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空疎★(4/7)

様子のおかしい客だと思われただろう。
視線を泳がせながら、彼は夜更けのコンビニで会計を済ませる。
紅潮した顔とギクシャクした動きは、深酒のせい。
遠目にその様子を見ていた俺は、そんな勝手な言い訳を、彼の代わりに考えていた。

若干季節外れのコートを羽織る彼は、不安定な足取りで俺の横を歩く。
サイズが大きいせいか、手の先まで袖の中に納まっている。
通りの人気が無くなるにつれ、彼の息遣いが、よりはっきりと耳に届くようになった。
「ここ、入りましょうか」
左手にある小さな公園に視線を向け、彼を促す。

頼りなく地面を照らす街灯の灯りに、長い影が伸びる。
砂を引き摺るような音が、夜の公園に響いた。
「・・・う」
光を遮るような藤棚の下で、彼は木製のテーブルに手を付き、うなだれる。
後ろから抱きしめるように、腰を抱く。
腕の中で震える彼は、切ない声を絞り出した。
「こん、な・・・ところ、で」
「こんなところで?」
腰に当てた手を、前の方へ回して行く。
脚の付け根辺りからコートの中に差し入れ、弄ると、彼の昂ぶりがあからさまに感じられた。
「こんなところで、こんなにしちゃって」
スラックスの上から股間を撫でる程に、その身体が傾いて行く。
「気に入って貰えたのかな」
ポケットの中で、更に彼の身体を追い詰める。
「は、あっ」
崩れ落ちそうな身体を両腕で必死に支える姿。
自尊心と言う名の綱を掴む手が、少しずつ解けて行くのが見えるようだった。


先の見えない闇に、彼の心はどう耐えているのだろう。
抗うことを諦め、ただ、流されているだけなのかも知れない。
金曜日の帰り際、俺の誘いに、彼は目を合わせないままで頷いた。
性奉仕を強要した男からのアプローチが何の意味を持つのか、想像できないはずが無い。
いつもと変わらない風景が流れる電車の中、覚悟を浸み込ませるよう、彼は何度もため息をついた。

自宅に着くとすぐ、スーツ姿の彼を狭い脱衣所に引き入れる。
腕時計を取り、ネクタイを解き、ワイシャツのボタンを上から外していく。
言葉も無く、なすがままにされる身体は、小刻みに震えることで不安を訴えていた。
上半身の衣服を脱がし切り、ベルトに手をかける。
「・・・自分で、脱ぐから」
目を伏せたまま、彼はそう言って俺の手を制した。
「違うんですよ、川端さん」
背中に手を回し、その身体を引き寄せる。
「俺が脱がせることに、意味があるんです」
間近に迫った耳元に唇を滑らせながら、片手でベルトを外す。
腰回りを抜けたベルトが、床に落ちて音を立てた。

裸にした彼をユニットバスの中へ誘う。
「そこに、手、ついて」
浴槽の縁に手を付き、尻を突き出すような恰好をしたその背中に
シャワーを浴びせ、ボディーソープを塗り込んだ。
滑らかな感触と共に、身体の熱と震えが手に沁みて来た。
背中から腰、尻へと手を下ろし、軽く開いた太腿の間に差し込む。
短い毛が泡立ちを良くするのか、撫でている内に、下半身が泡に塗れて行く。

萎れたモノを背後から掴み、ゆっくりと扱く。
切なげな溜め息が、風呂場に充満する。
「今日は、ちょっと違った趣向で、遊びませんか?」
俯く彼の顔に手を寄せ、こちらを向かせた。
怪訝な表情の眉間の皺が、より一層深くなる。
敏感な場所が、刺激を求める如く小さく傾いだ。


濡れた腰回りに、妙な臭いのする粘液を垂らす。
尻の割れ目に擦り込み、指で穴の周りを解すと卑猥な音が立った。
眼下で身体を捩る彼の吐息で、心も身体も昂揚していく。
「な、に」
苦しげに息を飲む様子に勢いを貰い、捉えた穴に指を突っ込む。
「う・・・っく」
指を圧迫する、柔らかく熱い壁。
直接的過ぎる感覚に、背筋が寒くなる。
指の小さな動きに、彼の呼吸が同じリズムで引きつるのが分かった。

ローションを纏い、鈍く光る細長い物体。
無機質な物で尾てい骨の辺りを撫でられ、彼の身体は脅えるようにぶれた。
「大丈夫ですよ。指より、ちょっと太い位ですから」
頭が左右に振れ、茶色い髪が照明を受けて赤い残像を引き摺る。
先端を肛門に当て、間を置かず物体を一気に押し込んだ。
声にならない声を上げると共に、背中から肩にかけて強張る。
痛みと違和感に耐える息遣いが、身体を大きく揺らしていた。
「じゃ、コンビニでも、行きましょうか」

ふらつく身体を壁で支えながら、彼は床に放り出された衣服を再び身に纏う。
シャツに手を伸ばすタイミングで、ポケットの中に入れていたリモコンのスイッチを入れる。
「っ・・・う」
呻き声を上げながら、彼の身体は床に崩れ落ちる。
その手が俺のスラックスを掴み、縋るような視線が下から迫ってきた。
「立ってられないほど、感じちゃいます?」
浅ましい問に対する最良の答を、今の彼には導くことは出来なかったんだろう。
顔を歪めたまま、唇を震わせるだけだった。
手を引き、立ち上がらせる。
彼の足の間に太腿を差し入れ、そのまま前後に弄ると、僅かに反応を見せるモノの感触が当たる。
「こんなんじゃ、外歩けませんね。ちょっと時期早いけど、俺のコート貸しますよ」

□ 56_空疎★ □
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コメント

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策略家こそ男

腹黒で策略してこそ男だと思っていますので、香月は嫌いじゃないですよ、寧ろタイプです(笑)。

こんな時刻に目を覚ましたのでコメントしていますが、昼間見た映画『源氏/物語』の六条/御息所の生き霊が怖くて、うなされたのではありません(笑)。
この映画に登場した2人、紫/式部の墓も安倍/晴明神社も実は同じ通りにあります。

幕末の頃の私の祖先に某権中納言の公卿がいます。この人の娘は○○天皇の寵愛を受け、祖父は名前でなくいつも二位の局と呼んでおりました。
又、この人の息子で子供の頃に某家の養子になった人物こそ、策略を尽くして「幕末の/妖怪」と呼ばれた明治/維/新の偉人です。あなたもご存知だと思いますよ。でも、誰だか分かっても内緒にして下さいね。

感情で歪む視界。

策略家に必要なものは、緻密な計画と先見の明。
特に先を見通せなければ、只の無謀で終わり、名を残すことも無いでしょう。
その時には冷酷な人間としか認められなかった人物でも、歴史となって功績を認められる。
大抵は感情的な思考で自分の視界が歪んでしまうもの。
知性と理性を兼ね備えた策略家には、人間としての魅力を感じます。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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