確信★(7/7)
今更のように湧いて来た恐怖心が、唇を震わせる。
そんなもの、入る訳、無い。
深々と突き立てられた中指すら、動かされる度にピリピリと痛む。
「随分きついな。精々、2本が良いとこか?」
下衆な表情を浮かべる男の手には、薄い蛍光色の細いアナルスティック。
相変わらずうな垂れたままのモノが、その柔らかい感触の物体で突付かれる。
屈辱に耐えながら、歯を食いしばる。
こんなはずじゃない、そう思っても、指を抜かれる瞬間の刺激に、思わず息が荒くなった。
両足を上げられた格好で固定され、尻が軽く宙に浮く。
玩具の先端が穴に入り込んでくると、無意識に身体が強張った。
「ほら、力抜けよ」
彼の手が、尻を力任せに叩く。
その痛みに瞬間抵抗が薄れ、物が奥まで入り込んできた。
「いっ・・・」
裂けるような痛みと、異物感。
冷や汗が、首筋を寒くさせる。
ローションを垂らされながら、ゆっくりと出し入れされる。
動きはスムーズになっていくのに、苦痛はより増していく。
苦悶で歪んだ俺の顔は、彼の心を更に残酷な方向へ傾けたのだろうか。
引き抜かれていく一本の脇に、もう一本、淡い黄色の物体が添えられる。
「そん、な・・・む、り」
初めて口にした懇願に、彼は口角を上げるだけの笑みで答えた。
悲鳴は声にもならなかった。
逃れるように伸びた身体は、至る所に付けられた拘束具に引っ張られる。
目を閉じ、黒いはずの視界が、俄かに赤く染まるようだった。
「ちゃんと、根元まで飲み込めるじゃねぇか」
自分が置かれた状況を、彼の言葉で知らされる。
早く痛みが麻痺して欲しい。
そんな甘い考えが、再び聞こえる音で砕かれる。
鞭の先が、顎を捉えた。
「堕ちて来いよ、さっさと」
やっと痛みが引いたはずの腹に、新たな赤い傷が付けられていく。
折り重なる責め。
快感とは程遠い。
それなのに、行き場を失くした逃げ惑う感情が、一所を刺激する。
「やっぱ、こうじゃないとな」
しなやかな物体が、頭をもたげ始めたモノを弄る。
辛苦の中に、一条降りてくる快楽の糸。
縋って、良いのか。
「楽しそうじゃん。オレも、混ぜてよ」
突然聞こえてきた言葉に、意識が覚める。
聞き慣れた声に、聞き慣れない口調。
霞む視界の中に、もう一人の男がいた。
その瞬間、二人に何があったのか、俺には分からなかった。
腕で首を締められたらしい男は、苦しげな呻き声を上げる。
背後の男は、冷酷なトーンで、一言だけ発した。
「殺してやろうか」
抱えられた男の足が、床から離れていく。
必死で命乞いをしているような、言葉にならない声が聞こえて来る。
声が殆ど無くなる頃、男の身体は床に崩れ落ちた。
「消えろ、今すぐ」
蹴り上げられた身体は、そのまま転がり、やがてよろよろと起き上がる。
逃げるように出て行く男の背中に向かって、彼は最後の一言を投げた。
「二度目は無いからな」
異物が取り除かれ、拘束を解かれる。
安心感と共に襲い来る、身体中の痛み。
優しく頬を撫でる手に、自らの手を添えることも出来ないくらい、酷い倦怠感。
薄い視界の中に、切なげな表情が映る。
「ごめん・・・こんな・・・」
軽く顔を上向かせ、口を小さく開いた。
意図を汲み取ってくれた彼は、その震える唇を近づけ、幾度と無く重ねてくれる。
その感触に、身体が癒されるようだった。
俺の身体を貶めた男の行為。
恋人とのプレイとは全く違う、残虐な時間。
それによって目覚めた、彼の欲望。
男の言う通り、俺が彼にしていることは、只の真似事なのかも知れない。
「イツキは・・・俺で、良いの?」
まっすぐに俺を見つめる優しい瞳に、ふと影が差す。
「何・・・言ってるんだ」
「俺で、俺がしてることで、満足してる?」
それ以上の言葉を遮るよう、再び彼の唇が俺の口を塞ぐ。
「オレが求めてるのは、オレの身体が欲するものじゃない」
潤んだ目が、レンズの向こうで鈍く光った。
「君がしてくれることを、求めてるんだ。だから、君じゃなきゃ、ダメなんだ」
自由を奪われた身体を、そっと唇で愛撫していく。
微かに震える瞳を見つめながら、顎に手をかけ、視線を交わす。
場の空気に知らず知らず興奮しているのか、手にした赤い蝋燭が、掌の汗で僅かに滑る。
火を点された芯が、チリチリと小さな音を立てた。
期待を映した脅えるような表情が、心を、身体を昂らせる。
やっと辿り着いた結論。
愛しているから、その身体を虐げる。
愛しているから、その咎を受け入れる。
その感情を刻み込むよう、俺は彼の身体を傷つける。
□ 42_確信★ □
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そんなもの、入る訳、無い。
深々と突き立てられた中指すら、動かされる度にピリピリと痛む。
「随分きついな。精々、2本が良いとこか?」
下衆な表情を浮かべる男の手には、薄い蛍光色の細いアナルスティック。
相変わらずうな垂れたままのモノが、その柔らかい感触の物体で突付かれる。
屈辱に耐えながら、歯を食いしばる。
こんなはずじゃない、そう思っても、指を抜かれる瞬間の刺激に、思わず息が荒くなった。
両足を上げられた格好で固定され、尻が軽く宙に浮く。
玩具の先端が穴に入り込んでくると、無意識に身体が強張った。
「ほら、力抜けよ」
彼の手が、尻を力任せに叩く。
その痛みに瞬間抵抗が薄れ、物が奥まで入り込んできた。
「いっ・・・」
裂けるような痛みと、異物感。
冷や汗が、首筋を寒くさせる。
ローションを垂らされながら、ゆっくりと出し入れされる。
動きはスムーズになっていくのに、苦痛はより増していく。
苦悶で歪んだ俺の顔は、彼の心を更に残酷な方向へ傾けたのだろうか。
引き抜かれていく一本の脇に、もう一本、淡い黄色の物体が添えられる。
「そん、な・・・む、り」
初めて口にした懇願に、彼は口角を上げるだけの笑みで答えた。
悲鳴は声にもならなかった。
逃れるように伸びた身体は、至る所に付けられた拘束具に引っ張られる。
目を閉じ、黒いはずの視界が、俄かに赤く染まるようだった。
「ちゃんと、根元まで飲み込めるじゃねぇか」
自分が置かれた状況を、彼の言葉で知らされる。
早く痛みが麻痺して欲しい。
そんな甘い考えが、再び聞こえる音で砕かれる。
鞭の先が、顎を捉えた。
「堕ちて来いよ、さっさと」
やっと痛みが引いたはずの腹に、新たな赤い傷が付けられていく。
折り重なる責め。
快感とは程遠い。
それなのに、行き場を失くした逃げ惑う感情が、一所を刺激する。
「やっぱ、こうじゃないとな」
しなやかな物体が、頭をもたげ始めたモノを弄る。
辛苦の中に、一条降りてくる快楽の糸。
縋って、良いのか。
「楽しそうじゃん。オレも、混ぜてよ」
突然聞こえてきた言葉に、意識が覚める。
聞き慣れた声に、聞き慣れない口調。
霞む視界の中に、もう一人の男がいた。
その瞬間、二人に何があったのか、俺には分からなかった。
腕で首を締められたらしい男は、苦しげな呻き声を上げる。
背後の男は、冷酷なトーンで、一言だけ発した。
「殺してやろうか」
抱えられた男の足が、床から離れていく。
必死で命乞いをしているような、言葉にならない声が聞こえて来る。
声が殆ど無くなる頃、男の身体は床に崩れ落ちた。
「消えろ、今すぐ」
蹴り上げられた身体は、そのまま転がり、やがてよろよろと起き上がる。
逃げるように出て行く男の背中に向かって、彼は最後の一言を投げた。
「二度目は無いからな」
異物が取り除かれ、拘束を解かれる。
安心感と共に襲い来る、身体中の痛み。
優しく頬を撫でる手に、自らの手を添えることも出来ないくらい、酷い倦怠感。
薄い視界の中に、切なげな表情が映る。
「ごめん・・・こんな・・・」
軽く顔を上向かせ、口を小さく開いた。
意図を汲み取ってくれた彼は、その震える唇を近づけ、幾度と無く重ねてくれる。
その感触に、身体が癒されるようだった。
俺の身体を貶めた男の行為。
恋人とのプレイとは全く違う、残虐な時間。
それによって目覚めた、彼の欲望。
男の言う通り、俺が彼にしていることは、只の真似事なのかも知れない。
「イツキは・・・俺で、良いの?」
まっすぐに俺を見つめる優しい瞳に、ふと影が差す。
「何・・・言ってるんだ」
「俺で、俺がしてることで、満足してる?」
それ以上の言葉を遮るよう、再び彼の唇が俺の口を塞ぐ。
「オレが求めてるのは、オレの身体が欲するものじゃない」
潤んだ目が、レンズの向こうで鈍く光った。
「君がしてくれることを、求めてるんだ。だから、君じゃなきゃ、ダメなんだ」
自由を奪われた身体を、そっと唇で愛撫していく。
微かに震える瞳を見つめながら、顎に手をかけ、視線を交わす。
場の空気に知らず知らず興奮しているのか、手にした赤い蝋燭が、掌の汗で僅かに滑る。
火を点された芯が、チリチリと小さな音を立てた。
期待を映した脅えるような表情が、心を、身体を昂らせる。
やっと辿り着いた結論。
愛しているから、その身体を虐げる。
愛しているから、その咎を受け入れる。
その感情を刻み込むよう、俺は彼の身体を傷つける。
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コメント
小説の楽しみ
便乗してリクエストして宜しいでしょうか?
完成されて完結している小説の楽しみ、続編の楽しみ、小説の楽しみ方にも色々ありますよね。
名探偵ホ/ームズも滝壺に落ちた筈なのに、読者の嘆願により作者ド/イルはホ/ームズを復活させてます。
『挽回』の続編、『破壊』の永岡視点、『好尚』の続編か新美の新作料理(笑)。
上記のどれかをお願い出来ますでしょうか?宜しくお願いいたします。
完成されて完結している小説の楽しみ、続編の楽しみ、小説の楽しみ方にも色々ありますよね。
名探偵ホ/ームズも滝壺に落ちた筈なのに、読者の嘆願により作者ド/イルはホ/ームズを復活させてます。
『挽回』の続編、『破壊』の永岡視点、『好尚』の続編か新美の新作料理(笑)。
上記のどれかをお願い出来ますでしょうか?宜しくお願いいたします。
忘れた頃にやってくる。
リクエスト、ありがとうございます。
これでネタ不足解消・・・もとい、書き続ける気力が湧いて参ります。
ところが、短い盆休みだったにも拘らず、何故だか筆が進みまして
だいぶストックが貯まっている状態になっております。
頂いたリクエストを公開できるのは、恐らく2ヶ月程度先になるかと思いますが
あまり過度な期待をなさらず、お待ち頂ければと思います。
これでネタ不足解消・・・もとい、書き続ける気力が湧いて参ります。
ところが、短い盆休みだったにも拘らず、何故だか筆が進みまして
だいぶストックが貯まっている状態になっております。
頂いたリクエストを公開できるのは、恐らく2ヶ月程度先になるかと思いますが
あまり過度な期待をなさらず、お待ち頂ければと思います。