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夢路★(1/6)

「今日は、何処に行きたい?」
運転席に座る彼の問いかけが、身体を更に追い詰める。
「お台場の方なんか、良いかもね。それなりに車も走ってるだろうし」
「・・・お任せ、します」
身体が熱い。
背筋を汗が流れる感覚に、意識を呼び戻される。
「ちょっと、渋滞してるのかな」
遠くに、ヘッドライトの赤い光が連なっている。
車はやがて速度を落とし、完全に停止した。
助手席側の窓が少し開いて、生温い風が入り込んでくる。

彼がスーツの胸ポケットから取り出した一つの物体。
子供の玩具のような粗雑な作りとカラーリング。
俺に見せ付けるようにしばらく弄び、その物で頬を撫でる。
緊張で、喉が揺れた。
「もう、堪らないって顔だね」
彼の指が物体の突起を押し込むと同時に、身体を駆け抜ける刺激。
思わず喉から呻き声が漏れ、上半身が前傾した。
「そんな感じ方じゃ、誰も気付いてくれないよ?」
再び物を胸ポケットにしまい込み、彼は車を発進させる。
絶え間ない振動の中、潤む車窓が流れていく。


梅雨も終わろうとしている、この季節。
殺人的な暑さと湿気が、外回りの身には心底堪える。
サボろうと画策するサラリーマンの思考は概ね似通っているようで
行きつけのビデオボックスは、昼間の2時だと言うのに既に満席だった。
仕方なく足を向けたのは、路地裏にある成人映画館。
特殊な性癖を持つ男女が跋扈すると言うイメージが強すぎて、初めは見向きもしなかったが
冒険心をそそられて一度入ってから、ここは、それほどでもないと言うことを知った。
えげつない題名を付けられたポルノ映画が、何となく空調が効いた空間で垂れ流されている。

中段の端の席に座る。
見渡すと、チラホラと座る客の殆どがサラリーマンのようで、皆一様にぐったりと座席に身を任せていた。
スクリーンでは、時代遅れの服装をした人妻が、宅配便の男に組み敷かれている。
ハスキーな女優の声が、妙に眠気を誘う。
とりあえず、2時間くらいここで暇を潰して会社に戻ろう、そんなことを考えた。

人妻と宅配便の男、人妻の夫の泥沼関係になるかと思いきや、何故か仲良く3P。
何て展開だと呆れ気味で視線を泳がせていた時、背後の席に誰かが座る気配がした。
これだけ空いているのに、わざわざ近くに座るのには訳がある。
沸き上がる不安は、すぐに的中した。
後ろから口を塞がれ、誰かの顔が耳の後ろに近づいてくる。
凍りつくような恐怖の中、男の声が耳元で響いた。
「お兄さん、こう言うの、興味ある?」
背後から回された手が、ワイシャツの上から胸を撫でる。
抵抗しようと身体を捩ると、何処からとも無く手が伸びて来て、座席に押さえつけられた。
何時からいたのか、すぐ脇の通路にしゃがみ込む男は、俺の腕を掴んだままで顔を近づけてくる。
「お、結構可愛いじゃん」
気味の悪い笑顔が、身も心も硬直させる。
ゆっくりとネクタイが緩められ、やがて解ける。
人の気配が更に増えていく。
映画はスタッフロールが流れ、終わりに近づく。
けれど、降り掛かった厄災は、これから始まる。


どうして俺なんだ。
同じようなサラリーマンは、他にもいたのに。
理不尽な事に対する答など求めることも出来ないまま、何本もの手が伸びてくる。
喉の奥から出る叫び声は、男の一言で引っ込んだ。
「あんまり大きな声出すと、皆に気付かれるよ?・・・見られたいなら、別だけど」
ワイシャツの前が開けられ、中に来ているTシャツの上から他人の体温が沁みていく。
下半身に伸びる手は、スラックスの上から太腿を撫でる。
3本立ての映画の2本目が始まったようだった。
どんなタイトルなのかも頭には入ってこない。
ただ、この時間がどういう結末を迎えるのか、それだけが頭を巡っていた。

両脇に陣取る男は、双方に近い方の俺の腕と脚を絡め取る。
露わにされた上半身を、男の舌が這って行く。
「真面目にお仕事しないとダメだな、お兄さん」
背後の男は興奮を隠しながら、穏やかな口調で語りかける。
うなじを滑る舌の感覚が、二の腕に鳥肌を立てた。
スラックスの中に入り込んだ手が、モノをゆっくり扱き出す。
首を振って足掻いたところで、何も功は奏しない。
「男にイかされるのも、そう悪いもんじゃないよ?」
そんな訳無い、そう思っているのに、執拗に繰り返される愛撫が心を揺さぶる。
頭をもたげたままのモノが空気に晒される。
心が折れるかも知れない、その恐怖が、冷や汗と共に流れた。

男の頭が、自分の股間の上で蠢いている。
上向かされた視線には、前の席から覗き込む複数の男が入ってくる。
痺れるような刺激に震える身体を、幾つもの目が捕らえていた。
「皆が、見てるぞ?」
誰かが放った一言が、不意に身体を昂らせる。
モノを咥えた男が、俺の方へ視線を送り、下衆な笑みを浮かべた。
「見られて興奮するなんて、素質あるんじゃねぇの?」

□ 38_夢路★ □
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□ 60_慙愧★ □ ※異性間及び同性間凌辱・露出表現を含みます。苦手な方はご注意下さい。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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