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帰着★(1/10)

「あたし、今日誕生日なんだぁ」
年に何回誕生日があるんだよ。
「そう。いくつになったの?」
「ん?にじゅういち~」
プラス5歳ってとこだな。
「だから、プレゼントちょーだい?」
安いスーツ着てる、しがないリーマンだって分かってるくせに。
「何が欲しいの?聞くだけ聞くよ」
「ん~喉が渇いちゃったから、飲み物欲しいなぁ」
彼女の視線が、ワゴンに乗せられたボトルに向かう。
それと同時に、彼女の手が俺の手を掴み、太ももに深く入ったスリットの中へ促して来た。
「一緒に、飲もうよ?」
ストッキングの滑らかな感触を感じながら、金の為に必死だな、そんなことを思う。

「何だよユーリちゃん、こんな男に手ぇ出しちゃダメだって」
そう言いながらトイレから戻って来たのは、同期の浅沼だ。
奴の顔を見るや否や、彼女は俺から離れていく。
「プレゼント欲しいなぁ、ってお話してたの」
「じゃ、今度アフター付き合ってくれたら、何でも買ってあげるよ?」
「ほんと?じゃあね・・・」

女の子は嫌いじゃ無い。
キャバクラの雰囲気も、悪くない。
それでも、金の対価としての時間の楽しみ方が、未だに分からない。
「お前は、相変わらず女の子の扱い、下手だねぇ」
「浅沼さんは、相変わらず羽振りが良いようで」
キャバクラからの帰り道、ユーリちゃんとのアフターの約束を取り付けたらしい浅沼は
ご機嫌な調子で、俺の先を歩いていく。
「彼女なんて存在はご無沙汰だからなぁ」
「それは俺だって同じだよ」
「ああやって、たまに女の我が侭に触れるのが、楽しい訳」
「そんなもんかね」
やっぱり俺には、理解できない。


「先にシャワー浴びるわ」
「お前、家主より先に風呂入る奴がいるかよ」
「固いこと言うなって」
「そろそろ、家賃の何割か貰うかな・・・」
「ちっ、守銭奴が」
浅沼お気に入りのキャバクラがあるのが錦糸町。
俺の家があるのが亀戸。
週末の夜、深夜までキャバクラで遊んだ後に奴が帰るのは、何故か俺の家になる。
奴の家は葉山にあり、初めの内はちゃんとタクシーで帰っていたのだが
俺の家に泊まり、浮いた分を女の子に貢いだ方が良い、と考えたらしい。

風呂を出ると、浅沼は既に発泡酒に手を伸ばしていた。
「あんだけ飲んで、まだ飲むのかよ」
「こんなもんは、水だろ?」
「じゃ、水飲んでろよ」
浅沼は思い出したように、スーツの上着から煙草の箱を取り出す。
中から一本抜き取り、おもむろに火を点けた。
「お前、ホントに人に甘えるの下手ね」
「何だよ、それ」
「少しは直るかと思って、わざわざキャバ連れてってやってるのに」
「は?」
「甘えて、甘えられてのごっこ遊びなんだよ。あんなの」
「金払ってまで、やることかね」
「向上心が無いねぇ、我妻くん」
持っていた煙草を灰皿に押し付けると、半笑いのまま口を開く。
「そんなんじゃ、女出来ないぞ?」
「別に良いよ。緊急に必要なもんでも無し」
「そんな風に粋がって良いのは、高校生まで」
そう笑いながら、浅沼は俺のベッドに横になった。

「ちょ・・・っと待て。お前、先週はベッドだっただろ?今日は床だ」
「身体中痛くなるんだよ」
「俺だって同じだよ」
「じゃ、半分ずつで良いじゃん」
「シングルベッドに男二人が寝られる訳ねーだろ」
「大丈夫。お前、壁側で良いから」
こいつの甘える才能を1/10でも分けて貰えれば、キャバクラも楽しめるようになるんだろうか。
「電気はお前が消せよ」
俺は、自分のベッドに横たわる身体をまたぎ、狭苦しいスペースに身を沈める。
背中のすぐ後ろに感じる奴の体温が、妙な違和感を呼び起こし
その夜は、なかなか寝付くことが出来なかった。

□ 24_帰着★ □
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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