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帰着★(10/10)

ワイシャツの袖が、腕から静かに抜け落ちる。
Tシャツをたくし上げる掌が、脇腹を撫でて行く。
ベッドに膝立ちのままで抱き合い、上半身を触れ合わせた。
心臓の震えを、肌で感じる。
崩れたものが、少しずつ形を作っていくような、そんな気分だった。

互いに裸になり、向かい合わせでベッドに横になる。
唇を重ね、舌を絡めた。
今まで垣間見ることの無かった、同僚の表情。
言い様の無い空気が、身体の隙間を埋めていく。

微かに震える手が、俺の胸を撫でる。
その腕と交叉させるように、俺は腹から下に手を伸ばす。
硬直の雰囲気を見せるモノをそっと擦ると、奴の眉間に切ない皺が寄った。
胸の辺りに顔を寄せると、腕が俺の背中に回される。
押し付けられるように間近に迫った肌に、舌を這わせた。
やがて突起を捕らえ、そこを舐め上げる。
背中に添えられた手に、力が入る。
手の中にあるモノが、俄かに反応するのを感じた。

首に腕を回して、身体を抱き寄せた。
扱く手の動きを早めると、耳元で小さく喘ぐ声が聞こえてきた。
背中の手が滑り落ち、腰を回り、足の付け根辺りを撫でてくる。
高揚感が、言葉を押し出す。
「・・・触ってくれよ」
フッと鼻で笑うような声が聞こえた。
「そんな、甘えたこと・・・言えるんだな」
求めている場所へ、手が動く。
玉を撫で、モノの根元から触れられると、思わず背筋が伸びた。

双方の手で昂ぶりを感じ合いながら、隙間を嫌うように身体を密着させる。
首筋に、熱く湿った感触が広がった。
唾液の筋が伸びて行くのを感じながら、抑え切れない声を必死に噛み殺す。
その感触は、短く生え始めた髭をくすぐりながら、喉仏の方へ向かっていく。
軽く唇で挟まれると、苦しさと違和感で、乾いた喘ぎを吐き出させた。
「お、まえ・・・そこ、好きね」
「ん・・・何か、そそられる」
普段、他人の手が触れるような場所じゃない。
だからなのか、ただ舐められるだけでも、妙な方向へ刺激が変換されていく。


先端から染み出た汁が、モノの全体を濡らし、手を潤ませた。
「・・・口で、するか?」
「いや・・・このままで、いい」
すぐ目の前に迫る同僚の顔は、上気して赤みを帯びている。
「お前の、顔、見てたい」
きっと、俺も同じような表情をしているんだろう。
そして、俺と同じように、奴もそれに欲情しているんだろう。

自分の手の中にあるモノを、同僚の手に近づけて行く。
俺のモノから手が離れ、互いのいきり立ったモノが触れ合った。
軽く手を添えて、擦り合せる。
扱く刺激よりは小さいけれど、そこはかとない恥ずかしさが、興奮を呼ぶ。
二人の手で、互いのモノを前後から挟みこむように包み、ゆっくりと上下に動かした。
「あー・・・これ」
肩を震わせる浅沼が呟く。
「すげー、気持ち、い・・・」

手の動きが早まるにつれ、漏れる吐息が互いの顔を火照らせる。
迫る絶頂を前に、衝動的に舌を絡めあう。
小さな耳鳴りを感じ、思わず大きな息を吐いた。
瞬間、虚脱感が全身を襲う。
そんな中で、自分の精液に塗れた手に力を込め、同僚の身体を追い込む。
続くように奴の身体は僅かに仰け反り、腹の辺りに熱い液体が満ちた。

行為の後のキスは、儀礼みたいなものなんだろうか。
震える唇を擦り合わせ、満足感を共有する。
嬉しそうに微笑む眼前の顔を見て、俺は思う。
もしかしたら、ピースは、嵌るかも知れないと。


ベッドにもたれ、煙草をくゆらせている同僚を横目に、俺はベッドからシーツを引き剥がす。
「慌しい奴だなぁ」
「これじゃ、寝れねぇだろうが」
「そうだけど」
「洗濯すんのは、俺なんだから」
僅かに重みを増したシーツを丸くまとめ、洗濯機に放り込んだ。

「なぁ、我妻」
「ん?」
咥え煙草で新しいシーツを敷きながら、浅沼があの提案を再度持ちかける。
「やっぱ、ベッド大きいの買おうぜ」
「まだ言ってんの?」
「だって、狭いじゃん」
俺はわざとらしく溜め息をつき、奴を見た。
「しょうがねぇな・・・金、半分出せよ?」
「幾らでも出してやるよ」
笑う奴の口から煙草を抜き取り、大きく吸い込む。
「あと・・・」
やっと、素直になれる気がした。
「ちゃんと、毎週、来いよ?」


真夜中過ぎに床に就いたにも拘らず、何故か早く目が覚めた。
背後からは、同僚の寝息が聞こえている。
起こさないように体をまたぎ、ベッドを降りる。
テーブルに置かれた携帯を手に取り、メールを確認した。
『見つかった?』
ただそれだけの本文に、俺は返信をする。
『見つかりました』
そして、履歴を消去した。

「いつまで寝てんだよ」
薄目を開ける浅沼に、そっとキスをした。
奴は些か驚いた表情を見せた後、口角を上げて笑う。
「いいね、こう言うの」
「何、言ってんだ」

最後に嵌ったピースは、少し歪な形になったかも知れないけれど
ともかく、パズルは完成した。
俺の首に腕を絡め、キスをせがむ同僚を見ながら
洗濯が終わったら、早速ベッドを見て来よう、そんなことを考えていた。

□ 24_帰着★ □   
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杜の都

東北最大の人口百万都市仙台市のご出身だったんですね。
あまり積雪しない、文化の香る良い処と聞いています。
高校生の時に家族で、仙台市・福島県に旅行しました。
五色沼を覚えています。

親戚やご友人の皆様は、ご無事でいらっしゃいますか?心配ですね。一刻も早く救援・復旧されますようにお祈り致します。

私は関西に住んでいます。阪神淡路大震災は怖かったです。
以来、各部屋に懐中電灯があります。ヘルメットも常備しています。

この物語は『帰着』という題名にふさわしい結末だと思います。
読後感がとても良いです!

人の力。

阪神・淡路大震災が発生した時は、まだ上京前でした。
TVで燃える街を見て、戦慄したのを覚えています。
それから幾年月、見事に復興した神戸の風景を見ると
改めて、人の力の凄さを思い知ります。
復興を目指す故郷の人々にとっても、勇気付けられることでしょう。

未だに連絡の付かない友人・親戚もおります。
見慣れた景色が津波に飲まれていく光景を、映像で見ることしか出来ない状況に
自分の無力さを感じざるを得ませんが
今出来ることを、前向きに進めて行こうと思っています。

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Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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