネジメントの基本。
俺を呼んだ上司の目は、何処か憐憫の情を含んでいたように思う。
「こうなる前に、お前のことを、もっと考えてやれば良かったな」
彼はそう言葉を付け加え、他の部署への辞令を言い渡した。

建設業も兼ねる大手のデベロッパー。
社内では花形と言われていた企画部から
子会社である不動産会社の各店舗を地域ごとに管理する総括営業部へ。
都落ちと揶揄する声も、影では囁かれていたのだろう。
前の部署よりも遥かに自由になった時間。
生活サイクルが歪む中で、荒みきった自分が堕ちて行くのが見えた。

□ 38_夢路★ □ ※露出・凌辱表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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□ 60_慙愧★ □
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永遠の平行線

言葉の語源を考えれば面白い。
英語やドイツ語で言うザーメンは、種子という意味。子孫繁殖を考える質実剛健なゲルマン民族とアングロサクソン。
一方、イタリア・フランス・ロシアではスペルマと言う。「撒き散らされたもの」と言う意味。
陽気なラテン民族も、陰鬱な気候に相応しいスラヴ民族も、結果でなくその場かぎりの快楽重視かと思うと、笑えるようで、妙に納得もします。
そして、このザーメンは、直後と時間が経過してからでは、その様子が変化します。
男は、直後の無臭で白濁を記憶し、余韻に浸っていた女は透明な液体の栗の花の香りを記憶する。
男と女は、何処までも、別の生物ですね。

濃密な悦び。

同じように快楽を求めているはずなのに、終着点が違う。
明確なゴールを持つ男と、気分次第ではゴールに辿り着けない女。
行きつく先を知っている同性同士では、その道順も違うのかも知れない。
そう考えると、いつまでも余韻に浸っていられる女性同士の方が
より濃密な悦びの時間を過ごすことが出来るのでしょうか。

交差点のカンターレ

ベッドに並んで寝る時、右側ですか?左側ですか?
私は右側です。左側を下にして横向きになると、右手が自由になるので、アレを弄ったり色々出来ます(笑)。
クリ○リスを刺激すると女はイクけど、男は自分の事に夢中。なので、女同士だとそのあたりが「あ・うん」の呼吸で分かるんだと思いますが、私は女同士は未経験なんで、断定は出来ません。

しかし、経験を重ねると、膣より最奥のポ/ル/チ/オで深い悦楽を感じるようになりますよ。
正常位よりもバックの方がより深く挿入出来るので、横臥のバックでガンガン攻めて貰います。
最初は力を入れずに脱力しておいて、馴染んだら、若干締め上げて、男が達したら同時に此方も極める。
結局、クリは一度も触らせずに、驚く程の精神的満足感が来ますね。
永遠の平行線と思っていたのが、交差する瞬間です。

感じる文章。

快感を文章に起こす時、それがどんな感覚であるか想像する訳ですが
同性であろうが、異性であろうが、自分の感覚に置き換えるしかありません。
特に感情に大きく作用されるであろう、この特別な刺激は
同じ人であっても、毎回同じように捉えられることは無いのでしょう。
どう伝わっているのか、どう感じられているのか。
いつも悩ましく思います。

ちなみに、痛みによる快感にフォーカスすることが多々ありますが
痛いのは苦手です。
そして、寝る時はいつも左側ですね。
特に艶っぽいことが起きる訳でもありませんが…。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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