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充足★(3/7)

知らない道を、車は走って行く。
駅までで良いという俺を強引に押し切り、彼は自宅まで送ってくれると言う。
だからなのか、いつもとは違うルートを、ナビの画面が辿っている。
周りには、何も映っていない。
山の中の一本道を北上している、と言う事しか分からなかった。

画面上に大きな敷地の建物が見えてくる頃、突然カーブを切る。
使われなくなった工場らしき敷地に入り、車は止まった。
「どう・・・したんですか?」
不穏な雰囲気に、声が上ずる。
「降りて」
見たことも無い彼の鋭い視線に、身体が固まる。

どしゃ降りの雨が、あっという間に全身を濡らした。
俺が車を降りるのを見計らうよう、彼も続いて車を降りた。
前面を回り込むように、俺に近づいて来る。
「何、ですか?」
脅える視線が、彼の気持ちに火をつけたのだろうか。
彼は俺の胸ぐらを掴み、顔を近づける。
「手ぇ出してないから、自分は悪く無い、なんて思ってるんじゃないだろうな」
「え・・・」
「あいつらと同じ存在ってだけで、あんたも十分同罪なんだよ」
俺はどうするべきだったんだ、そう考える間もなく、彼の拳が腹にめり込んだ。
苦痛で膝が折れる。
彼の憎悪の矛先は、俺に向かっていた。


彼は、容赦無かった。
顔を殴られ、口から吐き出た血が彼の車を汚しても、気にする様子も無い。
地面を這うようにもがく身体を蹴られ、仰向けになった俺を見下ろす彼は
心底楽しそうに見えて、恐怖感が一層増した。
やめてくれと懇願する声すら、出ない。
どうしてこんな目に遭わなきゃならない、そんな思いが、痛みに吹き飛ばされる。

意識が薄くなるのを感じる頃、彼は俺の身体に馬乗りになる。
「気ぃ失うのは、まだ早いだろ?」
首元を押さえつけられたまま、俺は軽く首を振る。
冷徹なその表情が、愉快そうに歪んだ。
「同じ目に、遭わせてやろうか?」
「か、勘弁・・・し、て」
歯が震えて、言葉にならない。
首にかかる手の力が、徐々に強くなる。
息苦しさで、彼の顔が段々霞んでくる。
「首絞めながらやると、すげー気持ち良いんだって。試してみようよ」
おもむろに彼は俺のモノを後ろ手で掴み、笑いかけて来た。
そんな訳が無いという意識とは裏腹に、ゆっくりとした手の動きに、身体が痺れる。
苦しさと、微かな快感に眉をひそめる俺を、彼は満足そうに見ていた。

作業ズボンから引きずり出され、彼の手によって刺激を与えられ続けるモノには
雨が当たる奇妙な感覚が沁みていく。
息が出来ない中で、熱を帯びた顔が、雨粒で幾分冷やされる。
「気持ち良さそうな、顔しちゃって」
別人のような、越智さんの口調。
朦朧とする頭に、経験の無い快楽が広がっていく。

突然、喉のつかえが取れる。
乾いた叫び声と共に、空気が一気に肺に入って来た。
雨を吸い込み、大きく咽る。
俺の上半身が跳ねると共に、モノを扱く手が早くなる。
「ほら、イけよ」
彼の冷淡な声に、目を閉じ、歯を食いしばった。
信じられないほどの、快感が打ち寄せる。
やがて全身が痙攣し、俺は果てた。


自分の精液が纏わり付いた手が、俺の頬を撫でる。
口の中に指を突っ込まれ、気持ち悪さに吐き気がした。
生臭い匂いが鼻の中に入り込み、不快感が心を萎縮させる。
無気力になった俺の顔に、彼はその傷を負った顔を近づけ、呟いた。
「・・・あんただけは、味方だと、思ってたのに」
憎しみの表情の中に、ふと寂しげな影が宿る。
俺が悪いのか?
俺に何が出来た?
そう思いながら、適当な言い訳すら浮かばない。

彼の手が顎にかかり、その顔が首筋に埋まる。
途端、身を震わせる痛みが襲った。
うなじの辺りに歯が立てられ、思いきり噛み付かれる。
声にならない叫びが漏れる。
「や・・・め、ろ」
痛む腕で彼の身体を引き離そうと力を込めるが、硬い痛みは止まない。
気を失う一歩手前で、痛みから解放された。
彼の笑みに、枷をかけられた気分になる。
恐怖も極限を超えると、全てに屈する諦めしか、残らないんだろうか。

□ 26_充足★ □   
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コメント

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見て見ぬ振り

朝倉は結果的に見張り役をしていたのだから、車に乗ったら駄目なのにね。
無自覚でもなかっただろうに…。
衝撃で判断力が鈍っていたのか!?

ところで、東大の一部の学部が始業を1ヶ月余り送らせて5/6から開始するそうです。
遅らすのは、なんで工学部と経済学部だけなんでしょうね。
原発問題で毎日記者会見している「原子力/安全・保安院」は経済産業省の一機関。院長は東/大経済学部卒の経産官僚。
工学部には東/電から研究費を頂いている原子工学の先生方もいらっしゃいますよね。

備え有れば憂い無し。
見事なまでの危機管理。

そういえば、横須賀の米軍の第/七艦隊は早々と待避してました。さすがに、世界一の軍事力!

今回の原発からの避難地域は同心円でしてますが、実際の放射線物質は風の流れに沿って広がっています。

チェルノブイリの時も、まるで飛び地みたいに200~300キロメートルも離れた所に濃度の高い汚染地域がありました。
福島の場合は偏西風で海へ出て行く事が多い。北東風が首都圏に向かうので、この風向きの日は注意すれば良いと思います。
計画停電もある地域と無い地域があり、長引くと不公平感が出て大変だなと思います。

小心者故。

不安を煽られる毎日。
とは言え、仕事も生活も東京にあり、故郷はボロボロ。
逃げ場の無い人間にとって
小心者故の諦めは仕方の無いところなのかも知れません。

雇う者と雇われる者。
絶対的な関係性の中で、小心者の彼の行動に選択肢はあったでしょうか。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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