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代償★(7/8)

「おじさん、ボクと、いつまでも一緒に遊んでくれる?」
「それは、出来ないな」
「どうして?ずっと一緒に、いてよ」
「大きくなったら、もっと楽しいことが、たくさんあるよ」
「おじさんとが、いい」
「郁真は、わがままだね・・・そんな悪い子には、お仕置きしないと、ね」
「やっ・・・」
「嫌じゃないだろう?」
「やじゃ、ない・・・もっと、ずっと、きもちいいこと、して」


彼に抱きすくめられ、不意に視界が暗くなる。
その肩口に頭を埋めるように、身体を預けた。
「どうして・・・どうして、オレなんだ」
震える声が、頭上から響く。
「君は・・・可愛い甥、それ以上の何ものでも、無いんだ・・・」
それは、まるで自分に言い聞かせるような口調だった。
禁忌に触れる、それが如何に大きいものなのか、叔父である彼にはよく分かっているのだろう。
「オレは、君に、何をした?」
自身を責めるような言いぶりが、辛かった。
「僕が・・・僕が、悪いんだ。叔父さんのせいじゃ、ない」

子供の頃から今に至るまで、身体はいろいろな刺激を覚えてきた。
それが積み重なるにつれ、叔父への想いと妄想が大きくなっていった。
「・・・分かってるんだ。叶えられないことも、叶えちゃいけないことも」
目の前の、薄いブルーグレーのネクタイが、再び滲んでいく。
「でも、どんなに時間が経っても、前に進めない」
腕の力が強くなる。
互いの身体の震えが、まるで共鳴するように大きくなった。
「手を差し伸べたい・・・もがく君を見るのは辛い。でも・・・」
どうしたら良い、と彼は祈るように何度も呟く。
目の前に現実を突きつけられても尚、俺の気持ちは薄れない。
妄想で欲求を満たしても、仮に、彼の手によって満たされたとしても
俺はこの場から、前に進むことは出来ないんだろう。

抱えられていた頭を、少し上に向ける。
目と鼻の先には叔父の顔があった。
俺を見る彼の目は酷く切なげで、戸惑いを浮かべている。
しばらく見つめ合った後、彼は小さく首を振った。
「・・・ダメだ。やっぱり・・・」
俺の想いが彼を苦しめる。
それが更に、俺の動きを封じ込める。


どのくらい彼の腕の中にいたのだろう。
唐突に沸き上がる不安と悲しさが、涙となって流れていく。
その間、彼は俺の頭を優しく撫でていてくれた。
思い出の中の優しい叔父の姿が、そこにはあった。

「・・・落ち着いたかい?」
静かな声が泣き疲れた身体に染みる。
「もう少し・・・このままで、いたい」
彼が僅かに体勢をずらし、密着感がより増した。
ワイシャツを通して感じられる体温が肌に溶けて、鼓動が早くなる。
「・・・許して欲しいことが、あるんだ」
「何・・・?」
「ずっと、好きで、いさせて・・・想像の中で犯されることを、許して」
背中を擦る手の動きが一瞬止まり、その手が俺の肩を強く掴む。
「君の好きにして良いんだよ。それを許すことが、オレの出来る、全てだから」

キスさえ出来ない。
刺激を求めて疼く部分に、手を触れて貰うことも出来ない。
それでも、服の上から彼の手の優しい感触が滲む。
彼が父の弟じゃなかったら。
同じ指向を持つ彼と身体を求め合うことに、何の障害も無かったはずだ。
けれど、こんなに苦しくなるほどの恋に落ちることも無かったと思う。
運命は、何て、悪戯なんだろう。


夜は大分更けていた。
帰る手段を失った俺に、叔父は泊まっていくよう提案してくれる。
シャワーを浴びると、だいぶ気分は落ち着いた。
「郁真はベッドで寝て良いから」
スウェットに着替えた叔父は、そう言ってソファに腰掛ける。
「・・・叔父さんは?」
「オレは、ここで良いよ」
寝室にあるベッドは、セミダブル。
二人で寝るのに、無理な大きさでは無い。
彼には無い衝動を持った俺と、ベッドを共にするのは戸惑いがあるのだろうか。
俺は、彼の傍らに立った。
「何も、しないから・・・隣に、いて」
小さく溜め息をつき、彼は立ち上がって俺の肩を抱く。
「全く・・・我が侭なところは、変わらないね」

□ 28_代償★ □   
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□ 51_受容 □
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コメント

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いつもドキドキ

今回のお話はいつに増してドキドキします。今まで一番好きなお話は成就でした。このお話は待てない感じでは同じクラスです。

ありがとうございます。

>saskiaさま

コメント頂きまして、ありがとうございます。

今回の結末で、ドキドキ感は上手く解消されましたでしょうか。
書き手としては、それが毎回、不安なところでもあります。

先の展開を楽しみに出来る話の構成に、精進して参ります。
これからも、ご閲覧の程、宜しくお願いいたします。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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