Blog TOP


支配★(3/5)

ある金曜日の夕方、望月の歓迎会が部署で執り行われた。
背も高く、顔も端正な彼は、部内の女性陣からとても温かい歓迎を受けていたようで
一次会が終わる頃には、若干疲れた表情を見せていた。

二次会でも行くかという流れになった時、俺の携帯が鳴った。
出ると、相手は客先の設計事務所。
設備に供給する電気容量が知りたいとのことだったが
電話口で答えられるような内容ではなかった。
「ちょっと・・・俺、会社戻るわ」
「はぁ?部下の歓迎会だろうが。まだまだ行くぞ」
「歓迎会は終わっただろ。後は自由解散だ」
ぶつくさ言ってくる同僚をたしなめつつ、望月に声をかける。
「あんまり無理しなくて良いからな」
「僕は大丈夫ですんで。お疲れ様です」

飲み会の余韻を引きずりながら、会社に戻り、資料をチェックする。
どうやら提出した図面から数値が抜けていたらしく、完全にうちのミス。
早急な対応が必要だった。
「申し訳ありません、お手数かけまして」
「いえいえ、こんな時間に回答いただいて、助かります」
「今後とも、宜しくお願いいたします」
ふぅ、と一息つく。

「まだ、いらっしゃいましたね」
振り向くと、望月が立っていた。
「何かお手伝いできればと思って」
「ああ、ありがとう。でも、もう終わったよ」
「そうでしたか」
部署の奴らは、どうやら主役抜きで楽しんでいるらしい。


会社からの帰り道。
もう大分遅い時間ということで、歩道橋を歩く人影も少ない。
「一服していきませんか?」
「煙草吸うんだっけ?」
「ええ、たまに」
そう言う望月と共に、公園へ降りる。
相変わらず水銀灯は点滅していて、その向こうに先客がいるのが分かった。
近づいていくと、その顔に見覚えがある。
あの時、望月と一緒にいた男だった。

「彼、覚えてます?」
どういうべきなのか迷っている内に、望月は畳み掛けるように言う。
「あの時、見ましたよね。彼、僕のセフレなんです」
は?セフレ?いや、あいつもお前も男だろ?
混乱しながら、怪訝な顔で振り返ると、望月は不気味な笑みを浮かべていた。

俺に疑問を呈する時間は無かった。
表情から怯んでいると察したのか、望月は俺の首に腕を回し、締め付けて来る。
苦しさで、声は出なかった。
そのまま、木立の中へ引きずり込まれる。
大きな木を背にし、背後には望月が、正面には、望月の "彼" が立つ。
「手錠と足かせ、つけちゃって」
望月の声が、頭の後ろからする。
新幹線が通り過ぎていく音が、やたら遠くに聞こえる。
気を失わないのが不思議なくらい、心の中を恐怖が支配していた。

腕の力が弱まる替わりに、俺の口は望月の手で塞がれる。
「あんまり抵抗しないんですね」
何処か可笑しそうに、そう言う。
男二人に挟まれ、手も足も動かせない状況で、どう抵抗できるというのだろう。
力にそれほど自信があるわけでもない。

「係長、僕のものになって下さいよ」
何を言っているのか、分からなかった。
俺は端から男には興味も無いし、今まで周りにそう言った人間もいなかった。
彼は俺の部下で、俺は彼の上司。
それ以上の関係は、何も無かったはずだし、求めていなかったはずだ。
なのに、何故、こうなる?
これからされるであろう恐ろしい予感の中で、俺はますます混乱する。

「って、いきなりそんなこと言っても無駄だと思うんで」
いつもとは明らかに違う口調だった。
「先に、快感を味わってもらって、それから、また聞きますね」
そう言うと、正面に立った彼がかがみこみ、俺のベルトを外し始めた。
本気か?
しきりに首を振ると、望月の腕に力が入る。
「あんまり暴れると、歯が当たって怪我しますよ」

□ 06_支配★ □   
■ 1 ■   ■ 2 ■   ■ 3 ■   ■ 4 ■   ■ 5 ■   
>>> 小説一覧 <<<

コメント

非公開コメント

Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

*** Link Free ***



>> 避難所@livedoor
Novels List
※★が付く小説はR18となります。

>>更新履歴・小説一覧<<

New Entries
Ranking / Link
FC2 Blog Ranking

にほんブログ村[BL・GL・TL]

駄文同盟

Open Sesame![R18]

B-LOVERs★LINK

SindBad Bookmarks[R18]

GAY ART NAVIGATION[R18]

[Special Thanks]

使える写真ギャラリーSothei

仙臺写眞館

Comments
Search
QR Code
QR