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代償★(8/8)

「恥ずかしいよ・・・おじさん」
「大丈夫。どうすれば気持ち良くなるのか、見せてごらん」
「ここ・・・こうすると・・・」
「どう?」
「ん・・・きもちい・・・」
「おじさんにされるのと、どっちが良い?」
「・・・される方が、いい」
「郁真は、おじさんがいないと、ダメなのかな」
「うん、おじさんじゃないと・・・ボク、ダメだよ」


一つのベッドに、二人の男が横になる。
卑猥な行為を目的とした同様の経験は、過去に何度もあった。
でも、そう言う時は、互いの温もりや鼓動を感じる間もなく、衝動をぶつけ合うだけ。
純粋に睡眠を目的とする今とは、全く違う状況だ。

二人分の体重を受け、ベッドの軋む音が響く。
並んで横になった彼の手が、俺の身体に僅かに触れた。
ゆっくりと自分の手を差し出してみると、指が絡んでくる。
やがて二つの手がしっかり握られると、彼の声が耳に響いた。
「おやすみ」
優しい声が身体を包み込む。
徐々に睡魔に襲われる感覚が、心地良かった。


明け方近くに目が覚めた。
互いに寝返りをうっていたのか、俺は彼に背中を向けた格好で横になっている。
彼の気配で、自分が置かれた状況を思い出す。
寝息も、体温も、こんなに近くで感じているのに
彼に包まれることは出来ても、交わることは決して出来ない。
急に身体が昂るのを感じて、俺はベッドを出た。

洗面とセットになっているトイレは広くて、若干落ち着かなかった。
しかも、洗面台の前には壁一面の鏡があって、自慰行為には向かないな、と妙に冷静になる。
それでも、悶々とした気分を抱えているのは、怖かった。
自制できる自信が、無かった。

ロータンクに手を置き、前屈みの状態で、自分のモノに手をかける。
欲求を解消する唯一許された方法で、俺は身体を満足させていく。


「おじさん、きもちいい?」
「ああ・・・気持ち良いよ。上手くなったね」
「おじさんが喜ぶこと、したいんだ」
「じゃあ・・・ちょっと、ここ、舐めてみてくれる?」
「え・・・そんなとこ、汚いよ」
「大丈夫だよ。・・・なら、先に、郁真のを舐めてあげる」
「や・・・ダメ、だよ」
「・・・どう?」
「ん・・・あ」
「気持ち良さそうな、顔だね。こう言うのは、どうかな」
「やっ、やだ・・・」
「ダメ?」
「きもち、よすぎて・・・こ、わい」
「怖くないさ。いっぱい気持ち良くなって、良いんだよ」
「や、あ・・・体が、ヘンに、なっちゃうよ・・・おじさん」
「可愛いよ、郁真。もっと、おかしくしてあげる・・・」


寝室のドアからは、赤みがかった薄い光が漏れていた。
ベッドの隣に置かれた書斎机の椅子に、叔父が腰掛けている。
「ごめん・・・起こした?」
「いや、大丈夫だよ。気が付いたら、いなかったんでね」
「何、してるの?」
彼の手には、過去を繋ぎとめている指輪があった。
愛おしそうな視線を浴びる銀の物体に、不意に羨ましさが募る。
その感情を否定するように、叔父はその謂れを口にした。
「これは・・・昔、付き合ってた男の、遺品でね」
「亡くなったんだ・・・」
「ああ、交通事故で。もう、5年くらい、前になる」
「長かったの?その人と」
「そうだね。一生添い遂げられるかも知れない、そう思ってた」
しばらく指で指輪を回した後、小箱に納め、引き出しの中に仕舞い込む。
彼はベッドに座る俺に視線を移し、真剣な表情で問いかけた。
「オレは、確実に、君より先に逝く。それでも、君は良いのかい?」

歳の差が生む、逆らえない現実。
愛する人を失う辛さを知ってこその、言葉。
それでも、俺は、彼じゃなきゃ、ダメなんだ。
「構わない。その時まで・・・そばに、いて」

椅子から立ち上がった彼は、俺の隣に座り、肩に手を回す。
俺は彼の肩に顔を寄せ、目を閉じた。
「将来を大切にしたいと思うなんて、もう、オレには、無いと思ってたよ」
優しい口調で呟いたその一言が、胸に沁みた。

朝までの短い時間、俺は彼の腕に抱かれながら眠る。
想いを通じ合わせるだけでも、禁忌に触れているのかも知れない。
それ以外のことは、何もいらない、何も求めない。
だから、せめて、彼の心だけは、俺の傍に置かせて欲しい。
そう、願うばかりだった。

□ 28_代償★ □   
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□ 51_受容 □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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