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光明★(5/8)

店からホテルまでは、歩いて5分程度。
肩を貸すには身長差があり過ぎた。
彼の腰に手を回すように抱きかかえながら、引き摺るようにゆっくり歩みを進める。
「もうちょっとなんで、頑張って下さい」
細かな息を吐きながら、うな垂れる彼は小さく頷いた。

ホテルの部屋のドアを開けようとした時、不意に彼の膝が折れる。
床に座り込むような格好になり、支えていないと倒れてしまいそうだった。
彼の腕を自分の首に回す。
「少しだけ、力入れてて下さいね」
その呟きが彼に届いたかどうかは分からなかったけれど
足でドアを押さえながら、その身体を両手で抱き上げた。

思ったよりも重い。
身体に殆ど力が入っていないからだろう。
ベッドまでが随分遠く感じられた。
そっと身体を横たえ、靴やスーツを脱がしていく。
眼鏡を外してネクタイを緩めたところで、タオルを取りにユニットバスへ向かう。
濡らしたタオルを目の辺りに被せると、彼の呼吸が幾分落ち着いてくる。

「ホント、ごめん」
本間さんが口を開いたのは、部屋に戻ってから30分ほど経ってからだった。
「落ち着きました?」
「うん、なんとなく」
ソファから立ち上がり、ベッドの側にしゃがみこむ。
タオルの下から覗く目は、相変わらず弱弱しく、辛そうだった。
「あんまり、無理しちゃダメですよ」
「分かってるんだけど。ま、これも、仕事だからね」
「水か何か、要ります?」
「ちょっと、欲しいかな」
冷蔵庫の中に入っているミネラルウォーターを取り出し、彼に渡す。
上半身を起こした彼を、背後に座って支えた。
一口水を呷る彼の体温と鼓動を、腕を通して感じる。
溜め息をつくと同時に力の抜けた身体が、俺に寄りかかって来た。
「阿久津君がいてくれて、助かったよ。ありがとう」

彼は、俺に身体を預けたまま、自ら服を脱ぎ出す。
「・・・手伝います?」
「いや、大丈夫」
震える手が、ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外す。
おぼつかない動きを助けるよう、捩れる身体に纏わりつく衣服に手を伸ばし、背後から抜いた。
「情け無いな。この歳になって、他人に服脱がして貰うなんて」
「仕方ないですよ」
ベルトに手をかけながら、彼は身体の向きを変え、ベッドの外に足を投げ出す体勢を取る。
その前に回りこむようにベッドを降り、スラックスを足から引き抜いていく。
彼の小さな身体は、そのままベッドに沈み込むよう横になった。

衣服をクローゼットに納め、彼の元へ戻る。
虚ろな目が、俺を見上げていた。
「明日、何時だっけ?」
「新幹線、昼前ですから。ゆっくり出来ますよ」
「安心したよ。まともに起きられる自信、無いや」
酒に深酔いし、意識薄弱な状態。
目を閉じる彼の姿を見て、卑劣な衝動が沸き上がる。
あれだけ自制してきたのに。
俺は、保守的な人間なんかじゃない。
人の弱みを突き、勝てる試合しかしない、卑怯者。
「本間さん」
「ん?」
ベッドの側に立つ俺の眼下には、彼の顔があった。
「・・・許して下さい」


彼の身体に馬乗りになり、右肩を押さえながら、顎に手をかける。
驚いたような表情を浮かべる彼の唇が言葉を発する前に、自分の唇を無理矢理重ねた。
左右に振れる頭を、手で制する。
自由なままの左手が俺の身体を引き離そうとしていたが、力は不十分だった。
顔が少し離れると同時に、彼の震える声が耳に響いた。
「何・・・するんだ」
慄くような表情は、言葉以上に心にダメージを与えてくる。
受け入れられるはずも無いことは、分かりきっていた。

片腕で右肩と左腕を押さえ込む。
Tシャツの中に手を入れ、痩せた上半身を撫でていく。
「こんな、正気じゃ、無い」
「そうですね」
彼の手が、俺のワイシャツの袖を掴む。
抵抗されればされるほど、興奮が奥底から噴出した。
「阿久津、君・・・やめるんだ」
思うように動かない身体、圧倒的な体格差。
彼はそれを、言葉で補おうとしている。

胸の突起を指でくすぐる様に弄る。
一瞬、防御が緩んだ。
上半身を寝かせ、彼の耳元に舌を這わせる。
徐々に肩が強張っていくのを感じながら、指の動きを早くしていく。
酒で紅潮した彼の頬が、震えているのが見えた。
「抵抗しても・・・無駄ですよ」
その囁きに彼は言葉を返す事無く、目を瞑り、眉間に皺を寄せる。

□ 40_光明★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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