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再誕(3/5)

「どうして、ネカマやってるんですか?」
会の様子を楽しそうに眺めているAyameさんに、そんなことを聞いてみた。
「別に、オレはネカマって思ってないですよ。女のキャラをやってるってだけ」
水割りのグラスを回しながら、彼はそう答えた。
女の子たちに囲まれた話題の主に視線を移す。
「彼女?彼?がネカマだって言うのは、前から知ってましたけど」
「そうなんですか」
「敢えて言う必要も無いのかなって思ってました」
手元の酒を一口含んで、彼は俺を見る。
「・・・言っておいた方が、良かったですか?」
「いや・・・どうかな。ちょっと複雑ですけど」
苦笑する俺を見て、彼は呟く。
「虚構の世界でくらい、好きにやりたいもんじゃないですか」

偶然、と言うべきか。
帰りの路線は、Misatoちゃんと同じ方向だった。
会では女性に占拠されてしまったゲーム内のパートナーは、少し疲れた表情を見せている。
「大人気だったね」
「ええ、思いの外・・・」
「パートナーの座を、奪われそうな勢いだな」
「オレのパートナーは、あなただけですよ」
車窓を眺めながら、彼はそう言い切った。

「どうして、ネカマやってるの?」
俺は、今日2回目の質問を彼に投げかけた。
彼は俺の顔を見て、ふと微笑む。
「演じるのが、面白くて」
「そう言うもんかな」
「自分と全く違う、もう一人の自分がいるって感じで、はまっちゃいました」
「見事なネカマっぷりだもんね・・・」
「相当、板についてるでしょう?」
「そりゃ、もう」
言葉を選んでいる風の彼の視線が、俺から外れる。
「・・・でも、逆に、自分の気持ちに素直になれる部分もある」
「え?」
俺の疑問符に、答えは無かった。
疑問に思う間もなく、降車駅のアナウンスが流れる。
「今夜、ログインされます?」
「うん・・・その予定」
「じゃ、お待ちしてます」


彼の気持ち、それが何処にあるのか。
お互いの会話は、客観的に見れば男女間でなされるような内容ばかりで
互いに男であると分かった上では、成立しないものだと、俺は思っている。
彼は、俺が女だとでも思っていたのだろうか。
それとも、男だと分かっていて、ああ言う会話を続けているのだろうか。
あくまで虚構の世界、そう思って、俺も演技をして行かなければならないんだろうか。
いろいろ考えていると、何だか面倒になってくるのも、確かだった。

目の前のキャラは、当然ながら、オフ会前と何の変わりも無かった。
「今日は、お疲れ様でした (´▽`)」
「お疲れ様・・・何か、不思議な気分だな」
「どうして?」
こうやって話している画面の向こうには、彼がいる。
その違和感が、どうしても拭えなかった。
「・・・やっぱり、会わなかった方が良かったな」
しばらくの空白の時間の後、画面の向こうの彼は呟く。
きっと、寂しげな表情を浮かべているんだろうと考えると、居た堪れなくなった。

「ごめん、大丈夫」
「え?」
「今日は、何処行こうか?」
虚構の世界の中の俺は、彼女にそう問いかける。
画面の外にいるのが俺と彼だとしても、この世界にいるのは俺と彼女。
ゲームを楽しむ上で、それが楽しいのなら、それで良いじゃないか。
そう、頭を切り替える。
彼女からの答えが来るまでは、若干の時間があった。
「紅蓮の塔は? ( ・ω・)∩」
「うん、良いよ」
「じゃ、入口で待ち合わせ щ(゚д゚щ)」
「了解」

□ 19_再誕 □   
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テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

コメント

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逆に驚き~

最近はゲームをしないから良く知りませんけど、ドラクエとかRPGの主人公って大概男性でしょう?
ゲーム製作者も大抵男性だから、「男性による男性の為」=ゲームというイメージがあります。
だから、ゲームって、女性は男役するのが当たり前だと思ってましたよ。
へぇ~、男性は普段自分と同性でゲームをするもんだから、女性役をするのに違和感を抱くんですか!?
「ネカマ」って言う言葉を初めて知りました(笑)。

この違和感は恐らく男性だけが抱く感情だと思います。

さて、違和感を持ってしまった主人公!どうなるんでしょう!?
続きが気になります。

目の前の女の子の中の人

オンラインゲームと家庭用ゲーム(オフライン)との最も大きな違いは
やはり、ゲーム画面の中を動くキャラクター一人一人に
必ずプレイヤーがいるという点ではないかと思います。
それを踏まえた上で遊んでいると
どうしても女キャラは女性に見えて来てしまいます。
コメントを頂いて、改めて特殊な世界なんだと実感しました。
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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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