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光明★(3/8)

明日の竣工検査に向けた協議は、夜遅くまで続いた。
指摘されるであろう事項を並べ、それに対する策を立てる。
ただ、ベテランが多いこの現場では、対処方法を挙げることも難しいことでは無いようだった。
営業である本間さんがそれを取り纏め、文書にしていく。
朝のうちに現場に入り、最終確認をすると言う手はずを整えて、会議は終了した。

「現場がちょっと遠いんでね」
菊川さんが、そう言って苦笑する。
「確か、ここから1時間以上かかりますよね、車で」
「そうなんですよ。営業車を出しますんで、朝7時半くらいにこちらまでお越し頂ければ」
「分かりました」
「ああ、あと・・・」
幾分申し訳なさそうな目で、彼は本間さんを見た。
「ウチの者がホテルを手配したんですが、シングル2部屋のところを、ツインで取ってしまいまして・・・」
「はあ・・・」
やはり困惑したような表情で、先輩は俺を見上げる。
そんな顔をされても困る。
下品な悦びを押し殺すように、俺はその問に答えた。
「私は・・・別に、構いませんが」


駅の近くにあるホテルの部屋は、確かにツインだった。
余裕のある作りをしているせいか、ベッドが2台あってもガランとした印象を受ける。
「随分、広いなぁ」
本間さんはそう言いながら、自らの荷物を床に置き、一人用のソファに腰掛けた。
「とりあえず明日は早いし、さっさと寝た方が良いかな」
「そうですね」
「そうだ、阿久津君、煙草大丈夫?」
「本間さん、吸うんですか?」
「夜だけね」
彼はカバンの中から煙草の箱を取り出し、火を点ける。
煙が吐き出されると共に、仄かな臭いが鼻を突いた。
「工事にいた時は、相当吸ってたんだけど。ちょっと、減らしたんだよ」
この業界、他に比べれば、まだまだ喫煙率は高い。
俺の代ではそれほど多くないが、先輩方から上の代になると、半数は喫煙者だ。

咥え煙草でネクタイを緩める姿。
俺の中の彼のイメージには無かったからか、言い知れない違和感が付き纏う。
「風呂入るなら、先に入って良いよ」
「あ、はい。じゃあ、お先に・・・」
不埒な想いが、動きをぎこちなくする。
それを悟られない内に、逃げるようにユニットバスの中へ入った。


部屋と違って、ユニットは至って普通の作りだった。
トイレ・洗面・浴槽の3点セット。
天井までの余裕が殆ど無い俺には、圧迫感が酷く
シャワーからの湯を頭から被るにも、身体を屈めなければならない。

FRPの板と内壁を隔てた向こうに、彼がいる。
心の奥に封印してきたとは言え、想い続けてきた男と同じ部屋に泊まることが出来る。
どんなに意味が無いとしても、嬉しかった。
しかし、喜びの分だけ、何も出来ないことへの遣り切れなさが大きくなる。
男同士なのに、気持ち悪い。
そんな拒絶は、もう二度と、経験したくなかった。

妄想の中で彼を汚した事は、何度もある。
嫌がる彼に、無理矢理自分のモノを咥えさせ、呻く声を愉しむ。
自慰行為を強要し、恥辱に塗れた表情を眺める。
抱き締めたり、キスをしたり、そんな恋愛的な要素は全て省く。
現実味を帯びたことを想像すればするほど罪悪感が大きくなり、興奮できないからだ。


ネクタイを外したワイシャツ姿。
背後から腕を伸ばし、口を塞ぐと共に、その動きを封じ込める。
くぐもった声の正体は、驚き、恐怖。
興奮した俺の脳裏に、罪の意識が過ぎることは無い。
ボタンを2、3個外して、その間から手を差し入れ
徐々に激しくなっていく鼓動を感じながら、ゆっくりと胸板を弄る。
首を振って無駄な抵抗を試みる彼は、けれど、その身体を解されていく。

スラックスの上からでも感じられる彼の昂り。
足の付け根から撫で上げるように股間へ手を伸ばすと、腕の中の身体が小さく跳ねる。
荒い息が、肩口にかかる彼の髪を揺らす。
ファスナーを下ろして中から彼のモノを曝け出し、焦らすように手で愛撫していくと
それは俄かに頭をもたげ始め、抑制された短い喘ぎが耳に届き始めた。
うな垂れ、自分がされている行為に打ちひしがれるような彼の姿が、更に欲望を大きくする。
扱く手の動きを早めていくと、彼の手が俺の腕を掴み、制しようと力を込める。
快感に絡め取られた身体の自制は、やがて効かなくなっていったのか
完全に勃起し、先端が粘液で塗れる頃には、彼の手は添えられているだけの存在になっていた。


手に生温い白濁した液の感触が纏わりつく。
それはすぐに、降り注ぐ湯と共に排水口へ流れて行った。
ユニットバスの壁に片手をつき、呼吸を落ち着かせる。
最低な行為だと分かっているのに、止められない。
こんな想いをするくらいなら、誰も好きにならない方が、幸せなのかも知れない。

□ 40_光明★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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