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空疎★(2/7)

年齢的にも、これが最後の転職。
ここで失敗すれば、もう後が無い。
部下の悲壮な想いを、上司はただ快楽の為に利用した。
「目ぇ閉じてりゃ、正直女と変わんねぇよ。口が小せぇから、良い感じでリアルだし」
煙を吐き出す男の顔は、酷く醜く見えた。
「呻き声も、ちょっと歳行った女みたいに聞こえなくも無いしな」
まだ試用期間の身。
正式な採用に対して決定権を持つのは部長だが、直属の上司である彼の意向は大きい。
脅し文句が目に浮かぶようだった。
「出張には、あいつ連れてけば、風俗代が浮くってか」


彼は明らかに怯えていた。
息を飲む音が耳に響く。
「そう言う、趣味なんですか?」
「まさか・・・あれは・・・」
「酒の勢い?欲求不満?」
「そうじゃ、なくて・・・」
腕の方に手を下ろしていくと、その身体が小さく強張る。
暗くなったフロアの中で、点滅しているセキュリティカメラのランプが目に入った。
「そろそろ、帰りませんか」

彼から見れば、俺も上司も、きっと同じ顔をしているのだろう。
エレベーターホールを素通りする俺を見た彼は、目を伏せ、唇を噛んだ。
立ち尽くす彼に、視線を向け続ける。
やがて観念したのか、その足を引き摺るよう、俺の方へ歩みを進めた。

去年改築されたトイレは、人気も無く、寒々しい空気を漂わせている。
一番奥のブースに彼を促す。
顎を少し上向け、便器に目をやると、彼はうなだれたままで腰を掛けた。
後ろ手にドアを閉め、ライニングの上に自分と彼の鞄を置く。
「保身の為に上司の性欲処理するなんて、大変ですね」
その一言に、僅かに顔を上げ、鋭い視線を向ける彼。
「会社に残る為なら、何でもするんだ?」
怒りに満ちた表情が、彼の絶望を映す。
それが、身体を昂ぶらせる。
「俺のも、咥えて下さいよ。ここに、残りたいんなら」


萎れたモノを取った彼の手は、大きく震えていた。
その光景を目の裏に焼き付けるよう、見下ろしながら息を吐く。
前屈みになった彼の背中がゆっくりと動き、生温かい感触が下半身を痺れさせる。
ドアにもたれるよう、腰を突き出す。
口の中に入り込んだモノが、その膨らみを一気に増した。

喉奥から湧いてくる呻き声は、確かに女のそれと似通っているのかも知れない。
唾液の絡みつく音が、その声を更に淫らなものに仕立て上げて行く。
照明の光で赤みを増した彼の髪に、指を絡ませる。
ひたすらに単一的な動きを繰り返す小さな身体が、性欲だけではない何かをも満たす。
その場限りの発散だけじゃ、物足りない。
こんなところで、手離さない。

口から引き抜いたモノは、虚ろな眼の前でそそり立っていた。
根元の方を唇に押し付けるよう差し出すと、躊躇いながら舌を這わせる。
目を閉じて男のモノを舐める姿に、上司と部下と言う関係性が狂わされるようだった。


早くなる鼓動が、自らの身体の限界を教えてくれる。
窮屈な空間からモノを抜き出し、彼を立ち上がらせた。
当惑を露わにしたまま、おぼつかない様子の身体を壁に押し付ける。
ベルトに手がかけられる気配に、その口から脅えた声が漏れる。
「な、に・・・する・・・」
バックルの金属音が、虚しく空間に響いた。
「別に、入れたり、しませんから」
ファスナーを下ろし、ボタンを外し、スラックスを腰から下げて行く。
トランクスの上から尻を撫でながら、身体を密着させる。
「引地さんと同じじゃ、嫌だな、って」
腰回りから中に手を差し込むと、身体の震えがダイレクトに伝わって来た。
抑えきれない興奮が、感触を楽しむことすら拒絶する如く、逸る。

下着が太腿まで下ろされ、露わになった腰に手を添える。
尻の割れ目をなぞる様にモノを這わせ、股間に差し込んでいく。
チクチクとした毛の感触と、先端に当たる柔らかく熟れた感触。
腰を振る度に、小さな声を忍ばせた吐息が聞こえる。
間を置かずやってきた快楽の終点が、彼の下半身と無機質なタイルを汚した。


萎れたモノを挟み込んだまま、腰骨に沿わせるよう手を前の方へ回して行く。
大きな溜め息が壁に跳ね返って聞こえてきた。
壁についた彼の手に、自分の手を重ねる。
耳を唇で突きながら、歪んだ変化を見せる彼のモノの感触を確かめた。
「興奮しちゃいました?」
「そん、な・・・」
彼の頭が小さく振れて、喉元辺りに擦り付けられる。
もつれる指が、逃れられない状況を何とか打破しようともがく。
諦めの中で身を捩る彼の身体を独り占めできる悦びで、声が上ずる。
「こういうの、まんざらでも無いんですか?」
自分の精液が纏わりついた彼のモノをゆっくりと扱くと、スーツの中の身体の強張りが伝わって来た。
「そんな、訳・・・無い」
「普通、勃たないと、思いますけど?」
「こ、んな・・・の」
憂いを帯びた声が、俺の身体を再び昂ぶらせる。
手の動きに合わせて、腰を前後に動かす。
「気持ち良くなりましょうよ。面倒なこと、忘れて」

□ 56_空疎★ □
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じゃじゃ馬/馴らし

今回の主人公は今までにないようなタイプで興味深いです。川端がどんどん追い詰められそう…。

知り合いの弁護士の話。離婚する夫婦は同じ空間の空気を吸うのも嫌だそう。そうでない時は、まだ離婚する程では無いんだそうです。プロの意見に成る程と思いました。

サッカーのワールドカップやオリンピックは一緒に見ない。神社の初詣は車で送迎してくれるけど、義父や夫は絶対に参拝しない。プロ野球の巨人ファンの夫は、野球の話は私としない。そういう我が家なりのルールを作る事で、余計な波風が立たないようにしています。
私も息子も夫の頑固で激昂しやすい気性(家の中だけ)を分かってサラリとかわしたりするのに、娘は似た者同士の荒い気性で、夫に突っ掛かったりするので困ったもんです。誰か『じゃじゃ馬/馴らし』してくれないかしら(笑)。

私の中の普通。

政治と宗教とプロ野球の話をしない。
何となく社内に漂う不文律。
酒の席で上司の逆鱗に触れるような発言が飛び出してしまった時は
煙草を吸いながら、じっとほとぼりが冷めるのを待っています。

今回の主人公、かなりえげつなく映っているのかも知れませんが
私が思う "普通" の人間に近い人物像になったと思っています。
弱みを突いて悦楽に浸る。
誰にでもあるであろう暗い部分が上手く伝われば、と思います。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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