Blog TOP


自由★(3/9)

久しぶりの、他人の唇の感覚。
男のものだと分かっていても、その柔らかな触感に、不思議な気分になる。
薄く目を開けてこちらを見る三谷の表情が、別人のように見えた。
程なく、唇と、顔が離れていく。
突然のことに緊張が隠せない俺の左手を、部下の右手が掴む。
自分の顔に寄せたかと思うと、薬指に嵌っている指輪に口付けた。
「・・・城野さんの言うことなら、何でもします」
僅かにシートが倒され、部下の身体が俺の下半身へ埋まって行く。
「おい、三谷」
動きを制すべく向けた手が、俺を見上げる視線で止まる。
「させて、下さい」
作業ズボンのベルトが外され、ジッパーが下げられた。
トランクスの上から、モノに唇が触れる。
不実な行為を直視できず、目を閉じた。
くだらない憤りから発してしまった言葉が、こんなことになるなんて。

薄い布の上から、ゆっくりと唇で擦られる。
先端が口で柔らかく挟まれ、背筋に軽く電流が走る。
身を捩る度にシートベルトが食い込んで来て、それが妙に身体を高揚させた。
やがて、手が中に入ってきて、直接触れられる。
少し熱を帯びたモノが、冷たい手の感触で緊張感を増す。
下着の縁からはみ出した先端部分に、舌が触れ、つい声が出た。
多分、キスよりも、もっとご無沙汰していた快感。
シートを掴む手の力が強くなる。
車の中には場違いな水音が微かに聞こえてきて、身体が熱くなった。

モノがひんやりとした空気に触れ、今度は手で扱かれる。
怒張していることは、見なくとも分かった。
作業服とワイシャツが一緒にがたくし上げられ、腹の辺りに舌の感触が滑る。
前屈みになる体がシートベルトを引っ張り、カツン、と言う金具の音が響く。
俺の手が掴むものは、自然とシートから三谷の肩に替わった。
掌の感触が、脇腹から胸へと上がって行く。
俺の身体に吸い付いたような、部下の顔に手を伸ばす。
口の周りをうっすら濡らし、上目遣いで見るその顔に、思いも寄らず欲情に駆られた。
「・・・どう、ですか?」
「ん・・・いい」
満足そうに目を細め、再び、俺のモノは口の中に納まる。
震える身体に、快楽が染みて行く。

下半身に神経が集中して行き、絶頂が近いことを感じる。
上下に動く三谷の頭を、軽く抑えた。
刺激を与えてくる器官が、再度手へ変わる。
俺の身体を抱きしめるように部下の腕が背中へ回り、上半身同士が密着する。
一気に扱き上げられ、上ずった声と共に、俺はイった。


行為の形跡が、ティッシュで丁寧に拭き取られていく。
余韻が残る身体をシートに埋め、今更のようにシートベルトを外した。
肩に残る仄かな痛みが、背徳感情を呼び起こす。
「飲み物買ってきますけど、コーヒーで良いですか?」
「ああ」
独りになった車内には、得も言われない匂いが充満していて
窓を全開にし、外気を入れる。
煙草に火を点けると、煙が真っ暗な闇に吸い込まれるように流れていった。

遠くから、自販機の飲み物が落ちる音が聞こえて
続いて、何かを吐き出すような音がする。
程なく三谷が戻って来た。
「ブラックで良いんですよね?」
「ありがとう」
シートに座り一息ついた部下は、外に視線を向け、しばらく無言のままでいる。
コーヒーを一口含むと、その苦味が、ぼんやりした意識を取り戻してくれた。
「城野さん」
「・・・ん?」
「一つ、お願いがあるんですけど」
相変わらず外を見たままの彼の表情は、分からなかった。
「何だ?」
居心地の悪い、間が空く。
煙草を一本取り出したタイミングで、呟く声が聞こえた。
「もう一度、キス、して良いですか」

俺が要求した行為と、三谷が要求してくる行為。
それぞれ不徳なことには変わり無いけれど、そこにある意図は全く違うものに思えた。
性的欲求を満たすだけの行為と違って
キスと言う行為には、何かしらの感情が込められている。
あの行為も、それの延長だったのかも知れない。
マズいところに足を踏み込んだ、そんな後悔に苛まれる。

声を発しない俺の様子に、答えを察したのだろう。
三谷はキーに手をかけ、エンジンをかけた。
「すみませんでした。・・・帰りましょう」
こちらを見て、笑顔を見せる。
その表情と、行為中に俺を見上げた顔とが重なった。
不埒な思いが、欲望を突き動かした。

□ 20_自由★ □   
■ 1 ■   ■ 2 ■   ■ 3 ■   ■ 4 ■   ■ 5 ■   ■ 6 ■   ■ 7 ■
■ 8 ■   ■ 9 ■   
>>> 小説一覧 <<<

コメント

非公開コメント

Re:

三谷が自分に好意を持っている事に薄々気付いていたので、こんな事をさせたのでしょうねぇ!?
でないと、普通、言わないですよね。セクハラにされますもん(笑)。

そして、どうやら城野も「魚心あれば…」みたい。自分で気付いてなかっただけで…。

ハラスメントの魅力。

上司と部下の関係を描く話については
セクハラ行為でどう愉しむか、と言うところに主眼を置きがちになります。
本来なら嫌悪感を抱くような行為を、プラスの方向へどう昇華させていくか。
今後の展開を、お楽しみ下さい。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

*** Link Free ***



>> 避難所@livedoor
Novels List
※★が付く小説はR18となります。

>>更新履歴・小説一覧<<

New Entries
Ranking / Link
FC2 Blog Ranking

にほんブログ村[BL・GL・TL]

駄文同盟

Open Sesame![R18]

B-LOVERs★LINK

SindBad Bookmarks[R18]

GAY ART NAVIGATION[R18]

[Special Thanks]

使える写真ギャラリーSothei

仙臺写眞館

Comments
Search
QR Code
QR