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確信★(6/7)

「この間は、どうも」
思いも寄らない再会は、彼が出張から帰ってくるという日のことだった。
客先との打合せから、待ち合わせ場所に向かおうと歩いていた駅前近く。
偶然、前からやってきた男が、声をかけてきた。
「・・・どうも」
「会社、この辺なの?」
「いえ、客先での打合せだったので」
「もう仕事終わりなら、飯でもどう?」
「・・・え?いえ、折角ですが、これから約束が・・・」
唐突な誘いに対して怪訝な表情を浮かべる俺に、彼は顔を近づけて呟いた。
「樹とオレが、どういう関係なのか、知りたいだろ?」

男に連れて来られたのは、俺がイツキに連れられて来たのと同じ場所。
心の奥に燻る嫉妬の相手が、隣に立つ男だと気がついたのは
建物の近くの見慣れた風景が目に入ってすぐだった。
男同士でも入ることが出来る、SM専用のラブホテル。
人通りの殆ど無い暗がりの路地に足を止めた彼は、突然俺の胸倉を掴み、言った。
「お前みたいな男が、あいつを満足させられるとは、思えないね」
「は?」
「素人がままごとみたいなSMやってたって、楽しくないだろ?」
「・・・そんなの、あんたに関係ない」
「オレが、勉強させてやるよ」
温和な顔に、不気味な影が差す。
背筋が凍った身体に、彼の拳がめり込んだ。
膝が折れ、地面についたところで腹を蹴り上げられる。
痛みに呻く俺に、男は頭上から言葉を浴びせた。
「愛だの恋だの、つまんねぇこと言ってんなよ?」
彼の足が顔面を蹴り上げ、意識が飛ぶ。
悔しい。
そんな気持ちが、眼前のアスファルトと共に薄くなっていく。


痛みで消えた意識を取り戻したものも、痛みだった。
いつもなら被虐願望を抱く恋人の自由を奪う、拘束台。
その上に乗せられた俺の身体は、ワイシャツの前がはだけられた上半身を無防備に晒していた。
細く長い鞭が、振り下ろされる。
声も出ないほどの痛みが、足先から脳天までを駆ける。
揺らぐ視線の先に、愉しげな表情の男が立っていた。
ネクタイを僅かに緩めただけの姿に、全く不釣合いな物体を手にしている。
「これは、乗馬用の鞭でね。相当痛いだろ?」
更なる打撃に、抗う術も無く、叩きのめされる。
恐怖すら感じられない程、脳の中が苦痛に支配された。
「良い顔するなぁ。加虐心を煽るよ、君の表情は」
そう言って、彼は腕を振り上げる。

やがて、鞭が立てる風切り音だけで、身体が震えるようになる。
痛みで人を支配することは、思った以上に簡単なことなのかも知れない。
滲む視界には、俺の姿を満足そうに見る男と、黒く細い物体。
徐々に麻痺していく身体と思考の中で、俺は一つの結論に辿り着いた。
こんな行為に、愛なんて、必要ないんだ。


腹を擦る男の手の感覚が、殆ど感じられない。
視線を落とすと、おびただしい数のミミズ腫れが浮いた身体が目に入った。
「流石に、鞭じゃ勃たないか?」
「・・・ったり、まえ、だ」
男の手が、俺のベルトにかかる。
一瞬の表情の強張りさえ、彼には欲望の糧になる。
躊躇無くスラックスと下着が膝上まで下ろされ、萎れたモノが顔を出した。
しばらくモノを弄った後、その手が尻の方へ入り込んでくる。
僅かに動く腰周りを、手を避けるように捩ると、彼はその意図を察知したようだった。
「ケツは経験無いのか。そりゃ、調教し甲斐があるな」

懇願を口にすることは、出来なかった。
抵抗する度に立つ金属音だけが、虚しく室内に響いた。
下腹部に、生温い液体が纏わり付いていく。
尻の割れ目を指が辿り、穴を解すように指が動く。
彼の手には、見慣れた器具。
腰の下に差し入れられたノズルが穴の中に捻じ込まれ、直後に液体が逆流してくる。
「気持ち良くなる前に、ちゃんと綺麗にしないとな」
酷い違和感。
虚ろな目をして受け入れるイツキの顔が浮かぶ。
やっぱり俺は、彼とは、違う。

漏れ出て行く液体を抑えようとすると、いたぶられた腹筋が軋む。
「ぐずぐずすんなよ」
拒絶を示す俺の身体を見下ろしながら、彼は手を下腹部に食い込ませていく。
「ぐっ、う・・・」
呻き声と共に、肛門から洗浄液が噴き出した。
「スカトロ趣味は無いんでね。長々付き合ってらんないんだよ」
そう言いながら、彼は再度、洗浄液を腸内に押し込む。
情けなさと恥ずかしさは、ほんの少しずつ、俺の身体の抵抗を削り取って行った。

□ 42_確信★ □
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コメント

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初志貫徹、できず。

コメント頂き、ありがとうございます。
非公開とのことでお返事を差し上げるかどうか迷いましたが
お話させて頂きたい話題がございましたので、返信させて頂きます。

私の書く小説については、基本的に続編を書かないというのが
このblogを始めた時に自ら設けた決まりごとでした。
続編や派生物は、正直言って、書くのがとても楽です。
登場人物や舞台や雰囲気が出来上がっている訳ですから、当然なのですが
それに甘んじてしまうと、きっと続き物ばかりになってしまうと言う
怠惰な自分を戒める為の規則として、守ってきました。

ですが、最近のネタ不足の折、また、少し前に同じようなご意見を頂き
恐らく1ヶ月先くらいになりますが、ある話の別視点物を公開させて頂く予定です。
それを期に、続き物も解禁してしまおうと考えております。
もちろん、閲覧者様からご意見頂いた物に限り、ですが。

今回お話頂いた小説についても、公開時期はお約束できませんが
続編を書かせて頂きたいと思います。

長くなりましたが、残暑厳しい折、お身体には十分お気をつけ下さい。

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幸せ者です。

ご返信頂き、ありがとうございます。
元々自己満足で書き始めた文章ですので
いろいろとご意見を頂けるのは大変幸せなことだと思っています。
これからも、どうぞ遠慮なく我が侭を言ってやって下さい。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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