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黒白-陰-★(5/5)

どんなに心の中で必要だと思っていても、伝わらなければ意味が無い。
そして、恐らく彼には、言葉だけでも伝わらないのかも知れない。
あれだけ嫌悪感を抱いた行為が、頭を過ぎる。
「・・・こっち、来いよ」

ベッドを降り、再びベッドに登る。
狭い寝床の中に、彼が入ってきた。
痩せ細った身体を、腕に抱く。
少し熱を帯びた肩は、微かに震えていた。
「オレね」
「ん?」
「アニキに、必要として、貰いたい」
「してる、さ」
肩に手を添えて、少し身体を離す。
不安げに揺れる唇に、自分の唇を重ねた。
男とのキス、と言うよりも、守りたい、愛しい人間との交接。
柔らかい感触が、心に沁みた。
「アキ、俺を、気持ち良くしてくれるか?」


ベッドに横になる彼の頭が、胡坐をかく俺の股間に沈み込む。
スウェットの上から手で軽く擦られると、もどかしい感覚に襲われた。
やがて外に出されたモノに、彼の舌が滑っていく。
しばらくぶりに味わう、他人からもたらされる刺激。
ゆっくりと丁寧な快感が、全身を強張らせる。
徐々に激しくなる水音が、互いを昂らせていくようだった。

そばで蠢く身体に、手を伸ばす。
脇腹から腰を辿り、下半身へ手を差し入れた。
ビクンと身体が跳ね、くぐもった声が喉の奥から漏れる。
上目遣いで俺を見上げる表情が、堪らなかった。
「俺ばっかりじゃ、ずるい、だろ?」
サイズの合っていないジャージの上から伝わる感触が、俄かに硬さを帯びていく。
眉間に皺を寄せながら、彼は自らに与えられる快楽に身体を震わせる。

壁に身を任せ、彼の行為を受け入れる。
荒い息遣いと、自制が効かない喘ぎ声が部屋に響く。
俺の手の中にあるモノは、完全に興奮した状態にあった。
粘液に塗れた先端を親指で転がすと、それに呼応するよう、彼の舌が俺のカリを舐る。
扱く手を速めると、彼の頭の動きも激しくなっていく。
快感に支配された頭の中が、急な速さで灰色に曇る。
「あ、き・・・イく」
その瞬間、俺は絶頂を迎えた。

口の中を満たした液体を、彼は目を閉じて喉の奥へ追いやる。
満足げに微笑みながら、柔らかくなったモノを、名残惜しそうに舐め始めた。
動きが止まってしまった俺の手の上に、その手を添え、ゆっくりと動かす。
自由になった口からは、快楽に溺れる声が溢れてくる。
「あ・・・アニ、キ」
「ん?」
「オレの、こと、好き?」
「・・・当たり前、だろ」
「オレも、だい、すき」
悶えながら笑う彼は、身体を強張らせ、果てた。


単身寮と言っても、狭いスペースにベッドと簡易デスクが備え付けられただけの部屋。
それでも、自分だけの空間を得られると言うのは、気分的に大きく違った。
勤務時間も基本9時から6時と言う、通常の会社のサイクル。
残業は多かったけれど、肉体労働では無い分、疲労の蓄積も小さい。
久しぶりのキーボードの感触が、心地良かった。

「アニキ、お帰り」
アキが昼番の時には、翌朝まで一緒に時間を過ごす。
会えない期間は、彼が男たちの慰み者になっているだろうことに、心が締め付けられそうになった。
それを振り払うよう、細い身体を抱き締める。
「・・・苦しい、よ」
「いつか、一緒に、住むか」
「うん、うん。・・・楽しみ、だな」


「助けて、啓次、助けて・・・」
悪夢で目が覚める。
プログラマーとして働き始め、ネットワークの構築にも慣れて来始めた頃。
生活もやや安定し、借金の額も目に見えて減ってきた。
精神的に落ち着いて来たからだろうか。
男を腕に抱かない夜、あの日に置き去りにしてしまった、忘れたい過去が思い返されるようになった。
俺が日常を過ごす中、彼女はどんな現実を見せつけられているのか。
それでも、彼女を探す手立ては、俺には無い。

自分が犯した罪は、きっと一生、償うことが出来ないんだろう。
恋い慕ってくれる男と人生をやり直すなんて、許されないのかも知れない。
弟の手を取り、下ろせない十字架を背負って歩く足取りは、とてつもなく重かった。

□ 34_黒白-陰-★ □   
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□ 35_黒白-陽- □   
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コメント

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他人の始まり

「兄弟は他人の始まり」と言います。
男兄弟にそんな感じが多い気がします。
父の兄弟も仲が良いとは言えませんが、外部者に対しては一致団結するのがおかしい。
妬みも他人より兄弟のほうが強いようです。
父は長男ではなく気楽な立場だったのに、兄達が戦死や戦病死で次々に亡くなって、結果的に跡取りになった為、弟達にしてみれば、兄をたてるという意識が無い。その弟達も大学を卒業して公務員や新聞記者になったので僻む必要が無いと思うのに、そうならないのが兄弟のしがらみというものでしょうか。
互いに配偶者を得て、家を別に構えると益々他人になっていくんでしょうか。
そういえば、母の親戚も兄弟で遺産争いの裁判をしていた家がありました。
血縁者の兄弟と別れて、他人と家族になるのが「人間」のライフスタイルなんだと思うと、今更ながら当たり前の事が不思議に思えます。

理解できない繋がり。

私には兄弟・姉妹がいません。
だからこそ、こんな話が出来上がったのかも知れません。
周りの兄弟を持つ人たちの話を聞くにつけ
親でもなく友達でもない間柄、と言う繋がりが私には理解できず
羨ましくもあり、煩わしそうでもあり、そんな想いを抱いています。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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