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再誕(2/5)

2日ぶりのチャットは、お叱りからはじまった。
「ふぁんずさん、この間、幽玄に一人で行ったんだって?(# ゚Д゚)」
「ああ、PKに遭っちゃったよ」
「あそこ、いろんなPKいるから、行くならあたしと一緒じゃなきゃダメ (´;ω;`)」
「Misatoちゃんなら、奴らにも勝てそうだね」
「ふぁんずさんの為なら、何でもするよ (*´д`*)」
「はは・・・ありがとう」

最近は、とみにこんな会話が増えてきたような気がする。
少し前にグループチャットで上がった話題が、思い出される。
もしかしたら、彼女は、俺に気でもあるのかも知れない。
そんな考えが巡って、何となく居心地が悪くなる。
下心を否定できない自分が、情け無かった。

そんなある日、Ayameさんから提案があった。
「今度、オフ会でも如何です?」
とは言え、グループメンバーも全国に散らばっており
リーダーのいる東京で開かれる会に参加できるメンバーは限られる。
俺は幸い都内に住んでいるが、オンラインゲームのオフ会は初めてで、若干の抵抗もあった。

「ふぁんずさんは、どーするの? ( ・ω・)」
「どうしようかと、思って」
「ふぁんずさんが行くなら、あたしも行こうかな (*´∀`)」
そんな言葉に、背中を押される。
「じゃ、行こうよ」


画面を通して見るキャラクターには、個々のプレイヤーがいる。
当然のことながら、キャラクターには男女有り、プレイヤーにも男女がいる。
そして、それぞれがどの性別を選んでいるかなんて、画面からでは絶対に分からない。
「Ayameさん・・・男だったんですか」
「あはは。そーなんですよ」
グループリーダーである勇ましい女盗賊の真の姿を見て、思わず声を上げた。
俺よりも少し年下くらいの、大柄でガッシリしたタイプの彼。
けれど、見た目と反する落ち着いた喋り口調は、キャラクターそのままだった。
「アヤメ、って呼ばれるのは抵抗ありますねぇ」
「じゃ、リーダー?」
「難しいですよね、ゲームのオフ会での呼び方って」
そう言って、彼は苦笑した。

「Misatoちゃんは、今日仕事でちょっと遅れるって言うから」
10人ほどの集団は、Ayameさんが予約した店へ向かう。
待ち合わせ中に、互いのキャラ紹介は終わっていたので、話もスムーズだった。
久しぶりに来た新宿の風景を眺めながら歩いていると
参加者の一人の女性に話しかけられる。
「Misatoちゃんに会えるの、楽しみですか?」
あどけなさが残る顔は、好奇心に満ちていた。
「楽しみだけど・・・ホント、そう言うんじゃ無いから」
「ま、Ayameさんみたく、ネカマって可能性もありますもんね」
そう言って、意地悪く笑う。
ああ、それは考えてなかったな、と思いつつ
日頃のチャットの内容を思い返すと、ちょっと気持ち悪いかも、とも思う。

会が始まってから30分ほど経ってから、Ayameさんの携帯に連絡が入る。
「Misatoちゃん、もう少しで着くそうなんで」
Ayameさんはそう言って、何故か俺を見る。
「Farnsさん、申し訳ないんですけど、下まで迎えに行って貰って良いですか?」
「俺?」
「ご指名」
参加者の微妙な視線が注がれるのを、痛いほど感じた。
「あっちから、声かけて来ると思いますから」
彼は意味ありげな表情で俺に囁く。
「彼女なりの、気遣いですよ」


歌舞伎町の入口辺りに位置するビルの前は、行きかう人でごった返していた。
キャバクラの呼び込みをぼんやり眺めていると、声をかけられる。
「Farnsさんですか?」
そこに立っていたのは、スーツを着たサラリーマンだった。
華奢な体つきの彼は、走ってきたのか若干息が上がっている。
俺よりも幾つか年下だろう、細面な顔はまだ学生のような風情だった。
「すみません・・・先に謝っておきたくて」
女性の勘は鋭い、頭を下げる彼を見て、俺はそんなことを思った。
「謝る必要ないけど・・・Misatoちゃん、って呼ぶのは抵抗あるね」
申し訳無さそうな顔をする彼に、俺は笑いかける。

しばらく、ビルの前で立ち話をする。
「俺が行くから、来る、って言ってたよね?」
「いつかバレるくらいなら、いっそのこと盛大にバラしちゃおうと思って」
「で、オフ会?」
「ええ、そうなんです」
確かに、すっかり騙されてはいた。
若干下心を抱いたことが、恥ずかしくなる。
「あの」
俯き加減に、彼は俺の顔を見る。
「オレが男でも、これからも一緒に遊んで貰えます?」
「そりゃ・・・もちろん」
そう答えると、彼はホッとした表情を見せる。
知らなかった方が良かったのか、はっきりとは分からなかったが
俺たちは、メンバーの待つ店へと向かった。

当然のように、会の参加者たちは騒然となった。
あれだけ愛想を振りまいていた、自分をアイドルとまで呼んだキャラがネカマだったことは
それぞれに衝撃を与えただろう。
彼らが俺へ向ける視線は、些か同情の混ざったものに変わっていた。
色めき立ったのは、女性陣。
目を引く容姿の彼が人気を集めるのは、当然なのかも知れない。
どんな飲み会でも、それは一緒なんだな、そう実感した。

□ 19_再誕 □   
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テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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