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帰着★(4/10)

こんな使われ方は、想定して無いのに。
公園の隅にある公衆便所に設置されている、身障者用トイレ。
型は古いから、俺が実際に携わった製品では無いが、うちの会社のユニットだ。
俺の社章を認めた彼は、それを知ってか知らずか、意味ありげな笑みを向ける。
「広いし、手洗いもあるからね。君には悪いけど、こう言うのにはもってこいなんだよ」
高さの低い車椅子用の便器に、手洗いと洗面器が1つずつ。
脇には簡易ベビーベッドがついている、一般的な形式だ。

彼は慣れたように、そのベッドに荷物を置く。
「初めて、なんだよね」
俺は彼に続くように、荷物とスーツの上着を置きながら、彼を見た。
「そう、です」
「別に、ゲイって訳でもないんでしょ」
「・・・はい」
「僕がこんなこと言うのもなんだけど・・・好奇心だけで踏み込むと、火傷するよ?」
今にも崩れそうな心が、その言葉で揺さぶられる。
「それでも良いなら、おいで」
彼の手が、俺の方に差し出された。

夢か現かの、浅沼のキス。
不意に芽生えた、ちょっとした好奇心。
目の前の男は、引き返すラストチャンスを与えてくれている。
軽く息を吐き、一瞬目を閉じる。
そして、俺は彼の手を取った。


満足げに微笑む男は俺の身体を抱きしめる。
何か懐かしいような、不思議な感覚だった。
少し身体が離れ、頬に手がかかる。
近づいてくる彼の顔を直視できず、寸前で目を閉じた。
唇が一瞬触れ合い、再び重なる。
沸き上がる高揚感が好奇心の答えを覗かせていた。

しばらくすると、口の中に舌が入ってくる。
口の開きは次第に大きくなり、差し出した舌を彼の舌が柔らかく舐る。
熱い吐息が漏れ、互いの唾液で口の周りが濡れていく。
目を閉じていても分かる、女とは違う全ての感触。
俺の身体は、ぎこちないまでも、それを受け容れている。

腰に回された手が、俺のワイシャツをズボンから引き出す。
背中に冷たい感触が走り、それが背筋をゆっくりと広がっていく。
身体が軽く反ると同時に、彼の顔が俺から離れる。
目を開けると、舌の先から伸びる唾液の糸が切れるのが見えた。
もう一方の手が俺のネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外す。
2、3個外したところで、彼の頭は浅く開いた首筋へ沈んでいき、舌が這う。
ザラザラする感触に押し出されるよう、深い息が出た。


両側に手すりが設置された、車椅子用の洗面器の前に立つ。
目の前の傾斜鏡は背の高い型で、服装が乱れた俺の下半身まで映りこんでいた。
背後に立つ男が、俺のネクタイを解き、ワイシャツのボタンを下まで外していく。
「今日は、君が先だよ」
耳元でそう囁きながら、その手をTシャツの中に差し込んで来た。
幾分熱を帯びてきた手が腹から胸へ滑る。
手の動きに合わせて動くシャツの隆起が乳首の辺りで止まり、指で刺激する。
柔らかい刺激が、手すりを掴む力を強くさせた。

首筋を唇が滑り、耳たぶを甘噛みされる。
僅かに興奮を覗かせる息遣いが、耳にかかる。
細く開いた視界の先には、鏡に映る俺と、彼。
男に身体を弄ばれている姿を見て、意識が冷静になって行く。
与えられる刺激を快感と受け取って良いのか、そんな小さな葛藤が頭の中を巡った。

手が下半身へ伸びていく。
ベルトを外す気配の後、腰周りの隙間から手が入り込んで来た。
俺の身体が強張るのを感じたのか、彼は俺の頬に軽くキスをして尋ねる。
「怖い?」
恐怖、嫌悪、困惑。
様々な思いが、彼の手によって産み出され、掻き消されていく。
腕から肩に広がる震えを感じながら、俺は首を横に振る。

下着の上からモノが静かに擦られ、小さな刺激に背筋が痺れた。
根元から刷り上げられ、先端を軽く摘まれる。
その動きと呼応するように、上半身をまさぐる手は動きを早めていく。
徐々に腰が浮き、前屈みになる身体を洗面器と鏡が支える形になる。
目の前に、快感に溶け、虚ろな目をした自分の顔があった。

彼の手が、金具を外しジッパーを下ろす。
布の中のモノに他人の体温が纏わりついた。
震える息が、鏡を曇らせる。
まるで焦らすように扱く手は緩慢で、それが逆に鼓動を激しくして行く。
うな垂れる頭が彼の手によって上向かされる。
「キス、してごらん」
そんな行為に、どう言った意味があるのか。
つまらない疑問は、唐突に強くなる刺激に飛ばされて行った。

□ 24_帰着★ □   
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コメント

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ルビコンを渡る

ちょっとコメントしずらい場面ですが(笑)。

我妻が初めて逢い引きする場所が、人気の無い公衆トイレとは!それも、自分の会社の商品の身障者用トイレ!!確かに他の個室よりは広くて、スペースはあるけれども…。ホテルとか行こうと思わなかったんでしょうかね!?お金が無い訳でも無いだろうに!?
それとも、こういう狭い特殊な場所でする事で、余計に興奮するのかもね。
我妻はどMか!?(笑)。

とにかく、ルビコンの河は渡ってしまいましたから、もう、戻れませんね。

メーカーさん、ごめんなさい。

この話を思い浮かべたきっかけは
身障者用トイレのカタログを仕事中に見ていた(もちろん業務で)時でした。
いつもお世話になっているメーカーさんに申し訳無い気持ちで一杯です。
ビデオとかだと、結構良くあるシチュエーションだったのでと
一応、言い訳はしておきます。

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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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