再誕(4/5)
ぎこちないながらも、彼女との日常は続いていた。
グループ内での目も、ネカマとの男の友情、と言う扱いに変わっていて
逆に、女性陣からは一部羨望の視線を集めていた。
「そうだ、ふぁんずさん、あたし欲しいものがあるんだ (*´Д`)」
「え?」
装備も、金も、恐らく俺よりもたくさん持っているであろう彼女。
今まで何かをねだられた事は無かったけれど、いつも一緒に遊んで貰ってる恩もある。
そんな風に思って、聞いてみた。
「何?」
「指輪 (/ω・\)」
「高いのは、無理だよ?」
キャラクターが装備できるアイテムの中には、色々と効果のある指輪もある。
ただ、それらは押並べて高価なものが多く、自分でも持ってはいない。
「ううん、その辺の店で売ってるやつで良いの (´▽`)」
「もっと良いの、持ってるんじゃない?」
「ふぁんずさんから、欲しいの ヽ(`Д´)ノ」
何処までが演技なのか、何処からが彼の本心なのか。
まるで本物の女の子のような彼女を見て、俺は少し混乱していた。
街のショップにある、お遊びアイテムでしかない指輪を買う。
「あ、そうだ。もう一つお願い (´▽`)」
「ん?」
「ふぁんずさんの分も買って (*´Д`)」
「俺の分?」
「お揃いにしようよ (*ノ∀ノ)」
押し切られるよう、俺は指輪をもう一つ買い、一つを彼女に渡す。
彼女の装備品ウィンドウに、質素な指輪が表示された。
「宝物にします。本当に、ありがとう」
顔文字の無いその言葉に、俺は少しの違和感を感じつつ、画面の中の彼女を見ていた。
それからしばらく、彼女の姿を見かけなくなった。
今まで、2、3日のブランクが開くことはあったけれど、もう1週間にもなる。
その夜も、彼女からの挨拶は無かった。
何かあったんだろうか、そう不安に思っているところにAyameさんからのメッセージが来る。
「Misatoちゃん、グループ抜けたから」
「え・・・どうして?」
「別キャラが、晒されちゃってね」
オンラインゲームに付き物の、インターネット上の掲示板。
いろいろな話題が上る中で、有名なキャラやPKなどの素性を晒すものも存在する。
何回か目にしたことはあったが、特に関係ないとあまり気にしてはいなかった。
『幽玄によくいるPK・Misallyの別キャラは、Misatoって女戦士』
『こいつ、ネカマで他の男からアイテム貢いでもらってるってさ』
『赤ネの中では相当腕利き。PKK総動員して、あの剣、強奪しようぜ』
掲示板に並んだ匿名の書き込みを見て、心底気分が悪くなる。
確かに、俺もPKは嫌いだ。
でも、それはゲームの仕様上認められている行為。
PKを楽しむプレイスタイルも、否定できない。
アイテムを貢いで貰ってるなんて話も、聞いたことは無かった。
「その書き込みが本当のことかなんて、分からないでしょう?」
「でもね」
Ayameさんは冷静だった。
もしかしたら、全て分かっていたのかも知れない。
「一回流れてしまった噂は、この世界じゃ、もう消えないから」
チャットウィンドウに、しばらく空白が訪れる。
「Misatoちゃん、皆に迷惑掛けるからって、そう言って抜けたんだよ」
幽玄の森には、多くのプレイヤーがモンスター討伐に精を出していた。
やたらと目立つ深緑の名前のプレイヤーは、PKKの証。
この色の名前には、PKを殺す場合に限って
プレイヤーがPKと見なされるステータス、PKカウントが付かないと言う利点がある。
PKが出たと誰かが叫べば、その緑の集団が一斉に動き出す。
いつもなら、安心すべき状況なのかも知れないが
PKを探す俺にとっては、とても居心地の悪い状態になっていた。
紅い名前を見かけ、それが目的のキャラでは無いと分かれば、即座にテレポート。
それを何度も繰り返している内、PKが複数のPKKに襲われているところに出くわした。
PKの名前を見て、思わず手が動いた。
攻撃されているキャラに、ヒールの魔法をかける。
"PK幇助の為、通常の1/5のPKカウントが付きます"
そんなシステムメッセージが、ウィンドウに表示された。
PKK達の手が止まり、一人がこちらへ向かって来る。
僅かなPKカウントが付いた俺は、当然、彼らの攻撃対象となるからだ。
「お前らの相手は、オレだ」
傷が癒されたPKは、そう言い放つ。
俺はその場から動けず、目の前でPKKが倒されて行くのを、黙って見ていた。
□ 19_再誕 □
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グループ内での目も、ネカマとの男の友情、と言う扱いに変わっていて
逆に、女性陣からは一部羨望の視線を集めていた。
「そうだ、ふぁんずさん、あたし欲しいものがあるんだ (*´Д`)」
「え?」
装備も、金も、恐らく俺よりもたくさん持っているであろう彼女。
今まで何かをねだられた事は無かったけれど、いつも一緒に遊んで貰ってる恩もある。
そんな風に思って、聞いてみた。
「何?」
「指輪 (/ω・\)」
「高いのは、無理だよ?」
キャラクターが装備できるアイテムの中には、色々と効果のある指輪もある。
ただ、それらは押並べて高価なものが多く、自分でも持ってはいない。
「ううん、その辺の店で売ってるやつで良いの (´▽`)」
「もっと良いの、持ってるんじゃない?」
「ふぁんずさんから、欲しいの ヽ(`Д´)ノ」
何処までが演技なのか、何処からが彼の本心なのか。
まるで本物の女の子のような彼女を見て、俺は少し混乱していた。
街のショップにある、お遊びアイテムでしかない指輪を買う。
「あ、そうだ。もう一つお願い (´▽`)」
「ん?」
「ふぁんずさんの分も買って (*´Д`)」
「俺の分?」
「お揃いにしようよ (*ノ∀ノ)」
押し切られるよう、俺は指輪をもう一つ買い、一つを彼女に渡す。
彼女の装備品ウィンドウに、質素な指輪が表示された。
「宝物にします。本当に、ありがとう」
顔文字の無いその言葉に、俺は少しの違和感を感じつつ、画面の中の彼女を見ていた。
それからしばらく、彼女の姿を見かけなくなった。
今まで、2、3日のブランクが開くことはあったけれど、もう1週間にもなる。
その夜も、彼女からの挨拶は無かった。
何かあったんだろうか、そう不安に思っているところにAyameさんからのメッセージが来る。
「Misatoちゃん、グループ抜けたから」
「え・・・どうして?」
「別キャラが、晒されちゃってね」
オンラインゲームに付き物の、インターネット上の掲示板。
いろいろな話題が上る中で、有名なキャラやPKなどの素性を晒すものも存在する。
何回か目にしたことはあったが、特に関係ないとあまり気にしてはいなかった。
『幽玄によくいるPK・Misallyの別キャラは、Misatoって女戦士』
『こいつ、ネカマで他の男からアイテム貢いでもらってるってさ』
『赤ネの中では相当腕利き。PKK総動員して、あの剣、強奪しようぜ』
掲示板に並んだ匿名の書き込みを見て、心底気分が悪くなる。
確かに、俺もPKは嫌いだ。
でも、それはゲームの仕様上認められている行為。
PKを楽しむプレイスタイルも、否定できない。
アイテムを貢いで貰ってるなんて話も、聞いたことは無かった。
「その書き込みが本当のことかなんて、分からないでしょう?」
「でもね」
Ayameさんは冷静だった。
もしかしたら、全て分かっていたのかも知れない。
「一回流れてしまった噂は、この世界じゃ、もう消えないから」
チャットウィンドウに、しばらく空白が訪れる。
「Misatoちゃん、皆に迷惑掛けるからって、そう言って抜けたんだよ」
幽玄の森には、多くのプレイヤーがモンスター討伐に精を出していた。
やたらと目立つ深緑の名前のプレイヤーは、PKKの証。
この色の名前には、PKを殺す場合に限って
プレイヤーがPKと見なされるステータス、PKカウントが付かないと言う利点がある。
PKが出たと誰かが叫べば、その緑の集団が一斉に動き出す。
いつもなら、安心すべき状況なのかも知れないが
PKを探す俺にとっては、とても居心地の悪い状態になっていた。
紅い名前を見かけ、それが目的のキャラでは無いと分かれば、即座にテレポート。
それを何度も繰り返している内、PKが複数のPKKに襲われているところに出くわした。
PKの名前を見て、思わず手が動いた。
攻撃されているキャラに、ヒールの魔法をかける。
"PK幇助の為、通常の1/5のPKカウントが付きます"
そんなシステムメッセージが、ウィンドウに表示された。
PKK達の手が止まり、一人がこちらへ向かって来る。
僅かなPKカウントが付いた俺は、当然、彼らの攻撃対象となるからだ。
「お前らの相手は、オレだ」
傷が癒されたPKは、そう言い放つ。
俺はその場から動けず、目の前でPKKが倒されて行くのを、黙って見ていた。
□ 19_再誕 □
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