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暴露★(4/7)

一緒に作業をしていた後輩は、終電時間に合わせて帰した。
広々としたオフィスで、一人黙々と計算を続けてどのくらい経った頃だろう。
背後の物音に振り返ると、上司が立っていた。
「お疲れ様。岩佐君一人?」
「ええ、課長が手伝って下さると言うことなので。私だけでも大丈夫かと」
わざとらしくそう言ってみると、彼は目を細めて俺を見る。
「あまり期待されても困るよ。もう、徹夜はキツい歳だからね」

一通りの居室に対する検証が概ね完了したのは、朝の4時を迎える頃だった。
少し離れた作業机では、検証法に関する資料に目を通しながら、課長が計算書をチェックしている。
「どんな感じですか?」
「そうだね、幾つか指摘事項があるから、まとめておいてるよ」
「内装がまずい所がありましたよね」
「後は、天井高が足りない所もあるね。全体的に煙の降下時間が早いな」
そう言いながら、彼は席を立ち、資料が収められている棚へ向かう。
いつものようにワイシャツの上にカーディガンを羽織った上司の後姿。
パッとしないと思っていたその姿が、内側の闇に照らされ、変わって見えた。
「・・・課長」
「ん?」
「彼と、どんな関係なんですか?」
一冊の資料を手にしたまま、彼は何も言わず棚の前に立ち尽くす。
その態度が、俺の小賢しい優越感を刺激した。

近づく俺に向けられた視線は、何処か脅えている様だった。
「どんなって・・・ただの、知り合いだよ」
「今日も、一緒だったんですか?」
「関係ないだろう?」
立ち去ろうとする彼の腕を掴み、その身体を引き寄せる。
「彼、言ってましたよ。私の方が、課長より好みだって」
「言ってる意味が・・・」
動揺した目が、震えながら俺を見つめていた。
その顔を手を添え、自分の顔を近づける。
いい歳をした男と向き合う自分を、客観的に見ている冷静な自分がいた。
それを追い払うよう、一拍呼吸を置き、上司と唇を重ねる。
トラウマになりそうな感触が、再び、纏わりついた。


俺の身体は突き返される事無く、相変わらず彼の間近にあった。
「彼とは、こう言う関係なんですか?」
目を伏せた上司は、大きく溜め息をつく。
「それは・・・」
切ない表情が、心を追い立てた。
「ああ言う、男が、タイプなんですね。意外だな」
「君には・・・分からないよ」
「そうでしょうね」
「なら、放っておいてくれ」
上司は俺の腕を振り払い、背を向ける。
その肩に手を回し、再度抱き寄せた。
「いい加減にしないか」
「・・・彼、似てますか?私に」
身体が一瞬強張るのを、腕で感じる。
すぐ側に迫った耳に唇を近づけ、軽く挟み込む。
小さく反応する身体を、ゆっくりとまさぐっていく。
さしたる抵抗を見せることの無い彼の口から、震える吐息が漏れた。
それが、答だったのかも知れない。

棚に手をかけるよう立つ上司の身体を、その背後からゆっくりと擦っていく。
少し毛羽立ったカーディガンの感触が、彼の体温と相まって心地良い。
「こんなこと・・・やめるんだ」
「どうしてですか?彼と、いつもしてるんでしょう?」
「そう言う訳じゃ・・・」
「社内だからですか?誰も来ませんよ、こんな時間に」
スラックスの上から痩せた尻に手を回す。
押し黙る彼の下腹に手を添えて腰を突き出させると、自分の股間が軽く当たり、昂揚感が増した。
「一体、どうしたんだ・・・岩佐君」
「嫌ですか?」
スラックスの中からワイシャツを引き出し、その中に手を入れる。
熱を帯びてきている肌の感触が、現実感と興奮を呼ぶ。
「嫌だったら、抵抗して下さい」
両手で上半身をまさぐるほどに、彼の頭がうな垂れ、揺れる。
「それとも・・・私にされるの、待ってました?」

早まる彼の鼓動に引っ張られるよう、俺の気分も乱れていく。
僅かに固さを帯びた乳首を転がすように刺激すると、両肩に力が入り、浮き上がる。
しばらく指を動かしていると、深い吐息に静かな声が混ざって来た。
「こっち向いて下さいよ」
俯いた顔が、少しだけ横を向く。
悶えるような表情が、前髪の隙間から見えた。
「君、は・・・男に興味が、あるのか?」
険しい視線を向けながら、息絶え絶えに彼は問いかける。
「別に、無いですよ。・・・課長と違って」
「なら、どうして」
「隠されてるものがあると、不安なんです」
「何・・・?」
指の中の突起を軽く摘み上げると、くぐもった声をあげ、その顔が俯く。
「だから、私に、全部見せて下さい」

□ 36_暴露★ □
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□ 72_虚飾★ □
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誰でも秘密を持っている

ビートル/ズの長い題名の曲「僕と僕の猿以外は/皆秘密を/持っている」を連想しました、思わず!

思いもよらない事が暴露する瞬間って、どんな気分なんでしょう!?

高校生の時、文化祭でバンド演奏していたZ君に一目惚れ。他のメンバーが派手な衣装なのに彼は白い開襟シャツに黒い長ズボン、素足にサンダルでギターを弾いていました。
ハーフっぽい美貌で、大理石みたいなツルッとした印象でした。

時を経て最近驚いた事…。
息子が小さい頃は気付かなかったが、息子はZ君に似ている!!
夫はZ君に全然似ていません。息子は母親の私に似て、娘は父方(夫の妹に似ている)に似ている我が家。
Z君は私に似ていたのかと、今頃気付く間抜けな私です…。

さて、岩佐と夏目課長。
凄くスリリングな展開で、ドキドキします。

知らない方が良いこと。

他人の隠れた一面を知りたいと思うことは、誰しもあるのでしょうが
知らなかった方が良かったと後悔する事も、少なくありません。
秘密は秘密のままで取っておいた方が、人間関係は上手く行く気がします。

もちろん、私が夜な夜なこんな文章を書いていることは
自分以外誰も知らない、まさに墓場まで持って行くべき秘密です。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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