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表裏-罪-★(4/5)

こんな日を、人生で最悪の日、と言うんだろうか。
話したところで信じて貰えるはずも無いことは、大会議室に並んだ面子の態度で明らかだった。
それでも、俺は彼との関係を全て話した。
何処で出会い、どんな時間を過ごしたのか。
日の目を浴びる必要の無かった、裏の顔。
誰とも目を合わせることなく、ただ淡々と、言葉を並べた。
部屋を出る際に視界の端に入り込んだ、蔑むような、歪んだ表情。
エレベーターに向かうことも出来ず、非常階段の踊り場でしゃがみ込んだまま、動けなかった。

戻らない俺を探しに来たのは、箕輪課長だった。
「こんなところに、いたのか」
「・・・すみません、すぐ、戻ります」
上から、何らかの報告があったのだろう。
側に屈みこんだ彼は、俺の肩に手を乗せて、呟いた。
「すまんが、助けてやれそうに無い」

社内の人間で、彼と最後に会ったのは、俺だった。
身元を知らなかったとは言え、付き合いは一年近くも続いていた。
しかも、金銭の授受も、確かにあった。
ただ、疑いはあっても確証は無い。
罪には問わない代わりに、人員整理という名を冠した解雇の方針が決まったと言う。
「オレの同期で、設計事務所に移った奴がいる。そいつに、声、かけてみるつもりだから」
「最後まで・・・ご迷惑おかけします」
「悪いのは、君じゃない。それは、忘れるな」
「ありがとうございます・・・」

フロアに戻ると、室井が心配そうな顔で近づいて来る。
「何があったんだ?」
「別に・・・大したことじゃないんだ」
何処まで話が出回っているのか、分からない。
周りの人間が、好奇の目で自分を見ているような気分になってくる。
「リストラの、話」
「リストラ?お前が?」
「今回の事件で資金繰りがきつくなったから、人員整理をするんだってさ」
「他に辞めさせるような奴、幾らでもいるだろ?」
「上が決めたんだ、逆らえないよ」

入社して、5年目。
やっと一通りの設計もスムーズに出来るようになって来た。
今更、他の会社に行ったところで、役に立てるんだろうか。
崩れ落ちそうな心に、不安が圧し掛かる。
俺は、もう、ダメかも知れない。


糸が切れたような俺の様子は、誰の目にも明らかだったのだろう。
一部始終を知る上司は、定時で帰る様にと指示を出してきた。
逃げるように会社を後にする。
こんな時間に会社を出ることは、滅多に無い。
見慣れない景色に、孤独感が募る。
いつも乗る電車とは、違う路線に乗った。
向かったのは、昔一度だけ訪れたことのある、郊外の公園。

夜も6時を過ぎ、冬に差し掛かった公園はすっかり人の気配を失っている。
公衆便所の灯りだけが、違和感を覚えるほどに明るく見えた。
チカチカと点滅を繰り返す街灯の下のベンチに腰掛ける。
視界に映るのは、不気味に揺れる木々の影。
どのくらい経ってからだろう。
背後から近づいてくる人の気配。
「どうした、兄ちゃん。誰か、待ってんのか?」
振り返ることなく、その声に答える。
「・・・あんたを」
気配が、すぐそこまで迫る。
耳元に唇が滑り、興奮を忍ばせた吐息がかかった。
「ふ~ん・・・そう。そりゃ、奇遇だね」


喉の奥を突くモノは、その勢いを緩めること無く動き続ける。
前髪を掴まれ、ひたすら蹂躙される苦しさに、空虚な気分が満たされて行くようだった。
吐き気を催しそうになる程、身体が熱くなる。
卑しい笑みを浮かべながら奉仕を強要する男に、縋るような視線を投げた。
「口ん中犯されて、嬉しいのか?」
呻き声で、その問に答えると、動きは激しさを増していく。

自らのネクタイで両手の自由を奪われたまま、身障者用のトイレの床に膝立ちになる自分。
あの会議室の中に比べれば、惨めさは微塵も無い。
ぶれる頭を押さえるよう背後に立つ別の男の手が、ワイシャツの首周りから、服の中に入ってくる。
肩口を滑り、昂りを露わにした突起を指で擦る。
「すげぇ勃ってんじゃん」
より強い刺激を求めるように、身体を捩った。
その挙動が、男たちの興味をそそったのか。
無理矢理開かれたワイシャツから、幾つかのボタンが弾け飛んだ。
中に着ていたTシャツがたくし上げられ、上半身が空気に触れる。
「どうして欲しいんだ?ん?」
声を合図に、口を塞ぐいきり立ったモノが抜き取られていく。
痺れる唇が震え、性欲の味が混ざる唾液が口の端から垂れる。
「やらしい乳首してんな。相当弄られてるんだろ」
俺の前に立つ男が、前屈みになったままで乳首を指で弾く。
「う・・・」
「とんだ変態、掴まえたもんだな」
「ほら、ちゃんとねだってみろよ。変態らしく」
後ろの男が、そう耳元で囁く。
自尊心が邪魔をすることなく、下劣な欲求が口から出て行った。
「俺の恥ずかしい乳首、いっぱい、虐めて下さい」

□ 44_表裏-罪-★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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