夢路★(6/6)
糸が切れたように身体を支える力が抜け、背中にひんやりとした地面の温度が伝わる。
このまま官能に酔いしれていられたら。
そんな気分でいると、後ろから腕を抱えられ、身体が引き摺り上げられる。
「腰抜かすのは、まだ、早いでしょ」
目の前に、勃ちがおぼつかないモノが差し出される。
見上げると、仁王立ちになった男が、下品な笑みを浮かべながら俺を見ていた。
「一人で気持ち良くなってんじゃねぇぞ?」
無駄な抵抗をする必要は無い。
咽返る様な臭いが、まともじゃなくなっている脳を激しく揺さぶった。
鼻が潰れるほどの激しい腰使いが、口の中を嬲っていく。
えずきながら、逃げ場の無い苦痛に耐える。
絶え間ない悲鳴が見物客たちの興奮を促していたのだろうか。
薄くなる意識を呼び戻したのは、何処からともなく降り掛かってくる精液の感触。
咥えられるのを待てない男たちが、自ら欲求を発散しているらしかった。
身体中を汚していく白濁液。
男の威勢の良い喘ぎと共に、口内も生臭い物で満たされる。
気道が確保できないまま、口から吹き出た液体が目の前を白く染め
得も言われない快感に巻き込まれながら、意識が薄くなっていった。
曖昧な時間の中で、一体何本のモノを口に含んだのだろう。
知らない間に自分の身体の昂りは発散され、けれども狂乱の時間は終わらない。
ただひたすらに、男たちと欲望を貪り合う夜が過ぎて行く。
生温い水が、勢いよく頭の上からかけられる。
夢から覚めやらぬ、そんな気分で見上げた風景は、僅かに白んだ空に浮かぶ木々と一人の男。
あらゆる物理的拘束から解放された身体は、未だ肉体的な痛みに縛られていた。
男は何も言わず、その顔に複雑な笑みを浮かべながら
元の色が分からないほどになった衣服を脱がし、身体を丁寧に拭いてくれる。
至る所に残る痣や腫れが、自分の身に降り掛かったことを思い起こさせた。
こうなることは、分かっていたのかも知れない。
彼に差し出された服に、ぎこちなくしか動かない身体を収めていく。
少しサイズが大きいのは、きっと、俺よりも大柄な彼の服なのだからだろう。
「立てるかい?」
そう言いながら差し出された手を掴まなければ、立ち上がることも出来ないくらい
身体は疲れと痛みで弱っていた。
彼の肩を借りながら、公園の中を歩く。
真夜中に見せた不穏な雰囲気は、顔を出しつつある朝日と共に消えていくようだった。
車に乗り込み、シートに身を預ける。
反対側のドアから乗り込んだ彼は、すぐにエンジンをかける事無く、俺に視線を向けていた。
虚ろな視界の中の彼の姿が大きくなる。
熱を帯びた彼の手が頬に触れ、擦れて痛む唇が柔らかい感触に包まれた。
男との、初めての口付け。
思いも寄らないほどの、淡い柔らかさ。
程なくして、傷を癒すように、その舌が唇をなぞって行く。
優しい官能が、危なげな夢を覚まさせる。
急に現実に引き戻された感情が、目を潤ませ、世界を歪ませた。
子供をあやす様に、彼は俺の頭を撫でながら呟いた。
「ごめん。取り返しのつかないこと、させたかな」
欲望が、転がり落ちるように醜くなっていることは、分かっていた。
自分でも怖くなるほどの情動を抱えるのに、耐えられなくなったのかも知れない。
男の肩に手をかけると、彼は俺の身体を抱き締めてくれた。
「怖がらなくて良い、オレは君の手を放したりしないから」
彼に導かれるように堕ちた、深い闇。
漂う先に、身を任せる場所がある幸せ。
強くなる腕の力が、それを実感させてくれた。
彼との関係も、淫らな秘め事も、何ら変わること無く続いている。
一つだけ変わったことは、彼との繋がりを常に感じていること。
時に縋るように、時に試すように、眼差しを交し合う。
快楽でもたらされた微睡む心を、彼の唇と体温が醒ましてくれる。
「もっと、俺を・・・見て」
「見てるよ。いつでも、君だけを見てる」
未だに、名前すら知らない関係。
それでも俺は、覚める事が約束されている夢を見る為に、今夜も彼の車に乗る。
□ 38_夢路★ □
■ 1 ■ ■ 2 ■ ■ 3 ■ ■ 4 ■ ■ 5 ■ ■ 6 ■
□ 60_慙愧★ □ ※異性間及び同性間凌辱・露出表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
■ 1 ■ ■ 2 ■ ■ 3 ■ ■ 4 ■ ■ 5 ■ ■ 6 ■
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このまま官能に酔いしれていられたら。
そんな気分でいると、後ろから腕を抱えられ、身体が引き摺り上げられる。
「腰抜かすのは、まだ、早いでしょ」
目の前に、勃ちがおぼつかないモノが差し出される。
見上げると、仁王立ちになった男が、下品な笑みを浮かべながら俺を見ていた。
「一人で気持ち良くなってんじゃねぇぞ?」
無駄な抵抗をする必要は無い。
咽返る様な臭いが、まともじゃなくなっている脳を激しく揺さぶった。
鼻が潰れるほどの激しい腰使いが、口の中を嬲っていく。
えずきながら、逃げ場の無い苦痛に耐える。
絶え間ない悲鳴が見物客たちの興奮を促していたのだろうか。
薄くなる意識を呼び戻したのは、何処からともなく降り掛かってくる精液の感触。
咥えられるのを待てない男たちが、自ら欲求を発散しているらしかった。
身体中を汚していく白濁液。
男の威勢の良い喘ぎと共に、口内も生臭い物で満たされる。
気道が確保できないまま、口から吹き出た液体が目の前を白く染め
得も言われない快感に巻き込まれながら、意識が薄くなっていった。
曖昧な時間の中で、一体何本のモノを口に含んだのだろう。
知らない間に自分の身体の昂りは発散され、けれども狂乱の時間は終わらない。
ただひたすらに、男たちと欲望を貪り合う夜が過ぎて行く。
生温い水が、勢いよく頭の上からかけられる。
夢から覚めやらぬ、そんな気分で見上げた風景は、僅かに白んだ空に浮かぶ木々と一人の男。
あらゆる物理的拘束から解放された身体は、未だ肉体的な痛みに縛られていた。
男は何も言わず、その顔に複雑な笑みを浮かべながら
元の色が分からないほどになった衣服を脱がし、身体を丁寧に拭いてくれる。
至る所に残る痣や腫れが、自分の身に降り掛かったことを思い起こさせた。
こうなることは、分かっていたのかも知れない。
彼に差し出された服に、ぎこちなくしか動かない身体を収めていく。
少しサイズが大きいのは、きっと、俺よりも大柄な彼の服なのだからだろう。
「立てるかい?」
そう言いながら差し出された手を掴まなければ、立ち上がることも出来ないくらい
身体は疲れと痛みで弱っていた。
彼の肩を借りながら、公園の中を歩く。
真夜中に見せた不穏な雰囲気は、顔を出しつつある朝日と共に消えていくようだった。
車に乗り込み、シートに身を預ける。
反対側のドアから乗り込んだ彼は、すぐにエンジンをかける事無く、俺に視線を向けていた。
虚ろな視界の中の彼の姿が大きくなる。
熱を帯びた彼の手が頬に触れ、擦れて痛む唇が柔らかい感触に包まれた。
男との、初めての口付け。
思いも寄らないほどの、淡い柔らかさ。
程なくして、傷を癒すように、その舌が唇をなぞって行く。
優しい官能が、危なげな夢を覚まさせる。
急に現実に引き戻された感情が、目を潤ませ、世界を歪ませた。
子供をあやす様に、彼は俺の頭を撫でながら呟いた。
「ごめん。取り返しのつかないこと、させたかな」
欲望が、転がり落ちるように醜くなっていることは、分かっていた。
自分でも怖くなるほどの情動を抱えるのに、耐えられなくなったのかも知れない。
男の肩に手をかけると、彼は俺の身体を抱き締めてくれた。
「怖がらなくて良い、オレは君の手を放したりしないから」
彼に導かれるように堕ちた、深い闇。
漂う先に、身を任せる場所がある幸せ。
強くなる腕の力が、それを実感させてくれた。
彼との関係も、淫らな秘め事も、何ら変わること無く続いている。
一つだけ変わったことは、彼との繋がりを常に感じていること。
時に縋るように、時に試すように、眼差しを交し合う。
快楽でもたらされた微睡む心を、彼の唇と体温が醒ましてくれる。
「もっと、俺を・・・見て」
「見てるよ。いつでも、君だけを見てる」
未だに、名前すら知らない関係。
それでも俺は、覚める事が約束されている夢を見る為に、今夜も彼の車に乗る。
□ 38_夢路★ □
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□ 60_慙愧★ □ ※異性間及び同性間凌辱・露出表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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