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奪取★(1/6)

同じ地下鉄の路線で繋がっているとは思えない、高級住宅街。
その一角にあるマンションが、目的の改装物件だ。
中に入る許可は得ていないので、今日は外回りの現地調査。
敷地に入っているであろう給排水・ガス配管や電気・電話などの引き込み線を確認する。

建ってから、そう年数は経っていないように思えたが
意匠的な流行が過ぎてしまい、借り手がつかなくなっているのだそうだ。
仕方なく、改装して分譲物件として生まれ変わることになった。
1フロア1住戸という贅沢な間取りを考えれば、軽く億は越える値段になるはずだ。
設計をするオレには一生縁が無いな、そんなことを考える。

1時間もかからない内に、調査は概ね終了した。
撮った写真を念の為確認しておこうと、デジカメを取り出す。
見ると、オレが撮った写真の前に、何かの写真が入っていた。
会社のデジカメは社員全員で使っているので、各々使い終わったらメモリを消去するのがルール。
誰かがそれを忘れたんだろうと、興味本位で写真を見てみる。

画面を見て、動きが止まった。
映っていたのは、オレだった。
4、5枚ほどだったが、どれもカメラの方は向いていない。
悪戯にしては、悪趣味すぎる。
写真を撮った人間にも、心当たりは全く無かった。
薄気味悪さで顔が引きつった。
見なかったことにしよう、そう思い、自分の写真を消去する。


調査を終えたその足で、水道局・下水道局を回り、会社へ戻ったのは夕方過ぎだった。
「お疲れ様です。物件はどうでした?」
定時を過ぎていたせいか、社内には殆ど人が残っていない。
その中で声をかけてきたのは、後輩の渋谷だった。
「立派だったよ。まだ全然使えそうだけどな」
「躯体は再利用なんですよね」
「そう。手をつけるのは内装と設備・電気だけ」
資料をカバンから取り出しながら、そう話す。
今回の物件も、オレと渋谷の二人で受け持つことになっている。

「そういや、渋谷、デジカメ最近使った?」
「いいえ。壊れてました?」
「いや、そうじゃないんだけど。・・・まぁいいや」
小さな猜疑心を抱きながら、パソコンにデータを移し、デジカメを棚に戻す。
社員に対して疑いを持つことにも罪悪感があったが、何よりも気味の悪さが晴れない。
こんな気分は、初めてではなかったからだ。

数ヶ月前から、オレの携帯電話に無言電話がかかってくるようになった。
会社用と兼用しているので、非通知や公衆電話も拒否できないことを知ってか知らずか
必ず非通知でかかってくる。
しかも、オレが帰宅したのを見計らったように。
1回は番号を変更したのだが、それでも同じようにかかってくる。
変更通知は社内の人間や取引先にも連絡しているから、番号を知っている人間は少なくない。

デジカメの件は、その恐怖心から来るストレスに拍車をかけた。
誰が、何の為に?
心当たりが無い分、性質が悪い。
帰宅し、いつものようにかかってくる非通知の着信を見ながら
精神が少しずつ削られていくような感覚に陥っていた。


高級マンションの設計は、概ね順調に進んでいた。
どんなに高級でも、所詮はマンション。
複雑な空調設備も無いし、給水・排水とも既存に接続することが出来るので
新築物件に比べ、設計は格段に楽だった。
ただ、未だ中を見ていないので、実際の現況図と合っているのかどうかが分からない。
調査の許可を依頼していた元請けから返事が来たのは、あれから随分経ってからだった。

元請けからの電話を切り、渋谷に問いかける。
「明日、中見られるらしいんだけど、予定はどう?」
「僕は大丈夫ですよ」
共用のデジカメを手に取り、念の為メモリを確認する。
空である事に一安心した時、パソコンにメールが届いた。
見覚えの無いaolドメインのアドレスからで、件名は『代々木の物件について』。
SPAMやウイルスメールは、ルーターのファイアウォールで自動的に弾くようになっている。
代々木の物件と言われて、思い当たる過去の物件もあった。

メールと開くと、本文には何も無く、添付ファイルのjpgが画面に映し出される。
背筋が凍る思いだった。
恐らく、携帯で撮ったオレの写真。
しかも、場所は自宅近く。
どうなってるんだ。
マウスを握ったまま、動けなかった。

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奪取★(2/6)

「どうしたんですか?」
オレの様子を訝しげに見ながら、渋谷が画面を覗き込んでくる。
「・・・何ですか?これ」
「分からない」
恐怖で喉がやたらと渇いた。
「ストーカーですか?」
無言電話の件も、デジカメの件も、誰にも言わなかったけれど
ここまで来ると、流石に黙ってはいられない。
オレは一先ず、渋谷に今までのことを話してみた。
「本当に、心当たり無いんですか?」
「無い、と思う」

気まずそうな顔で、渋谷はある人物の名前を出す。
「・・・美和子さんとか?」
元カノの名前だった。
数ヶ月付き合っていた、会社の後輩。
ただ、オレと別れてから程なくして退社してしまったので、デジカメの件の説明がつかない。
しかも、振られたのはオレの方だ。
「美和子さんと仲が良かった女性陣は、まだいますし」
「あいつがオレをストーカーする理由が無いだろ。逆ならまだしも・・・」
「社内の人間だと、思ってるんですか?」
「そうじゃないことを願ってるけどね」
コーヒーを持つ手が、小刻みに震える。
写真や無言電話だけで済むのか、そう考えると、恐怖は募る。
「警察に言った方が良いんじゃ?」
「これくらいじゃ、動いてくれやしないよ。しかも、男相手じゃな」
助けを求めたい気持ちはやまやまだった。
けれど、その方法は思いつかなかった。


渋谷と訪れたマンションは、雨降り模様のせいか、若干不気味に見える。
「図面と全く違う、なんてことになったら面倒ですね」
「実際、よくあることだからなぁ」
「問題は、既設桝と機械室ですか」
「そこが大きく変わらなきゃ、大丈夫だろ」
玄関には、元請けから依頼されたと言う管理会社の人が立っていた。
「佐久間設備の水野と申します。こちらは同じく渋谷です」
「管理担当の大川と申します。どうぞ宜しく」
大川さんは玄関のドアの鍵を開けて、中へ促してくれる。

中はひんやりとしていて、しばらく使われていない建物特有のかび臭さがあった。
「申し訳ないんですが、水道・電気は入ってませんので」
「懐中電灯持って来てますから、大丈夫ですよ」
「地下は真っ暗なんで、気をつけてくださいね」
そう言って、上から順に部屋を確認する為、階段を登る。

「一つの住戸に2つも3つもトイレがある物件なんて、図面でしか見たこと無いですよ」
渋谷が呆れたように呟く。
全くだ、と相槌を打ちながら、現況図との変更点をチェックしていく。
躯体以外はスケルトン状態にしてから間仕切りを入れるということだが、PSはそのまま残る。
その点でも、問題は無さそうだった。

住戸部分を見終え、後は地下の機械室と倉庫だけと言う時。
「すみません、私、この後別件がありまして」
大川さんはそう言って、鍵を預けてくれる。
「返却は、郵送でも構いませんので。念の為、サインを頂けますか?」
貸借証明書にサインをして、鍵を受け取った。
失礼します、と軽い会釈をして、彼は玄関から出て行く。
「じゃ、さっさと終わらせて、オレらも帰るか」
「そうですね」


地下へ下りる階段は、既に薄暗かった。
渋谷に懐中電灯を持ってもらい、後ろから照らしてもらう。
現況図によると、既設桝は倉庫の天井部分にあるらしい。
倉庫のドアを開けると、中にはまだダンボールが幾つか残っていて
天井にそれらしき物体が見えた。
「あれか?」
そう言った瞬間、突然背中を蹴られ、前へ突き飛ばされる。
懐中電灯が消え、目の前が真っ暗になった。
背後で、ドアの閉まる音が聞こえる。
「渋谷!」
叫びながらドアを開けようとするが、鍵が開かない。
「おい、何してるんだ?!」
暗闇の中で、軽くパニックになる。
その時、携帯電話に着信が入った。

発信元は非通知だった。
出る勇気は、無かった。
しかし、電話は出ることを急かす様に、震え続ける。
唾を飲み込み、電話に出る。
「どんな気分ですか?水野さん」
渋谷の声だった。
安心感の後、沸々と怒りが湧いてくる。
「お前・・・冗談にしては悪質すぎるだろ」
「冗談?冗談じゃないですよ?」
「何、言ってる・・・」
言いかけた言葉が止まる。
身体が、緊張で固まった。

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奪取★(3/6)

「どうして、って思ってます?そりゃ、そうですよねぇ」
電話越しに聞こえる渋谷の声は、明らかにいつものものとは違った。
「どう言う事なのか、説明してくれ」
その雰囲気に飲まれないよう、極力冷静を装う。
「僕、水野さんのこと、大好きなんですよ」
「は?」
「あなたのこと、何でも知ってるつもりです」
何言ってるんだ、こいつ。
「でも、こんなに好きなのに、全然気付いてくれない」
「分かるわけ無いだろう、そんなの」
「しかも、あんな女と付き合いやがって」
この豹変振りに、本当に本人なのかと言う疑問まで湧いてくる。
「あの女、僕がちょっと声かけたら、ホイホイ着いて来ましたよ?」
「何だと?」
「あなたには、ふさわしくなかったんですよ」
ドアを隔てた向こうに居るであろう後輩に対する恐怖心が、徐々に大きくなっていく。

「どうでもいいから、ここから出せ」
「どうしようかなぁ」
その口調に、思わずカッとなる。
「お前、ふざけるなよ?」
「それは、水野さんでしょう。このまま帰っても良いんですよ?」
言葉が続かなかった。
室内の闇には徐々に目が慣れて来る。
けれど、この状況を打開する為の道筋は、真っ暗なままだ。

「僕のこと、嫌いですか?」
急に殊勝な口調で質問される。
「そう言う訳じゃない。でも、突然そんなこと言われたって、困るんだよ」
「そんなの、ただの逃げ口上でしょう?」
ああ言えば、こう言う。
渋谷のことは、後輩として、ずっと可愛がって来たつもりだ。
好きか嫌いかと問われれば、好きだ。
だからといって、恋愛感情を持てるかと言われれば、答えはノーだ。
男と恋に落ちることが出来るような土壌は、オレには無い。
しかも、一連の出来事がこいつの仕業だと知った今、まともに受け入れられる訳が無い。
「・・・どうしろって言うんだよ、オレに」
「水野さんの全てを下さい。身も、心も」
信じられないくらい冷静なトーンが、体を凍りつかせる。
どうしちまったんだ、こいつ。
「ま、差し出すつもりが無いのなら、奪い取るまでですけどね」
そう言って、電話は切れた。


静寂が訪れたのは、ほんの一瞬だった。
すぐ側のドアが外から蹴られ、激しく音を立てる。
思わずその場から離れると、扉が開き、懐中電灯の光がオレを照らした。
突然の眩しさに、視界が真っ白になる。
懐中電灯が床に転がる音がした。
その時、ネクタイが勢いよく引っ張られ、前によろめいた瞬間、頬に冷たいものが触れる。
「暴れないで下さいね。素敵な顔に、傷は付けたくないんで」
渋谷の声だった。
徐々に視界が戻り、気味の悪い笑みを浮かべた顔がはっきりしてくる。
手には、マイナスドライバーが握られていた。
「マンホールを開ける以外にも、役に立つんですね、これ」
そう言って、先端の尖った金属の棒でオレの頬を撫でる。
背中に冷や汗が流れる。
「素直に、僕の言うことを聞いてくれれば、良いんですよ」
気を失うほどの恐怖に駆られたのは、生まれて初めてだったと思う。

渋谷はネクタイから手を放すと、腹の辺りを蹴りつけて来た。
堪らず、床に仰向けで倒れる。
起き上がるよりも先に、ヤツは腰の辺りに馬乗りになる。
「お前・・・どういうつもりだ」
「言ったでしょう?奪い取るって」
狂気の宿ったドライバーが、オレの頬から首筋を辿る。
「両手、出してください」
自らのネクタイを片手で外しながら、冷ややかな笑顔で、そう言う。
言うことを聞く以外の選択肢は、残っていなかった。

両手首を、きつく縛られる。
オレの首筋を腕で押さえつけ、ヤツは顔を近づけてくる。
長めの前髪が、額にかかる。
「こんなこと・・・して、どうなる」
自分でも驚くくらい、声が震えていた。
「僕は、ずっとこうしたかったんですよ」
額から頬、首筋に、ヤツの唇が触れる。
悪寒が身体中を駆け巡る。
「・・・好きです」
渋谷は目を細め、オレの唇にキスをした。

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奪取★(4/6)

緊張と恐怖で、感覚は大分鈍っていた。
言われた言葉も、唇の感触も、上手く認識できない。
唇を重ねた時間は、それほど長くは無かった。
渋谷はオレから離れると、肩を掴んで、身体を裏返そうとする。
「四つん這いになって下さい」
何をするつもりなのか、容易に想像がついた。
怖気づいたオレの顔を見て、ヤツは微笑む。
「いきなり犯したりしませんよ?」
「どうする、つもりなんだ」
「良いから、言う通りにして下さい」
ヤツの手には、相変わらず笑顔とは程遠い物が握られている。
まさに、何とかに刃物、だ。

縛られた両手を前に差し出すように投げ出し、渋谷にケツを向けるような格好になる。
ヤツは足の上にまたがり、腰を下半身に押し付けてきた。
モノの感触が尾てい骨の辺りに感じられて、酷く不快だった。
ワイシャツがズボンから引き出され、その下から手が入ってくる。
片方の手は、ベルトを外し、ズボンを引き下ろしにかかる。
犯されるくらいなら、まだ良い。
オレはこいつに、殺されるのかも知れない。
そんな恐怖が、震えや油汗となって表れる。
「あんまり怖がらないで下さいよ」
ズボンが太ももの下まで下げられ、露わになった腰を唇でなぞりながら、ヤツは言う。
「別に、取って食おうって訳じゃないんですから」

下着の上から股間を探る手が、モノに触れる。
遂にか、そんな思いに駆られる。
「渋谷・・・」
「何ですか?」
やめてくれ、そう言おうと考えながらも、言葉が続かない。
今更何を言っても、無駄なんだろうと言う絶望にも似た気持ちが、覆い被さる。
不意に腰骨を舌が這い、思わず身体がびくついた。
「頑なになられると、逆に興奮しちゃうんですよね」
手は腹筋やあばら骨に沿って動き、やがて乳首を捕らえる。
力の加減を知らないかのように思い切り摘み上げられ、食いしばった歯の間から悲鳴が漏れる。

片方の手は下着の中に入り、直接モノを弄ってくる。
勢い良く扱かれたと思えば、先端をゆっくりと撫で、玉を柔らかく握る。
頭の中でどんなに不快だと思っていても、その刺激を抑制することは出来なかった。
両腕で頭を抱えるように、必死に堪えた。
その時、ネクタイを引っ張られ、上半身が無理矢理起こされる。
気道を圧迫され、息が出来ない。
ふっ、と首を絞められる力が弱まった。
オレの顔のすぐ側に、ヤツの顔がある。
「目が虚ろになってますよ」
耳元で囁かれ、背筋がゾクゾクする。
そのまま耳たぶを甘噛みし、うなじの辺りを愛撫して来た。
「頭では抵抗しても、身体はこんなになっちゃうんだから、男って単純ですよね」
僅かに濡れてきた先端を、親指で執拗に撫で回す。
息を大きく吐き出す度に、肩の辺りが小さく震える。
こんな状況で快感に飲まれている自分の身体が、心底情けなかった。


ドアの近くに落ちた懐中電灯は、オレたちの後ろから光を照らし、薄汚れた壁に大きな影を映す。
自分が何をされているのか、否が応にも目に入ってくる。
上半身を起こし、膝立ちの状態で、後ろから後輩にモノを扱かれる。
ワイシャツの下では、乳首が弾かれ、摘まれ、弄ばれている。
競りあがってくる快感を、首を振って紛らわそうとした。
「もう、イキそうなんですか?」
手の動きがゆっくりになり、身体の緊張が解ける。
口元が震え、声が出ない。
頬に手がかかり、後ろを向けさせられる。
渋谷の舌がオレの唇を捉え、その間に割り込んで来る。
歯の上をゆっくりと舌が動く。
奇妙な感覚だった。
舌は、まるで噛まれる事を警戒するように、口の中には入ってこない。
唾液が混ざり合う音だけが、部屋に響く。

手が、おもむろに動き出す。
突然の刺激に、声が出た。
興奮を隠し切れないヤツの目が、愉快そうに細くなる。
「水野さんのイキ顔、見せて下さい」
抱きしめるように肩を抱かれ、激しく動く手が、絶頂へ導いていく。
耐え切れず、目を閉じ、唇を噛み締める。
ヤツの腕の中で身体を震わせ、オレはイった。

背中を押され、上半身は再び床に伏す。
快感の余韻で呆然としながら、肩で息をする。
腰の辺りに、ヤツの興奮したモノを感じた。
恐怖と屈辱が入り混じり、鳥肌が立つ。
「もう、いいだろう・・・?」
ヤツはオレの下着をずり下ろし、尻を撫で、軽く叩いてくる。
「水野さんが変になるまで、続けてあげますよ」
そう言って、歯を見せて笑う。
恐ろしさで、顔が歪んだ。
ヤツの笑顔は、ドライバー以上の凶器に思えた。

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奪取★(5/6)

興奮から来る熱が、身体中を包んでいた。
どれだけの時間が経っているのかも、全く分からない。
その間、渋谷はオレの身体を弄び続けた。
抵抗する気力は、欠片も残っていなかった。

繰り返し手でイかされ、ぐったりした身体は壁を背にして座らせられる。
両手を縛るヤツのネクタイが外され、替わりに手と足首が繋がれた。
オレのネクタイで、もう一方の手足も同じ状態になる。
ズボンは足首まで下げられ、大股開きの格好になったオレを、ヤツは真正面から見下ろしている。

やがてオレの顔を覗き込むようにしゃがみ、顎に手を添えて上を向かせる。
口角を上げて笑う顔が近づいてきて、唇が重なった。
力なく開いた口の中に舌が入り込んできて、舌先でオレの舌に何かを求めてくる。
息苦しい中で、ヤツの意向に従い舌を絡めた。
満足そうな眼差しが、すぐそこに迫っていた。

長いキスの後、ヤツは立ち上がる。
ベルトにかかる手が、視線の先に見えた。
おぼろげな意識の中でも、何をしようとしているのかは明らかだった。
「僕も、もう限界なんで」
そう言って、首を傾げて悪魔のような微笑を見せる。
既にいきり立ったものは、僅かな光の中で、より大きく見えた。
「しゃぶって下さい」
ヤツのモノが、オレの頬を打つ。
嫌悪感で、吐き気がした。

しばらく躊躇しているオレに痺れを切らしたのだろう。
頭を掴み、モノに手を添えて強引に口の中に挿入して来た。
喉の奥が圧迫され、苦しさで涙が出る。
口の周りが擦れて痛くなるほど、激しく腰を動かす。
オレの口は、きっとただの穴でしかなかったんだろう。
ヤツの短い喘ぎ声が徐々に大きくなってきて、その瞬間が近いことを知らせる。
痛みと苦しさで意識が飛びそうになる寸前で、オレの口は解放された。
あらぬ方向に、精液が飛び散る。
肩で息をするヤツの顔に、笑みは無かった。
「もっと、素直になって貰わないと・・・困るなぁ」


ヤツはオレの背後に座り、足を尻の下に入れてくる。
腰が浮く格好になり、穴の方まで空気が触れるほど、足を開かされる。
ワイシャツのボタンは全て外され、中のシャツがたくし上げられて上半身も露わになった。
首筋から鎖骨にかけて舌が滑り、両方の手が身体をまさぐる。
2組の指が同時に乳首を捉えると、無意識の内に身体が反応する。
「ここが感じるんですか?」
そう耳元で囁かれ、身体に反して、首を横に振る。
ただ痛かっただけの刺激は、体を蝕むように、快感へと変わってきていた。
それを認めたくなかっただけなのかも知れない。
「素直じゃないな」
乳首が摘まれ、捻りあげるように引っ張られるのが見える。
耐え切れない声が、闇に響く。
「下の方も、ピクピク反応してますよ?」
小さくなっていたはずのモノが徐々に頭をもたげてきているのは、自分でも分かっていた。
「もう・・・やめ・・・」
これ以上の快感に晒されるのが、怖くなった。
鼻で笑う息が、耳にかかる。
それだけでも、身体がびくついた。
「じゃあ、止めてあげますよ」
指が身体から離れていく。
快感からの解放にホッとしつつも、疼きが収まらなかった。

片方の手が、半勃ちになったモノへ伸びてくる。
あれだけイかされたにも拘らず、どうしてこんなに反応してしまうのか。
「乳首弄っただけで、堅くなって来ちゃってますよ?」
掌で先端を撫で回しながら、オレの羞恥心を煽る。
目を閉じて、快感に堪えた。
もう片方の手が、何かを探るような動きをする。
「大したデータも入ってないし、良いか」
そんな独り言を呟き、ヤツは小さなフラッシュメモリを取り出す。
「な・・・」
「ドライバーよりは、良いかと思って」
楽しそうな声に感じる憤りも、快感で薄れていく。
「やめろ・・・渋谷」
「こんなになっちゃってるのに、抵抗なんて無駄ですよ」
わざとらしく舌で舐める様子を、見せ付けてくる。
唾液でうっすら濡れたメモリが尻の割れ目を這い、穴に入って来た。
違和感で、身体がこわばる。
浅く差し込まれた物が、入口付近を行き来する。
快感という刺激では無かったが、羞恥を感じさせるには十分過ぎた。

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奪取★(6/6)

有り得ない物が半分以上入り込んだ状態で、手は、再び上半身へ移動する。
腹筋の辺りを引っ掻くように、爪を立てながらまさぐり
まるで指を求めるように硬くなってしまっている乳首を捕らえる。
裏返った声が出た。
「やっぱり、ここが好きなんですね」
指は、さっきの動きとは違い、微かに先を触るだけだった。
ゆっくりと撫でるように動く指は、オレの焦燥感を募らせる。
「・・・っと」
「何ですか?」
「もっと・・・」
「もっと?」
次の一言が、出て来なかった。
快感を求めているのに、すんでのところで理性が邪魔をする。
「ちゃんと言ってくれなきゃ、分からないなぁ」
オレが求めていることを分かっていながら、意地悪い声で言う。
「・・・さっき、みたいに」
声が震えた。
「こんな風に?」
両方の乳首が摘まれる。
恐怖の対象は、降って来る刺激に変わる。
「いっ・・・」
「嫌じゃないでしょう?」
親指が、絞り上げるように動いているのが見えた。
「もっとって言ったのは、水野さんですよ?」
喘ぐ声が我慢できなかった。
「やらしい声」
乳首を虐めながら、囁く。
「もっと聞かせて下さい」
オレはもう、おかしくなりかけている、そう思った。

しばらく前までは思いも寄らなかった性感帯を責められ、思考は快感に支配される。
何度と無く求められるキスにも、抵抗無く応じられるようになっていた。
不意にヤツの手の動きが止まり、右側の手足がネクタイの束縛から解かれて
そのまま、オレの手は股間へ促される。
「自分で、出し入れしてみて下さい」
メモリの先端に手を添えさせられる。
ずっと縛られていたせいか、上手く手に力が入らない。
ヤツの手は、またオレの弱点を弄り始める。
刺激に打ち震えながら、ゆっくりと、物を動かしてみた。

どう動かしても、なかなか快感は得られない。
恥辱にまみれながら、動きを早くしたり、捻りを加えてみたりしても
求めているような刺激は感じられなかった。
短いからなのか、細いからなのか、焦らされている感覚が増してくる。
「そんなに激しく動かして・・・気持ち良いんですか?」
下半身を眺めながら、指の動きを止める事無く、ヤツは笑いかける。
「今度は、僕のモノで気持ち良くしてあげますね」
口に挿入された時の感覚が蘇る。
あれが自分の中に入ってくることを想像して昂りを覚える自分に、もう違和感は無かった。

機械的に物を出し入れする手を、ヤツの手が制止する。
「やっぱり、それじゃイけないみたいですから」
そう言って、手でモノを掴ませた。
「自分で扱いて、イっていいですよ」
おずおずと自分のモノを握る。
それだけでも、イってしまいそうだった。
ゆっくりと手を動かすと、快感が下半身から首筋まで、一気に駆け上る。
「も、う・・・」
声を上げると、突然唇を奪われる。
その瞬間、オレは果てた。
精液が流れる感覚が、手を纏う。
激しい虚脱感に襲われ、ヤツにもたれかかる。
ヤツは満足そうな笑顔で、髪をかき上げるように額を撫でてきた。


しばらくの間、ヤツに身体を預けていると、こう尋ねられた。
「今度は、素直に咥えてくれますか?」
後ろに座るヤツのモノが、再び興奮していることに気が付く。
片方の手足からも、ネクタイが解かれる。
オレはヤツの前に跪き、大きくなったモノを手に取った。
見よう見まねで口に含み、自分がされる時のことを想像して、舌を滑らせる。
先端を舐めると、ヤツは小さく声を上げた。
「下の方も・・・」
昂揚した声でねだられるにつれ、オレの動きも大きくなっていく。

他人のモノをじっくりと見るような機会は今まで無かったから
ヤツのモノが大きいのかどうかはよく分からない。
けれど、オレの口の中で膨張して行くそれは、相当な圧迫感を与えてきて
さっきの事もあり、段々痛みが増してくる。
「もっと、奥まで・・・咥えて」
オレの頭を撫でながら、そう懇願してくる声を聞き、何かが突き動かされた。
喉の奥で締め付けるように、ヤツのモノに刺激を与える。
甲高い喘ぎ声と共に口の中に広がる、初めての味覚。
全てのことが、嘘のような、現実だった。

その時間も、長くは続かなかった。
「中に、出します、よ」
抑えた声を上げると、精液が口の中に充満してくる。
不味い液体が喉の奥まで入り込み、思わず吐き出してしまう。
咳をしても、喉に張り付いた感覚は、なかなか消えなかった。
それでも、気持ちの何処かで満足感が沸き上がる。
ヤツは優しくオレの頭を撫でた。
「良く、出来ました」
そう言って、見上げるオレの額に、そっとキスをする。

恐怖で支配されていたはずの感情は、何処へ行ったのか。
快楽の波に飲まれ、オレは、身も、心も、ヤツに奪い取られてしまったのだろうか。
微笑むヤツの表情には、満足感と達成感。
あの時、目に宿っていた狂乱の光は、今のオレには見えなかった。

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Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

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